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「愛の不在の彼方へ」
甘い香りが漂うバーの一角で、彼女は深いため息をついた。
テーブルの上には一冊の本が開かれている。
ニーチェの本だ。
彼女の手がそのページをめくるたびに、微かな音が立ち上がる。
彼女はその言葉に心を奪われていた。
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「わたしは愛を知らない。うその愛が多いから。愛を知る日は来ないだろう。サングラスを外す日は来ない。一人で真っ赤なポルシエで荒野をさ迷う。」
彼女の瞳にはどこか遠い表情が宿っていた。
本のページを閉じると、彼女は深く深呼吸をし、外の景色を見つめた。
バーの窓からは、青空と風景が広がっている。
男女が甘い抱擁をする姿を見過ごさなかった。
「愛を知らないと言っても、本当にそうなのだろうか?」と、彼女はふと自問する。
過去の出来事や人間関係を振り返りながら、彼女は自分自身に問いかけた。
知人、友人、ホスト、セフレ、ジゴロ・・・・・と。
「うその愛が多い」という言葉が、彼女の心に響く。確かに、嘘や偽りの愛に囲まれてきたと感じることもあった。
しかし、それだけが全てではないはずだ。
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「愛を知る日は来ないだろう」という言葉が、彼女の心に沈んでいく。
しかし、同時にその言葉に反発するような気持ちも湧き上がってくる。
愛を知る日が来ないと断言することはできない。
(実は、わたしは誰よりも愛されたい)
「サングラスを外す日は来ない」という言葉が、彼女の内なる隠れた部分に触れる。
自分自身を素直にさらけ出すことに対する恐れや不安が、その言葉に反映されているようだった。
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「一人で真っ赤なポルシエで不毛の荒野をさ迷う」という言葉が、彼女の心に冒険心を呼び起こす。
孤独でも、未知の世界でも、彼女は自分の足で歩き続けられるのではないかという希望が芽生えてくる。
(だけど、愛されたいわ)
バーの中で、彼女の心は静かに揺れ動いていた。
彼女は自分自身と向き合いながら、愛というものについて新たな考えを巡らせていた。
窓の外では、風景が変わりゆく。
彼女もまた、心の風景が変わりゆくのを感じていた。
そして、その変化を受け入れる覚悟を新たにしていた。
彼女はまだ愛を知らないかもしれない。
しかし、その事実だけで彼女が何者かを決めるわけではない。
彼女は自分自身と向き合いながら、新たな愛の形を見つけ出すことを決意したのだった。
(ただ、愛されたいだけなの)
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