「逆転さよならホームラン!」
巨額の住宅ローンのためそのしわ寄せがあちらこちらに来て、そのたびに銀行に電話をし融資を受ける。返済も遅れている。
そのような危機的な経済状態のせいか、娘と同じコンビニのポンタという子供が好きそうなクレジットカードを申し込んだら、使える枠が3万円であった。娘は、50万なのに。そのことで改めて現実を認識した。どういう状態に自分が置かれているのかを、実感できる良い経験であった。
今日の午前中、小説を書いていると、玄関のインターホンが鳴る。誰も出ないので行くと、小型カメラに郵便局の人が映っている。
督促状か、借金の支払いの最速であろう。
ひやひやものだ。
玄関に出てみると書留郵便であった。身分証明書を出し印鑑を押した。
何とある大手銀行から法人カードが届いているではないか。
ゴールドVISAで、限度額が300万円である。
うれしかった。
歳を取り、借金に囲まれているのでポンタカードで我慢する気であったのに、奇跡的だ。
おかしなことに妻と娘のカードも社員用として入っているではないか。
妻は、高島屋カードがあるから要らないし、娘はポンタがあるので要らない。それらをカードの台紙と共に書斎の引き出しの書類の一番下にしまった。
これで、わたしだけのカードになった。
アメックスのプラチナを1枚だけ持っているが、欧州では使えるところが少ないのでVISAが欲しかったのだ。
これで、わたしは、五体満足な人間になった気がした。
齢を取ると、いずれ、お齢を召していますからの理由で通らなくなるだろう。ポンタは、老人用というより子供用なのでハサミを入れ処分した。
丁度そこへ娘が帰宅した。
「今日は早いね」
「裁判が早く終わったのよ、パパ、何かいいことあったの? うれしそうよ」
という。
「いまね、ポンタカードにはさみを入れお別れをしたよ」
「限度額が低かったからでしょう?」
「いいんだよ、ぜーんぶ、身から出た錆だからね」