劇団東京座「人形の家」 筒井勇樹 さんにインタビュー!「その1」
Japan Entertainment TOKYOが制作協力している、劇団東京座「人形の家」公演。
今回は劇団東京座主宰・演出家の筒井勇樹さんにインタビューを行いました。(聞き手: 広報担当A)
***
*インタビュー 2024年2月中旬
広報担当A:
劇団東京座のプロダクションによる「人形の家」の面白さは、主宰/演出の筒井さんによるところが大きいと思っており、今回その秘密を紐解くためのインタビューをさせていただきます。とても楽しみです。よろしくお願いします。ではまず、演劇を始めたきっかけをお願いします。
筒井:
その話をするための時系列で、ちょっと悩んでいて...生い立ちからお話しします。まず、小学校の時のことから。
僕は小学校の頃、スイミングスクールに通っていて、5-6年生の頃、水泳の試合で選抜されるようになった。僕は香川県出身なんですが、のちに全国大会で名前が出るメンバーとも普通に大会で競っていけるようになっていました。
それで中学校になっても水泳を続けていたんですが、ふと試合前にプールで待機していたとき、漠然と将来が頭に浮かんでしまったんです。
「高校、大学でも水泳を続け、就職して家庭を築いていくんだ」と...謎の将来の線路が見えてしまい、なぜかひどく落ち込みました。
当時僕は水泳だけじゃなく、空手、英会話、ダンスなど、習い事をめちゃくちゃやっていたのですが、急に全部辞めてしまい、中学校も行かなくなってしまいました。
広報担当A:
とつぜん不登校になった、と...
筒井:
そうです。
広報担当A:
学校に行かずに、ご自宅ではどんなことを?
筒井:
それがゲームとか漫画や、アニメです。中学校の終わりぐらいに、執事が主人公のコメディ漫画にハマって、「執事になりたい!!!」とか思ったり(笑)
その漫画に東京の練馬区が出てきて、「練馬の高校に行きたい!!!!」とか言い出しました(笑)。のちのち東京に上京しよう、と思ったのはこの出来事がきっかけかもしれません。
でも当時の僕は中学の勉強もしてない、内申点もないので、東京の行きたい高校は受験ができるわけがない。結局地元の私立の高校に補欠で入学し、通うことになりました。
高校からは楽しかったです。中学校の分を取り戻すように、バカなことをいっぱいして、しすぎてしまって(笑)。結局途中で学校を変え、高校卒業しました。
広報担当A:
高校卒業後の筒井さんは、東京にある声優の専門学校に入ったと伺いました。
筒井:
当時の僕は、他のみんなのように大学に行く、ということ自体がちょっと億劫でした。別のやり方でモラトリアムを過ごしたいと思っていた。
やっぱり僕の地元はすごい田舎で、コンビニも自転車で20分ぐらい行かないとない場所だったので、自分のやりたいことやれるっていうところに対する憧れもありました。
でも声優という表現とか声の演技については、当時は何も考えられていなかったです。単純にアニメやゲームにたくさん触れていたので、漠然と声優かな、という気持ちでした。「声で演技をする」っていう感覚さえもなかったんですよ。「声優」という人はいるだろうけど、存在するであろうというだけで、「キャラクターに息を吹き込んでいる」という体感がなかった。
広報担当A:
それについては専門学校の先生たちに教わったんですね。
筒井:
僕が行った専門学校で常にレッスンをしてくださったのが、ほとんどが舞台出身の人たちで、声優の人が全然いない、みたいな環境でした(笑)。そこでいわゆる声優業だけではなく、演劇人とか舞台人としての基礎技能を教えていただき...そうこうするうち、舞台の方に染まってしまいました(笑)
広報担当A:
声優という職業は、昔から舞台と縁が深かった歴史があります。以前、別の仕事の繋がりで声優さんの劇団の公演を見に行ったことがありますが、キャリアを重ねている声優さんほど、舞台という世界が好きなんだろうな、という印象を受けたことを思い出しました。声優業と舞台俳優業、強い繋がりがありますね。
筒井:
アニメの文化に入っていたのがプラスになったことは、他にもあります。引きこもっていた時、動画サイトを見ていたのですが、そこで某アニメ研究家の方が言っていた「戦闘思考力 (人と会話をする上での勝ち方)」に影響を受けて作ったルーティーンがあります。
演劇に必要なのは思考力。思考力の中には回転の速い思考と重い思考、2つがあります。
軽い方の「回転の速い思考」は、パワーはないけど物事を積み上げていくもの。みんなが頭の回転を早くすれば、意見がめっちゃ出ます。
稽古中に僕がおもむろに「振りの言葉」を誰かに投げかけるんですよ。そしたら振られた誰かが、乗って返しをする、ということをしています。
対して、「重い思考」は 役について考える、 行間を読む、 作者の伝えたいことを考える、ということです。
その2つの思考のスイッチを役者は持つべきだと、僕は思っています。役者にとって一番大事なのは、芝居をする時。その思考力の切り替えがないと、お互い噛み合わないと思う。シーンによって思考を変える、もあるし、幕の間に数日間経過していたのなら、思考力が切り替わっていないと感じられないものがあります。
広報担当A:
「人形の家」の稽古を拝見していると、筒井さんの稽古は「引き出しがちゃんとしている」「戯曲の言葉を大事にしている」という印象を受けます。台本の真髄をどう引き出すかに注力し、その活かし方を考える。そういうところを一つ一つ、すごく丁寧にやられています。 その姿を拝見して、筒井さんにとって「言葉」とは何だろう、ということをお尋ねしたいと思っています。
筒井:
僕にとっての言葉は「人に伝えようとする意志」みたいなものかなと思っていて...伝えたいことを自分サイズで伝える、ではないです。人に何かを伝えるっていう時って、正直な話、行動する方がエネルギーもあるし、理にかなってると思うんですよ。ではなぜ言葉を使うのかっていうと、危険を察知 させたり想像させる。または、相手を惑わせたりとか信じさせる、ということができますよね。そうやって人間は言葉を使って生き残ったのかな、と思います。
広報担当A:
最近演劇学の研究で「演劇が生まれたのは人間の”人間性”を作るためだ」という論があるんだそうです。生き物としての表現というのは、ヒトの場合もそもそもは身体だったんですよね。獣を狩って食べて嬉しかったら踊った、みたいな...でも舞台では、かつて踊りとか歌がメインだったところから、 言葉単体による劇が生まれた。それはなぜか、と探っていく研究が行われているそうです。
また、いまお話していて、筒井さんはやはり引き出しが沢山あるな、と思います。
筒井:
いえ、僕は大学に行かなかったし、勉強はできないです。ただ、哲学とか宗教だったりとか、経済とか 地理学とか、直接対峙でない別の観点から見ると「人間」というものがよくわかります。人間性みたいなものと関わってくると思うんですけども、離れたところから人間っていうものを知りたかったのかもしれないな、って思います。
広報担当A:
舞台作品を通しても、人間を知りたいという気持ちがある、ということになるでしょうか。
筒井:
難しいですけど、人間って理にかなっていないことをする時が結構あるんです。僕が人生の中で影響を受けたもののひとつが、某1990年代の有名SFアニメ映画です。クライマックスで主人公が人類の進み方を選択するんですが、新しい「個が保たれていない世界」か、今までと同じく「バリアーのような自他境界がある世界」かを選ぶんです。最終的にはバリアーとともに個が保たれている世界を選び、女の子と2人で世界に残るんですが、せっかく自分で選んだ世界なのに、最後の最後で主人公は、女の子の首を絞める、という...
見た時に僕は、「これ人間やな!!」って思いました。そういう人間を知りたい。関わりたい。
そういう風に考えている自分も人間だし、自分のことももっと知りたい。
広報担当A:
「人間」というワードが出てきていますね。個人的に、劇団東京座の作品選出の観点を知りたいと思っていましたが、「人間」という言葉で繋がった気がします。
シェイクスピアは人間の本当の本質(true nature)を描こうとした作家ですし、「アルジャーノンに花束を」という作品も、突き詰めれば「人間とは」というところに行き着くと思います。
筒井:
「人間て面白いな」は僕の根底にある気持ちです。でも怖い。でも面白いです。
(インタビューその2へつづく)
https://note.com/je_tokyo/n/nb32211ef3a41
***
劇団東京座 第7回本公演
「人形の家」
作:ヘンリック・イプセン
翻訳:原 千代海
演出:筒井勇樹
出演
【DUKKE班】
ヘルメル: 直江虎何
ノーラ: 飯富なみだ
リンデ夫人: 北澤小夜子
ランク: 馬場清人
クロクスタ: 上水流大陸
乳母: 小林怜以奈
女中: 石川明香里(両班に出演)
ポーター: 山県獅童(両班に出演)
【HUS班】
ヘルメル: 宇佐美風味
ノーラ: 身内ソラ→飯富なみだ
リンデ夫人: 小山田叶里
ランク: 穴山ジョウジ
クロクスタ: 宮地理
乳母: 木曽衣
女中: 石川明香里(両班に出演)
ポーター: 山県獅童(両班に出演)
会場
阿佐ヶ谷アルシェ
(東京都杉並区阿佐谷南1丁目36-15 レオビルB1/阿佐ヶ谷駅より徒歩3分)
公演スケジュール・開演時間
2024年3月28日 (木) ~2024年3月31日 (日)
3月28日(木) 13:00【D】/ 19:00【H】
3月29日(金) 11:00【H】/ 15:00【D】 / 19:00【H】
3月30日(土) 11:00【D】/ 15:00【H】 / 19:00【D】
3月31日(日) 13:00【H】/ 17:00【D】
【H】HUS班 【D】DUKKE班
チケット
一般
前売4,000円
当日4,500円
学生
3,500円 ※要学生証提示
(全席自由・税込)
ご予約(劇団扱い)
https://ticket.corich.jp/apply/297491/
演出助手:深双実華
舞台監督:真田街路
美術:愛ト
音響:一条政美
照明:Rei
宣伝美術:飯富なみだ
衣装:木曽衣
制作協力:(一社)ジャパンエンターテイメント東京
協力:株式会社オールスタッフ/劇団Q+/笑塾/無名塾(50音順)
お問い合わせ:
東京劇団座WEBサイト(フォーム)
https://www.tokyo-za.com/inquiry
劇団東京座WEBサイト
https://www.tokyo-za.com
劇団東京座公式X
@GekidanTokyoza
※開場は開演の30分前です。
※この度、「第7回本公演 人形の家」にHUS班ノーラ役として出演を予定しておりました《身内ソラ》は、体調不良につきやむなく降板する運びとなりました。出演を楽しみにされていた皆様にはご迷惑をおかけ致しますこと、深くお詫び申し上げます。
代役といたしまして《飯富なみだ》がHUS班ノーラ役を務めることとなりました。
出演者/スタッフ一同、一丸となり残りの稽古に邁進してまいります。
引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。