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人生に失敗はつきもの。むしろその経験をその後、どう生かすかが大切だ。

 これまで失敗に関する名言や逸話は数多くあります。その多くがこれまでの偉人や歴史的人物たちの成功譚(サクセスストーリー)に纏わるものです。例えば、アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)の「一度も失敗をしたことがない人は、何も新しいことに挑戦したことがない人である(Anyone who has never made a mistake has never tried anything new.)」という言葉は有名です。また、みなさんも好きな人が多いディズニーをつくりあげたウォルター・イライアス・ディズニー(Walter Elias Disney 一説によれば一族はアイルランドからの移民、その姓のDisneyは元々 d'Isigny と綴られ、フランスのノルマンディーに11世紀に渡来したノルマン人の末裔に由来するとされる)も絶えず心配と不安の連続する人生の時期を経て、成功へ登りつめていきました。貧しい幼年期を過ごし、絵や漫画に魅せられ、アニメーターをへてウォルト・ディズニー・カンパニーを設立します。資金繰りや著作権をめぐるトラブルなど、苦節と波乱に満ちています。このような境遇でも、ウォルトは考えます。「失敗したからってなんだ。失敗から学んで、また挑戦すればいいじゃないか!」、こうして現在のディズニー(カンパニー)の礎を築き上げました。
 確かに失敗がなければ成功は得られず、まさに「失敗は成功のもと」といわれる通りだと思います。ただし、失敗したからすべて成功するわけでもありませんので、いかに失敗を受け止めて、きちんと分析した上で、その後の行動に活かすかでしょう。それは個人レベルから組織のあり方まで問われることにもつながっています。
 ビジネス界の一例として、オランダのポール・ルイ・イケス『失敗の殿堂:経営における「輝かしい失敗」の研究』(東洋経済新報社、2021年)には、失敗を全部で16のパターンに分類しています。これらのパターンは、成功のパターンやストーリーではなく、むしろ「落とし穴」のパターン化を分析しています。失敗は同じような状況ではほぼ起きないとされ、過去の出来事を再利用しようとしても再現性があるとは言えず、むしろ失敗の概念を変える必要性を説いています。あらためて目的を問い直し、新たな過程での発見や知恵の共有を重要視しているのです。
 一方、かつての日本軍の組織のあり方ならびにその失敗を分析した『失敗の本質』(1984年初版、中央公論社)という著作があります。同書では、その失敗へのプロセスやその原因などを詳細に分析し指摘していますが、いずれにせよ日本社会全体ならびにそれを誘導した組織として現実を直視して失敗を失敗としてまず真摯に受け止める姿勢に欠けていたことは否めないように思います。目的の不明瞭さ、その一方で反対意見を排除する柔軟さの欠如、状況分析の甘さ、非科学的根拠、かつての成功体験にもとづく精神論への依拠、そしてなにより最後には、日本人特有の「空気」によって有耶無耶にしてしまったことなどが指摘されます。
 個人ではなく、組織での失敗の活かし方は個人よりさらに難しい面を強く感じさせられますが、だからこそ同じ失敗の繰り返しではなく、むしろ失敗の概念を新たにしての知恵の積み重ねとその後の行動がとても重要になっていくと思います。それにしても、日本人特有の「空気」によって有耶無耶にしてしまったことは、現代の日本でも相通ずるようにもみえますが、みなさんはどのように考えますか。
 人生に失敗はないという考え方もありますが、どちらにしても失敗をどのように活かすかはその後をどのように生きていくかに深く関わっていると言えるのではないでしょうか。

        くりおんだ 人生塾 柳緑花紅

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