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今だから、ポジティブ・フィードバック~今年の新入社員研修
10日の金曜日で人事が直接担当する新入社員研修が終わりました。途中から急遽web開催となるライブ感満載の日々でした。若手の人材育成のベースに置いているのは、経験学習理論です。松尾陸先生の書籍がバイブルです。
新入社員が、リフレクションとかフィードバックとかいう言葉を自然と使うようになってくるのが、とてもかわいいです。彼ら彼女らの世代は、もともとフィードバックが大好きです。インターンなんかに来ても、とてもフィードバックを求めてきます。就活でも選考ステップ毎にフィードバックを具体的に返してあげると、とても喜びますし、その会社への志望動機も高まる傾向があるように感じます。裏返してみると、人の目が気になるのかもしれません。
フィードバックには、ポジティブなフィードバックとスパイシーなフィードバック(©中原先生)があります。どうしても新人同士は最初のうちは、ポジィティブなフィードバックというか、生ぬるいというか、当たり障りないというか、そんなフィードバックをしがちです。なので、たいていの年は研修1週間目くらいに「フィードバック講座」というのをやっていて、フィードバックの何たるかを語り、同期同士でスパイシーなフィードバックをする意味を語り、スパイシーなフィードバックをする際のコツと注意点を説明します。それ以降は、かなり締まってきます。ただ、たまに「やり過ぎ注意」状態になる新人がいるので、よくウォッチしないと駄目ですが。ただ、今年は様相が違います。
今年の新入社員研修は、私の場合、12名の少人数でのスタートなのですが、半数近くが地方から初めて東京に出てきて1人暮らしをしています。慣れない街で初めての自炊や洗濯に取り組んでいる人もいます。親からはニュースで東京の情報が流れるたびに心配の声が来ます。連休も迷惑かけたらいけないから、帰省せずに東京にいる予定だとけなげな声も聴きます。でも、目一杯、前向きに力強く仲間で連携とって研修を進めています。たぶん、2020年度入社同期はもの凄く強く優しい代になるんだろうなと思います。自主性と相互扶助の精神がきちんと育つ代にきっとなります。10日現在時点の仕上がりは驚くほどです。もちろん研修内容が良かったからという自画自賛もありますが。それにしてもwebでもいろいろなことができますね。webでやるいいところは、うまく進めるとただ聴いているだけの人、フリーライダーの人をつくらずにすむところです。これ、リアルでもできるのですが、webの方が自然にできます。
そして、私から投げかけるフィードバックは、とにかくポジティブなフィードバックです。もちろんできていないことは具体的に教えますが、日々、できていることを探し、日報の返信では個別に具体的にフィードバックの言葉を伝えます。皆、不安です。言葉にできないくらい不安なはずです。学生から社会人になるというだけで、凄い不安があって当たり前です。でも、今年はこれが吹っ飛ぶくらい別の不安があります。そんな中で学んでいます。彼らの今の学びは、けして不要・不急ではないはずです。学生から社会人になる瞬間は一生に一度しかない、人生最大のトランジションです。
日本赤十字社は、自サイトで「新型コロナウイルスには3つの感染症という顔がある」と訴えています。
1つ目は「病気そのもの」、2つ目は「不安と恐れ」、3つ目は「嫌悪・偏見・差別」です。是非、サイトを詳しくお読みください。不安に対して「このウイルスは見えません。ワクチンや薬もまだ開発されていません。わからないことが多いため、私たちは強い不安や恐れを感じ、ふりまわされてしまうことがあります。それらは私たちの心の中でふくらみ、気づく力・聴く力・自分を支える力を弱め、瞬く間に人から人に伝染していきます」と説明がありますが、まさに不安の特徴を実によく言い表しています。3つ目の「嫌悪・偏見・差別」は、いうまでもなく2つ目の「不安と恐れ」がもたらすものです。この段階になってしまうと社会が壊れ始めていきます。絶対にそれは避けなければいけません。ですから、今、大切なのは、不安を上手に処理していくことなのです。
そのためには「気づく力」「聴く力」「自分を支える力」を鍛えることが大切です。「気づく力」と「聴く力」は、真摯に学ぶこと、きちんと振り返ること、他者と自分の違いに気づくことという、といった新入社員研修に盛り込まれている要素でかなりカバーできます。正しく学び、適切な認知をできるようになることが大切なのです。
「自分を支える力」はさらに大切です。ある意味では、心の免疫力を高めることとイコールだと言えます。初めて一人暮らしをする人には特に大切です。地元の関係性を離れると、もともともっているソーシャルサポートの多くを得られない状況になるからです。会社や同期がこれを補完してあげる必要があります。その大切なツールが、ポジティブなフィードバックなのです。しっかりと承認し、常に気にかけているよとメッセージングし、何かあったらすぐに対応してあげ、きちんと期待している気持ちを伝える、そんなことがとても大切な時期です。こちらも忙しくて時間がないので、あまり密に新入社員を見ることができません。これも松尾先生の本から学んだ話ですが、トマトの永田農法の話で聞いた「手はかけずに、目をかける」精神がとても大事だとあらためて感じます。