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第5回 夏を告げる藤の花

桜の季節の後、江戸っ子が次に夢中になるのは藤の花。
藤の花が咲くと、人々は春の終わりと夏の訪れを実感しました。

また、藤の花にとどまらず、日が長くなると共に多種多様な花が見頃を迎え、あちこちの花見スポットが観光客で賑わいます。
桜だけではない江戸の花の名所の数々、今回はその一部のご紹介です。

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これらの名所は『江戸名所花暦(えどめいしょはなごよみ)』など、当時のガイドブックにも記載されています。名所になったきっかけは様々ですが、現代も変わらず花見スポットとして名を残している所が多いですね。

当時の花見スポットは、花を愛でる場所であることはもちろん、お酒やお弁当、そこでしか買えない土産菓子などの飲食を楽しむ場所でもあり、また、新しい出会い(恋のお相手)を見つける場所でもありました。
ガイドブックを見ながら「よし、次は蓮の花が見頃だからそいつを拝みに行こう」と言いつつ、実のところの目的は様々だったわけですね。

こうして花見事情を調べていると、春の始まりから夏へと移り変わっていくこの季節を全力で楽しんでいた人々の様子がうかがえます。
個人的には冬の季節が好きで、この時期は枯れ木や冬の花を恋しく感じることすらあるくらいなのですが…寒さによる飢えや、乾燥による火災の危険に晒される冬を過ごしていた江戸の人はそうも言っていられません。今以上に切実にこの季節の訪れを待つ人が多かったろうな、と思うのでした。

(笹井さゆり)



【参考文献】
監修 河合敦『図解・江戸の遊び事典』学習研究社
竹内誠、大石学ほか『ビジュアル・ワイド江戸時代館』小学館
日野原健司、平野恵『浮世絵でめぐる江戸の花』誠文堂新光社

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