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014新しい時代にはデザインが必要
5月8日からの新型コロナウイルス感染症の5類移行後は、現在行われている各種制約がどこの組織でも原則撤廃されるでしょう。私のいる会社でもその方針を明確化しました。ただ、人の心理はやや遅れて動きます。本当に心の中から制約が撤廃されるのは、マスクをするのが苦しくなる夏の季節の頃かもしれません。いずれにしても、多少の時期のずれはあっても、オンラインを強いられていた思考停止の日々は終結するのです。その時、私達が私達の仕事を、職場を、そして生活をどうデザインするか、これは私達の手に委ねられていることなのです。組織における人事部の責任は重大です。もう政府や自治体の指示などない世界に戻るのです。自らデザインするのです。
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先週の月曜日、日本キャリアデザイン学会のイベントであるキャリアデザインライブを実施しました。法政大学を会場にオンラインとのハイフレックス開催です。終了後には会場に集まった有志と打ち上げをやりました。本当に久しぶりのリアルでした。
先週の土曜日、一般社団経営学習研究所の主催により品川のコクヨ様のスペース「キャンパス」を活用させていただいて、4本立てでのべ250名を超える参加者を集めた大規模リアルイベント【オフラインフェス2023:OFFLINE Festival】を開催しました。こちらの内容は、中原先生のブログと岸さんのブログを是非ご確認ください。後日、JMAMさんの「Learning Design」にも掲載予定ですのでお楽しみに。そして、こちらも終了後に経営学習研究所のメンバーで打ち上げを実施しました。
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それぞれのイベントのリフレクションも本来はしないといけないのですが、今日はこの2つのリアルイベントを経て感じたことを少し書きます。土曜日の経営学習研究所のイベントは、中原先生の発案により「リアルに振り切る」ことがコンセプトでした。リアルならではのコンテンツを4本並べ、会場のレイアウト替えも頻繁に行い、まあ、これがリアルだわという企画にしました。私たちはここ3年、目一杯オンラインに振り切ってきました。というか振り切らざるを得なかったのです。そんな中で、オンラインの楽さ、イージさに甘えていたなぁとも感じます。久しぶりに大規模リアルイベントをやって、会場設営の大変さ、受付の手間、移動時間・模様替えの時間が必要なこと、段取りとロジの大切さ、そして即興力とチームワークの大切さを痛感しました。そして金曜日は3万歩以上歩きました。プロデューサー役、ディレクター役をかわるがわる仲間が担って1日のイベントを回すのですが、これらは何度オンラインイベントの経験を重ねても得られないものです。
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そして、リアルイベントは様々な化学反応を起こします。文字通りの交流です。リアルイベントは上手にデザインすれば、非日常の祝祭になるのです。華やかかつ猥雑なのです。終了後の余韻も味わえます。このダイナミックさはオンラインではなかなか難しいというか、正直いって不可能です。
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だからといって、5月からはリアルにすべて戻そうよというつもりはありません。世界中から瞬時に集まれるというオンラインの最大の魅力は大切ですし、会場手配が不要、前後の時間が不要というパフォーマンスの良さも魅力です。また、その場で資料を共有したりといったのも、リアルではできない芸当です。
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月曜日のキャリアデザインライブは、いわゆるハイフレックス開催でした。会場とオンラインを一体化させて、好きな方で参加いただけるかたちをとりました。法政大学さんが授業で使っている設備をお借りできたからこそ、できた芸当でした。正直、ハイフレックスはあまりやりたくないなと感じました。通常のオンライン配信と比べて、ディレクションの概念が必要です。
ハイフレックスという選択肢はあるものの、個人的にはリアルとオンラインのどちらかで使い分けていくことをデザインすることが大切だと感じました。
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おそらくこれからオンラインにもさらなる進化が求められます。リアルができるようにとなると、間違いなくオンラインの企画は物足りなくなります。場所を超えることとタイパのよさ以外の魅力を付与したいところです。
今回はイベントだけを論じていますが、すべてにおいて同じようにデザインが必要です。その中でも一番大切なのは、はやり働き方のデザインです。仕事内容や熟練度によっても、そのデザインは変わってきます。選択肢がある世界は実に豊かな世界ですが、なかなかやっかいな世界でもあります。5月8日までの2か月あまり、私たちは真剣にこの問題に立ち向かわなければいけません。なんとなくいけばいいやとか、成り行きでいいよねではいけません。
実は人事の仕事のすべてにこれはいえることです。何となくでも成り行きでもそれなりにはまわるのですが、意図的にデザインをすることによって、組織力は高まるのです。面倒なことに手を出す、火中の栗を拾うといったことにわくわく感を得ながら日々を過ごせることが人事でマネジメントを担う人の必要条件かもしれません。
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