草木と生きた日本人 一 若菜
一 記紀に見る草木
古くから、日本人は、草木を大切にし、草木と共に生きてきました。その事実は、『古事記』、『日本書紀』をはじめとする神典はもちろん、古へ人が愛読してきた『万葉集』や『古今和歌集』などの和歌文学にも明らかです。
たとへば、『古事記』を見てみませう。『古事記』の上巻、神代のことが記されたこの巻には、次の記述があります。なほ、以下に引用する『古事記』と『日本書紀』は、『日本古典文学全集』(小学館)によつてゐます。
「次に風の神、名は志那津比古神を生みき。次に