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「妻のお金目当てを見抜く母!」
今の妻と付き合いだした頃である。
彼女が、わたしの家へ来た。
トレンチのレインコートを着てきた。わたしは、全く気が付かなかったが彼女を玄関へ迎いに行った母親が、わたしにこっそりといった。彼女の着て来たレインコートの両肩の所が、古くなってほころんでいるじゃない、よく恥ずかしくなく来た来たわね、と。そして、母は、わたしにお金目当ての人かも知れないから気を付けなさい、と言った。
そう言われれば、昨夜電話をし、夕食は何でしたか? と聞いたら、チャルメラをおかずにして白ごはんです、と言った。確かにははがいう通り貧しいのかもしれないと思った。その頃、自宅は、350坪あり12部屋はある大きなお屋敷で、父の年収は1億2千万以上だつた。お金目当てかもしれないが、ここに住むわけではないし、わたしが頑張って働けばそれで済むことだと思った。
彼女は、両親におみやげを買ってきてくれた。母には、ミンクの首巻を。父には、ネクタイであった。残念なことに彼女にはもちろん言っていないが、ミンクではなくうさぎの首巻であることが分かった。お金のない中、無理をして買ってきてくれたのであろう。それは、その気持ちを汲み取り何とも思わなかった。
応接間にいると、母が、わたしと彼女を連れて高島屋へ行くという。何かと思ったが、母の機嫌を損ねないように従った。
そうしたら、母は、彼女にビトンの長財布と小銭入れを買ってくれた。彼女は驚き当惑していうと、礼儀にうるさい母が、こういうときは、ありがとうございます、というんでしょう、と彼女に言った。さらに、母親は、我が家の自宅から帰る時、スマホを買って使えるようにして来て頂戴と言い、4万円を彼女にわたし、それくらいの安いものでいいからと言った。わたしも彼女と一緒に母のスマホを見に行った。彼女は、使えればいいから安いスマホでいいわね、といい、2万円前後のスマホを購入し、余ったお金はポケットへ入れた。
さすがに、わたしは、その光景を見て母の、お金目当ての人、という言葉を思い出した。