劇団東京座「人形の家」 筒井勇樹 さんにインタビュー!「その2」
*インタビュー 2024年2月中旬
Japan Entertainment TOKYOが制作協力している、劇団東京座「人形の家」公演。
前回に引き続き、劇団東京座主宰・演出家の筒井勇樹さんにインタビューを行いました。
(聞き手: 広報担当A)
*前回:
https://note.com/je_tokyo/n/n7739afe74b5d
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広報担当A:
お話を伺っていると、筒井さんの考え方は、演劇をまっすぐに真面目にやっていた方とは少し違いがあり、その違いが面白さを生んでいるのかもしれない、と思っています。真面目に演劇をやっていると、例えばチェーホフであれば、当時のロシアの情勢とか、当時最先端の学問とか、そういったものが反映されており、きちんと勉強すると演劇そのものだけでなく、徐々にそういった周辺の考え方も大きな割合で入ってくる...という方をたくさん見ますが、筒井さんの考え方はもう少しベクトルが違うな、と感じます。
ちゃんと演劇ではあるんですが、「真面目に不真面目」という劇団のモットーが示す通り、真面目だけど敢えて真面目を回避する、演劇人として新しいタイプだなと思います。
筒井:
僕はチェーホフ好きなんですけどね。ただ、確かにチェーホフが好きな人と話すと、なんだかギャップがあります。彼の作品は「情緒性がない」「淡々としてる」というイメージで語られますが、僕にとっては「さらっとしてるけど、人間を描くのがうまい」というイメージです。
「かもめ」も いわゆるキャラゲーみたいだなと思います。誇張してるけど、「いるよね」っていうのが理解できる。現代においても通じるものが多いことを描く作家です。
広報担当A:
では改めて、筒井さんにとって新劇とは。
筒井:
「人間」というところを大前提に置いた上で、海外古典である新劇は、「人間の面白さ」を描いたものであると思っています。
もう少し言うと、「人間の面白さ」は不条理。条理にあっていない幅が大きいものを、人間にぶつけた時どうなるのか、ということです。
広報担当A:
不条理で演劇というと、別役実がいますね。あとはシュールレアリズムですが、安倍公房とか...そういった方向性ではなく?
筒井:
別役さんは僕にとって、そんなに不条理じゃないんですよ。会話は抽象的だけど、最終的なストーリーがしっかりしていると感じます。
安部公房も最近見ましたが、やっぱり不条理じゃない。例えば「友達」という作品は、いきなり押しかけてきた家族まがいの人たちに、主人公が悶えていく。主人公の一人称視点では不条理だけど、家族まがいの人たちは当たり前に思っている。それは僕にとっては不条理ではないです。
不条理っていうのは、僕にとっては本当にわけわかんないまま勢いよく始まって終わる、ギャグ漫画みたいなものです。勢いだけで乗り切るような、大胆なコント芸人もいますよね。それです。
広報担当A:
わけのわからない笑い、のような?
筒井:
でも、わけわからないだけの一本通しは美しくないと思っています。わけがわからない、でも感動する。というのが好きです。新劇的な人間の不条理と、僕の考える不条理の合作をしたいなというのは、いつも思うところです。
ちょっとずつピースをはめる。人生経験を当てはめる。それでわかっていくことがある...それを自分がしたいです。
広報担当A:
劇団東京座についても伺えればと思います。
筒井:
僕は、東京の声優専門学校を出たあと、ふたつの演劇の研究所で勉強していますが、同期と演劇を作ろうとは思わなかった。
東京座のみんながこの劇団に入った理由は、いうならば境遇的に僕に似ていたから。自分の哲学があり、また僕の持つ孤独?と近いものを持っている。僕の演劇が好きっていう人はあんまりいないですけど(笑)、揃って居心地がいいやつらで、でも芝居に本気になれるメンバーです。
広報担当A:
劇団東京座の組織運営の仕方も面白いなと感じています。昔ながらの主宰によるトップダウン的なことはされていないですよね。
筒井:
トップダウンではないですよね。組織図も作ったけど、ピラミッド構造はどうしても嫌で、結局「
僕が太陽で劇団員のみんなが周りを回っている」という構造にしました(笑)。後づけで、僕が劇団を作ったから僕が太陽、絶対折れずに光り続けるんだと言って(笑)。
僕は上下というのがあまり好きじゃありません。
僕の価値観が評価される時が来たとしても、それは僕が長生きしてベテランになったとか、僕が興味を持ったのが世間も受け入れた何かだっただけ。僕だけじゃなくて、劇団員みんながそれぞれに尊重しあえるものがあると思います。
だから、若い子達の発言が少なくならないようにしたい。若いうちのエネルギーは拡散型で、的を射ていない。それは若いうちにしか出せない。
そのエネルギーを、今は劇団員全員が持ち合わせている。その上で全員で話して、折り合いをつけて、決めたものにその力を注げれば、いいものができると思っています。
広報担当A:
では今回の公演「人形の家」について、思いを伺えればと思います。
筒井:
僕自身マイノリティな思考を持っていますが、マイノリティな僕自身の考えと、 お客さんの作品への先入観がどのくらい離れているのか知りたい、と思ってこの作品を選びました。
人形の家を知っている人は、フェミニズムの台頭の話だと言います。フェミニズムの中で、マイノリティの言葉を広めようという話だと...でも、僕はそういう話じゃないと思う。
当時の人間たちの置かれている環境から見える人間の本音、”What’s fighting for(何に対して戦っているか)?”を考えると、作者のイプセンは、社会規範のあり方について疑問を思ったんだ、と感じます。男尊女卑というよりも、道徳や常識など、「人を縛ってそういう立ち居振る舞いをしないといけない」というものがある。そういう状況に気づいて欲しい、ということかなと。そういった意味では、主人公の夫ヘルメルも「人形」だと思うし、その他全員の登場人物も人形です。現代の人たちも「より人形」なんじゃないかと思います。そこに異を唱えたい。本当に君のそれは自分の言葉なのか、自分の行動なのか、と問う僕の思いと、この作品は一致しています。
広報担当A:
最後に、読んでくださっている方にメッセージを。
筒井:
僕も含め、劇団東京座は演劇界の中でも若輩が多い座組です。技術や粗が見えるところではありますが、みんな芝居に対して真摯だし、熱量は舞台上で死ぬぐらいのものがある。
近い未来の演劇界を引っ張っていくであろう我々の芝居を是非見にきてください!
あとは、売れていないうちから目をつけておくと、将来酒の席で自慢できるよ!(笑)
広報担当A:
(笑)
本日は楽しいお話をありがとうございました!
***
劇団東京座 第7回本公演
「人形の家」
作:ヘンリック・イプセン
翻訳:原 千代海
演出:筒井勇樹
出演
【DUKKE班】
ヘルメル: 直江虎何
ノーラ: 飯富なみだ
リンデ夫人: 北澤小夜子
ランク: 馬場清人
クロクスタ: 上水流大陸
乳母: 小林怜以奈
女中: 石川明香里(両班に出演)
ポーター: 山県獅童(両班に出演)
【HUS班】
ヘルメル: 宇佐美風味
ノーラ: 身内ソラ→飯富なみだ
リンデ夫人: 小山田叶里
ランク: 穴山ジョウジ
クロクスタ: 宮地理
乳母: 木曽衣
女中: 石川明香里(両班に出演)
ポーター: 山県獅童(両班に出演)
会場
阿佐ヶ谷アルシェ
(東京都杉並区阿佐谷南1丁目36-15 レオビルB1/阿佐ヶ谷駅より徒歩3分)
公演スケジュール・開演時間
2024年3月28日 (木) ~2024年3月31日 (日)
3月28日(木) 13:00【D】/ 19:00【H】
3月29日(金) 11:00【H】/ 15:00【D】 / 19:00【H】
3月30日(土) 11:00【D】/ 15:00【H】 / 19:00【D】
3月31日(日) 13:00【H】/ 17:00【D】
【H】HUS班 【D】DUKKE班
チケット
一般
前売4,000円
当日4,500円
学生
3,500円 ※要学生証提示
(全席自由・税込)
ご予約(劇団扱い)
https://ticket.corich.jp/apply/297491/
演出助手:深双実華
舞台監督:真田街路
美術:愛ト
音響:一条政美
照明:Rei
宣伝美術:飯富なみだ
衣装:木曽衣
制作協力:(一社)ジャパンエンターテイメント東京
協力:株式会社オールスタッフ/劇団Q+/笑塾/無名塾(50音順)
お問い合わせ:
東京劇団座WEBサイト(フォーム)
https://www.tokyo-za.com/inquiry
劇団東京座WEBサイト
https://www.tokyo-za.com
劇団東京座公式X
@GekidanTokyoza
※開場は開演の30分前です。
※この度、「第7回本公演 人形の家」にHUS班ノーラ役として出演を予定しておりました《身内ソラ》は、体調不良につきやむなく降板する運びとなりました。出演を楽しみにされていた皆様にはご迷惑をおかけ致しますこと、深くお詫び申し上げます。
代役といたしまして《飯富なみだ》がHUS班ノーラ役を務めることとなりました。
出演者/スタッフ一同、一丸となり残りの稽古に邁進してまいります。
引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。