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憲法に「緊急事態」新設する危険性

 韓国の尹錫悦大統領の「非常戒厳」騒動に対して、日本でも憲法に「緊急事態」を明記せよと主張する政治家がいる。その発言と反論をメディア報道から拾った。

 維新の馬場伸幸前代表は12月4日未明、X(ツイッター)に「韓国で起こることは日本でも起きる可能性があるということを自覚しないといけない。憲法改正で緊急事態条項を整備すべきだ」と投稿した。
 これに対し、共産党の小池晃書記局長は4日の記者会見で「緊急事態条項は絶対に作ってはいけない。今回の韓国の非常戒厳を見ても、国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会デモなど一切の政治活動を禁止し、全ての言論と出版は戒厳者の統制を受ける。非常に強権的な中身になっており、こうした事態を招く危険がある」と述べ、憲法改正による緊急事態条項の整備に反対した。(12/4 毎日新聞)
 元国民民主党衆議院議員の菅野志桜里弁護士もXで「日本にも権力統制型の緊急事態条項を早急に憲法に導入すべきだ。国民、維新、有志の会でまとめてある緊急事態条項には、国会による宣言解除規定も入っている。緊急事態条項が危険なのではなく、まともな緊急事態条項がない状態こそ極めて危険なのだ」と投稿した。

 これらの主張にジャーナリストの青木理氏は、「韓国のようなことが起こるから緊急事態条項を創設しろ、というのは話の順序が全く逆でしょう。自民党がかつて作成した改憲草案に記された緊急事態条項は、まさに韓国憲法が定めている戒厳条項と完全に相似形です。あまりに乱雑な自民党改憲草案の通りに緊急事態条項が作られることはないにしても、この感覚で憲法改正を進めたら、近いものになる可能性もある。そうなれば、まさに錯乱状態になった為政者が簡単に“緊急事態”を宣言できるようになってしまいかねません。今回の韓国の混乱を見て『日本にも緊急事態条項が必要だ』などと主張している人びとは、どうかしているとしか言いようがない」

そして、こう続ける。「大統領制の韓国では現在野党が国会の多数派を占め、メディアも市民も猛抗議したので歯止めが機能しましたが、たとえば『一強』政権下の日本だったらどうか。果たして国会が為政者の暴走を敢然と制御できたか。メディアが一斉に批判し、市民が国会に押しかけてきちんと声を上げられたか。そうあってほしいと思いますが、むしろ今回の韓国の出来事からくみ取るべきは、『非常時』『緊急時』を理由に為政者へ権力を集中させることの危険性であり、仮にそうなっても政治やメディア、市民社会があらがう民主主義の根源的な強さの重要性でしょう。安易な改憲論議に結びつけるのは本末転倒です」(12/6 AERAdot.)

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