ChatGPTで広報の仕事は奪われるのか AI時代の広報生き残り術を考察
AI脅威論が止まりません。
「デスクワークのほとんどが不要になるんじゃないか」
この議論については、広報・マーケティングの仕事なんてデスクワークの「ど真ん中」も「ど真ん中」です。
…が、ただやみくもに怖がって動けなくなるよりも、
もう少し具体的に、どんな仕事のしかたをすると淘汰されてしまい、どんな力をつければ今までよりももっと求められるようになるのかを考えた上で
正しく怖がろうと思ったので、ちょっと備忘録として書いてみたいと思います。
言語的参入障壁が限りなく低くなったことで海外からの破壊的イノベーションがいとも簡単に日本へ
まずはちょっと怖い話から。
ChatGPT翻訳やDeepLはじめ言語の壁は限りなく低くなっている昨今。
今まで米国や中国で人気のスゴいサービスが日本に上陸するまでにはある程度の時間が必要でした。その分、まだ日本で知られていないスゴいサービスをコピーして日本で先にスタートする、というタイムマシン的なサービスが通用していました。
ですが今後はそうした言語障壁も限りなくシームレスに。
例えば広報に関連してくるサービスなどでいうと、
『persado』や『Jasper』などは、人の心をグッとつかむ広告コピーやSNS投稿文章をAIが書いてくれるサービス。
「うちのサービスについて、NYに住む、バリキャリで子育て中の40代女性に響くように投稿内容を作って!」
というとAIが凄まじい勢いで、いくらでも作ってくれちゃうのだそう。
こんな破壊的なサービスが本格的に日本で活躍し始めたら(ちなみにJasperは日本語対応済み)とかんがえると怖いですね。
「クリエイティブ」という言葉の曖昧さ
思っているよりも既にAIへの置き代わりは進んでいる
よく「人間にしか創造性は無いから、クリエイティブな能力を伸ばそう」という議論があります。
広報の仕事も、文章を書いたり、SNS等の投稿なども担当することが多いので「クリエイティブ」な仕事に分類されることも多くあります。
ただ個人的にはこの「クリエイティブ」という言葉、あまりに広義すぎてポイントを絞らなければまったく道を見誤ってしまうと思っています。
最近知ったのですが、創造性の最たる例の「音楽」ですら、すでに長年AIが使われているのです。
今私たちが日常耳にする音楽はすでにその多くがAIによってベースが作曲されているのだとか。モーツァルトのように、自分でピアノを弾きながらすべてを作曲する人などもはやほぼゼロ。
人が「美しい」と感じる音色、流行の音色、というものは意外と科学できるらしく、それに当てはめてまずベーシックな音色をAIが作りそこから色々アレンジを加えて完成するのです。
その意味で、「クリエイティブ」
という言葉だけがひとり歩きすると、興味もないのに突如
「画像編集」「コピーライティング」「動画撮影」
などクリエイティブっぽい方向に進み始め、
ある程度やってみたところで、そこが超レッドオーシャンだと気付いたり、自分の才能の限界に気づいたりすることになりかねません。
もちろん、人間の可能性は無限大です。
だから何歳になっても、どんなに経験がなくても、新しいことに挑戦するのは素晴らしいことだし必要なことです。
しかし、そこには「その仕事が好きかどうか」がきちんと考えられているべきです。
好きこそものの上手なれ。
好きでもないのに、「クリエイティビティを磨かなくてはAIに取って代わられる…」
とやみくもに始めることは、無用な挫折を味わうことに繋がり兼ねません。
人の心を動かす執筆力
ここからは、今後のAI Dominated時代において、どんな力を広報としてつけるべきかについて、私なりに考えてみました。
まずは人の心を動かす執筆力です。
ChatGPTが出てきてからというもの、いろんな文章をためしに執筆させてみました。
結論今のところ、ChatGPTの執筆力は大したことないです。
司法試験に合格した、医師免許の国家試験に合格した、などと話題になっていますが、それもそのはず。
正解とされている情報を正確に打ち込めば良いのですから、まさにAIの得意領域です。
事実ベースにしながらカッチリとした論文などを書かせるにはもってこいのツールです。
一方ChatGPTの執筆力を今のところ大したことない、と評価する背景には、五感や喜怒哀楽を激しく揺さぶるような文章は書けない、ということがあります。
読み手の心境に思いを馳せ、洞察し、相手の心の奥底に響く文章を書けるようになるのは、まだまだかなり先の話でしょう。
AIにきちんとした情報を出させる依頼力(=Google検索力に近い)
次はAIへの依頼力。
2000年代初頭、Googleの注目度が一気に高まった頃、盛んに「検索力」が叫ばれました。
Googleにはどんな情報だってあるけれど、ちゃんと検索しなければほしい情報は得られない、と。
最近ではアルゴリズムがかなり進化し、以前に比べて高い検索力がなくてもそれなりに得たい情報は得られるようになってきました。
しかし、ITの世界の基本はやはり
Garbage in, Garbage out=ゴミを入れればゴミが出てくる
先日私は、顔の細かいシミども(!)が気になり
「光治療で高評価の病院を教えて」
とChatGPTに聞いてみました。
するとなぜか群馬県の小児科や、もう10年以上前に閉業した皮膚科などが提案されましたw
(そして今は、特定の医療機関を薦めることは禁じているようで、「申し訳ありませんが、私は物理的な場所や医療施設の評価についての情報は持ち合わせていません。」と出ます)
よく考えてみれば、いくらAIとはいえ、そんなざっくりした質問の仕方で、良い答えが出てくるはずがないんですよね。
AIの検索力も、まだまだ道半ばです。(すごいスピードで進化するでしょうが)
それをうまく使いこなして、AIがちゃんと賢い情報を提供できるように、質問をする側も、鍛えていかねばならなそうです。
人と人、点と点をつなげる力
そして3つめはつなげる力。
私の持論ですが、
広報担当で3日間誰とも新しい人と出会わなかったら黄色信号
1週間誰とも新しい人と出会わなかったら赤信号です。
メディアから「こんな情報ありますか?」と聞かれた時に
「社内のあの人に聞いてみよう」「うちには無いけど、あの会社の広報なら知ってるはず」
逆に、社内から何か情報が上がってきた時に
「この記者なら響きそう」「あのディレクターに話してみよう」
と、そのバリエーションが多い人ほど広報としてぐんぐん頭角を表す人です。
そしてこの力こそが、AIには決して代替できないものです。
これは広報だけでなく
「あぁ、この人とこの人、引き合わせたらすごい化学反応が起こりそうだな」
って感じることってあると思います。
人と人だけでなく、全然違う点の情報を聞いた時に
「あれ?これってこんな共通項ない?この観点で繋げたら面白いサービスになるんじゃない?」
みたいなことがポッと浮かんでくることなどもあるはず。
今のところ(というか多分これからも)、データとし存在しないものをAIが自分で考えてゼロ→イチで作り出すことはありません。
そういう意味で、広報力の根源である、人と人をつなげる力、情報と情報をつなげる力は今後もっと重要になっていくと考えています。
AIが多くの仕事を代替できる時代でも
「この人と働きたい」
と思われる 人たらし力
最後にあげたいのは「人たらし力」wです。
広報に関わる仕事の中でも、今後はリサーチ業や翻訳業などはどんどんAIにとって代わられていくと思います。
前述しましたが、実際ChatGPTの翻訳力は素晴らしい!
今までお願いしてきた翻訳会社さんのどこよりも早く、完成度高く仕上げてくれました。
リサーチにしても、日本語・英語・リリース・サービスサイトなど様々なソースで情報収集をして、厳選した情報を挙げてくれます
(たまにトンチンカンですが、何度か聞き方を変えたり情報を追加したりすることでだんだん精度が高くなっていきます)
その意味で、やはり従来広く「広報業務」とされてきた仕事の中には、嫌でもニーズが減っていく業務が少なからずあります。
そんな中で、「この人と働きたい」と思われるかどうか、は非常に重要です。
誰だって、仕事を一緒に進める仲間とは気持ちよく進めたいものです。
仕事を依頼する時
ぶっきらぼうだったり、発言がネガティブだったり、偉そうな態度だったり、依頼の仕方に細かく注文をつけたり、お礼ひとつ言えなかったりする人と
お礼を言い合え、ポジティブなコミュニケーションを心がけていて、期待に一生懸命応えようとしてくれる人
どちらに頼むかといえば、答えは明白です。
こんなテクノロジーが光のような速さで進化する時代に青臭い話だなぁと思われるかもしれません。
仕事の様々なシーンで今後、AIの方が優秀なアウトプットを出していくようになる時代。
機械に比べれば人間はミスもするし、時間もかかる、期待値を下回ることもある。
しかし、それでも
「この人と一緒に働きたい」
と感じてもらえる、というのは非常に重要だと思っています。
一方で、AIには今後ある程度の法整備が求められていくかも?
例えば薬剤などを例に取れば、ものすごい数の実験や臨床試験を経て、何年も、何十年もかかって世に出回ります。
しかしテクノロジー分野はどうかというと、人間の生活や社会経済、もっといえば人間の思考にまでメガトン級の影響を及ぼすというのに、開発段階で世の中に放り込まれるのが常です。
犯罪や、国家レベルの陰謀などにも使われる可能性があっても、とりあえず世の中に放出してみる。たくさん使ってみて、どんな影響があるかテストして、ヤバそうな問題が起こったら修正する…。
こんなことを製薬会社がやったら、世界は大混乱です。
ですが、広告業界でサブリミナルが禁止されているように、今後もう少しこの無法地帯は整備されていくのではないかと想像します。
人まかせにせず、開き直りもせず
自分なりにもがく
先日堀江貴文さんが「ホワイトカラーの9割が職を失う」と予言していました。正直私もそう思います。
ChatGPTを使えば使うほど凄すぎて、怖くて眠れないくらいでした。
だけど、そこに対して
「でもさすがにそんな大変なことになる前に、きっと政府がちゃんと規制してくれるでしょ」
なんて思うのは、私は違うと思っています。
逆に
「どうせ9割が失職するなら、努力したって無駄じゃん」
というのはもっと違うと思います。
そんなの「明日死ぬかもしれないんだから努力しなくていいじゃん」というのと同じです。
自分ひとりの力や頭じゃとうてい追いつかないかもしれないけれど、
なんとかしなければ!という当事者意識を持っていたいと思うのです。
AIと仲良く仕事をすることを目指したい
AI脅威論が止まらない現在。
確かに怖いですが、こんなに怖い思いをさせられるくらいなら、やっぱりそれだけじゃ悔しいです。
こんな大勢に恐怖を抱かせるくらいの凄さがあるのだから、もうこれは徹底的に使い倒させていただくしかない!
ということで、特にリサーチ、翻訳で毎日めちゃくちゃ活用させていただいています!
これからも、AIと仲良く仕事をしていきたいと思います。