020 日本一敷居の低い人事部に
毎週木曜日に慶應丸の内シティキャンパスにて「組織版キャリアコンサルティング指導者育成プログラム 」を受講しており、久しぶりに花田光世先生の教えを受けるとともに、久しぶりに世界の事務局の切れ味の良い事務局ワークを堪能しています。いろいろと考えることも多いので、たまにはここに残しておきたいと思います。テーマとしては、人事部のこれからの「あり方」です。
日本には少数ながら、社員のキャリア支援を専門とするキャリアアドバイザー組織を持つ企業があります。この講座のメインターゲットは、そういった企業なのでしょう。私はそういった企業に在籍した経験がないので、まずは素朴な疑問にぶち当たります。
疑問➀ キャリアアドバイザー組織を持つ企業の人事部は、社員のキヤリア支援を自分達の仕事だとは思っていないのでしょうか。それで、組織の活性化等の自らのミッションを果たせると思っているのでしょうか。これが最初の不思議です。
疑問➁ 次の不思議は、キャリアアドバイザー組織についてです。彼らは彼女等は、相談に来る社員に寄り添い、社員の認知に投げかけ、社員が自己理解を深め、社員が自己変容して行動化することを支援するだけで、自分たちの仕事が終わったと思っているのでしょうか。社員の生の声を人事施策に反映したり、必要があると感じたら相談者の上司や関係者に直接的に働きかけたりすることをせずに、寄り添うことだけで仕事が終わりだと思っているのでしょうか。
この2組織を分断する悪者として、キャリコン倫理規範の守秘義務をあげるむきもありますが、職業能力開発促進法にあるキャリコン資格はく奪等の罰則規程の対象は、あくまでも職業能力開発促進法における守秘義務要請であり、その内容は普通に人事部員が追っている守秘義務要請と大差はありません。なので、分断しているのは、ある種のセクショナリズムというか、組織ができることによって生じる心の壁にほかならないように思います。
そして、いろいろと聞いていると、どうやらそのセクショナリズムを生む、最大の理由は人事部への不信感のようです。人事に本音を話すと評価に影響するとかいうテレビドラマの人事部のような世界が本当に一部の会社では存在するようです。人事部が目的合理性を持って素直に変わればいいのに、それができないから、キャリアアドバイザー組織のような安全安心だけど、効き目が緩い組織が生まれたのでしょう。
私のいる企業では、人事部は「日本一敷居の低い人事部」を標ぼうしています。あるゆる相談事を私たちは受け付けます。それをキャリアアドバイザー的に対応する場合も、人事部的に対応する場合もあります。まぜこぜもあります。時にもめている当事者の双方から、時を同じくして相談がくることもあります。現場の上司の多くも、困っている社員に取りあえず「人事部に相談に行ってみたら」といってくれたり、複雑な相談を人事部にリファーしてくれます。伺う相談は、すべて何らかのかたちで会社の人事施策に活かします。聴きっぱなしはしません。私たちは聴くことが仕事ではないからです。私たちの仕事は、人と組織の側面から企業目標の到達を支援することです。そのために聴くという行為が実に有効なので聴くのです。
華々しくはないけど、これも立派な戦略人事だと思うのです。逆に世の中のCHRO的戦略人事ブームは、こういった地道だけど実は効く漢方のような戦略人事を疎かにする危険があります。先週の「組織版キャリアコンサルティング指導者育成プログラム 」講座に参加して、こんなことを考えました。人事部は今、変革の過渡期です。変革のひとつの方向性として、徹底的に敷居の低い人事部にするという手法をとる道は、間違いなくあるはずです。会社で何が起こっているのかを把握せずに、施策を繰り出すのは危険すぎます。そして、この必要性があるから、ようやくキャリアアドバイザー組織と人事部の協業という概念が強まってきているのかなと思います。それにしても、久しぶりに連続性のある講座に参加していますが、実に楽しいです。必ず毎週、呑んで帰りますし…。自分のアイデンティティを感じます。幾多のこんな場があって今の自分があるんだと、多くの方に感謝の気持ちでいっぱいです。
※人事部長、引継ぎシリーズNo.20