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「食パンと缶詰好きな美容師」
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わたしの近所に小さな小さな美容師がいる。
雇われおばちゃん美容師の二人組だ。
この近所には東京工業大学の生徒が住んでおり、彼らがターゲットになっている。若い時は、東京工業大学の数学科に行きたいと思っていた。矢野健太郎と言う有名な教授がいたからだ。
東京工業大の学生は頭がすごいいのだろうと考えていたが、今、この歳になって見ると田舎のかっぺ学生の集団である。
その美容院へ行ったのは、妻がそこは安くて倹約になるし理髪店より美容師の方が上手よ、と強く勧めたからである。
50代ぐらいの女性二人組だ。
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一人はやせ細り、脚が完全にお脚になっていて、折れてしまいそうな足だ。それなのにもっと細く見せたいのかスキニーデニムを履いているので、かかしのようである。
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もう一人は、いつも黒いロングスカートでお腹が出ていて、ふくよかな感じがする女性だ。
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どちらか、手が空いている女性から髪を切ってもらう。
お脚の女性に当たると、すごく実生活で貧しいなあというのが伝わってくる。この女性は食い意地が張っているのか、食べ物の話が多い。
それも仕事が終わると駅の立ち飲み屋で、日本酒の冷を飲むそうである。独身なので自炊をすると食べ物が余るから、缶詰と食パンがメインだそうだ。さらに、高物価が上がると、いわしの缶詰がやっとですよ、という始末である。
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わたしは、その女性がしつこく貧しい食べ物の話ばかりをするので、内心、ハイハイ分かりました、黙っていてくださいね、うるさいですよ!!と思う。
もう一人の女性は、わたしが田園調布に住んでいるせいか、やたらとわたしは田園都市線に住んでいますという。内心、田園都市線がどうしたんですか?わたしは、田園調布に住み借金まみれですが、何か言いたいことがあるのですか?とむっとする。
どこに住もうが人の勝手ではないか。
「そう思うだろう?このババァ!!」と内心、嫌な気持ちになる。
それでもこの最悪のコンビニ囲まれ2年間はそこの美容室へ行った。
最後にわたしが切れて行かなくなったのだ。
予約をし、きちんとその時間に行ったのに、お脚スキニーババァがお昼のカップラーメンを買いに行ってまだ帰ってこない。
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田園都市線に住んでいることが自慢のたぬきのようなポンポコ女性が、謝りもせず、知らん顔をしている。
「おまえが、お脚ババァが来なくて済みませんと謝って当然だろう」
そのうちにやっとお脚ババァが来た。
カップラーメンが口の脇についているだろうが、ちゃんと拭いてきなさいよ、と内心思った。
この元々変わっている店だが、礼儀正しさと接客が全くなっていない。
腕前は、「下の中」というところだ。
もう、現在は、このお店は亡くなり、お花屋さんになっている。
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