イカゲームの思い出と教育的要素
イカゲームの思い出とその背景
Netflixの「イカゲーム」は、世界的なヒット作となり、その第2弾が公開されるという、期待と興奮の声が高まっている。そのニュースを聞くたびに、小さい頃から毎日のように友達とイカゲームをして過ごしてきた自分の思い出が湧き上がる。あの簡単なるも、様々な戦略性と会社性の要素を含むゲームが、このように世界の注目を集めるとは実に奇妙な気分だ。
ここでは、Netflixのイカゲームではなく、私が子供のころに友達と遊んでいた本物(?)のイカゲームについて話したい。
イカゲームの名前について
イカゲームは、1980年代末までは、常に男の子たちの人気ゲームであった。1990年代には、既にビデオゲームが普及し、自然と外で友達と土まみれで遊ぶ文化がなくなり、イカゲームもなくなった。
イカゲームは、当時、「オジンオ・ガセン」と言われた。「オジンオ」は韓国語で「イカ」を意味する。しかし、「ガセン」という言葉は韓国語にないため意味は不明で、子供のころは特に深く考えずに遊んでいた。
今、ネットで調べてみると、この言葉は日本語から由来した可能性が高いとされている。日本による韓国の植民地支配は1945年に終わったので、1970年、80年代はまだ日本の植民地時代が終わって30年ほどしか経っていない時期であった。そのため、日常生活に多くの日本語がまだ残っていた。子供の遊び文化に日本語が残っていても不思議ではない。
韓国人は、日本語の最初の文字に清音が出ると、濁点を付けて発音する傾向があり、音を伸ばす発音はない。例えば、小泉は「ゴイズミ」、東京は「ドキョ」、東芝は「ドシバ」と表記される。この傾向を踏まえて推測すると、「ガセン」は、「開戦(カイセン)」「界線(カイセン)」「凱旋(ガイセン)」などの日本語が背景にあるのではないかと言われている。個人的には、イカゲームのルールが「自分の陣営を離れ、敵の陣営を大胆に潜り抜け、自分の陣営に戻ってくる」というのを究極的な目標にしているので、「凱旋(戦いに勝ってもどる)」から由来したのではと推測する。
イカゲームと韓国経済の背景
韓国の経済は2000年代に入るまで、日本に比べおよそ10年から20年くらいの差があった。今は信じがたいことだが、1960年代末まで、韓国のGDPは北朝鮮より低かった。
そんな経済状況の下、私は1974年に生まれ、小学校を卒業した1986年まで、ビデオゲームもなく、外に出ては土まみれで友達と遊んでいた。一人で遊ぶ選択肢がほとんどなかった時代だったので、自然と友達と遊びながら社会性を育てる事が不可欠だった。
こういうと、私が相当の田舎で育ったかと思われるかもしれないが、私は「韓国の名古屋」とも言える大邱というソウル、釜山に次ぐ韓国第3の大都市で育ったシティボーイである(笑)。
イカゲームに対する再評価
子供のころ、何も考えずに楽しく友達と遊んでいたイカゲームは、現在の私からしてみると、たくさんの教育的要素を含んでいたと感じる。チームワークや戦略、人間関係の組織から、リーダーシップとコミュニケーションまで、実は充実したレッスンが混ざっていた。何故、この単純な遊びに子供の成長に役立つレッスンが含まれていたと考えるかを説明するために、まず簡単にイカゲームのルールを説明しよう。
イカゲームのルール
(出典:https://www.joongang.co.kr/article/25012959)
イカゲームは、平らな地面にイカの形をした遊び場を描き、攻撃チームと守備チームに分かれて競い合う遊びである。当然、地面に図形を描く道具なんてなかったので、やかんに水を汲んできて水で線を引くか、木の枝で線を引いて描いた。イカを模した遊び場は、円(頭部)と三角形および四角形(胴体)で構成される形状となっている。参加者の数が多いほど、遊び場を大きく描くことになる。
攻撃チームは図の上部に位置するイカの頭部(円、写真の①の部分)に入り、守備チームは胴体(三角形と四角形)に入る。攻撃と守備のいずれも、自分の陣営の線から外に出る際には片足立ちで立たなければならない。ただし、攻撃チームは三角形と四角形の間の狭い通路を通過すると両足で歩ける権利を得る(写真の②の部分)。この状態を「アムヘンオサ(暗行御史)」と呼び、遊び場の外で攻撃と守備が戦う際、両足で立てる「アムヘンオサ」が有利になるため、守備チームは攻撃チームが通路(三角形と四角形の間)を通過するのを防がなければならない。遊び場の外では、実質的に相撲のような格闘となり、地面に倒れると「アウト」となる。
攻撃チームは、イカの胴体の下にある入り口(写真の③の部分)から入り、攻撃陣地である円部分に到達すると勝利となる。一方で、守備チームは攻撃チーム全員をアウトさせることで攻守を交代させることができる。
イカゲームの教育的要素
戦略策定
イカゲームで最も重要な部分は、チーム員を適切な位置に配置する部分である。つまり、チーム員が持つ能力(速い、力が強い、など)を見極めて、適切な位置に配置することが勝敗を決定する。
攻撃側は、チーム員の何人を本陣に残して防衛をするか、何人を右側に、何人を左側に回して「アムヘンオサ」トライをするか、それとも全員が敵陣を真正面で突破するか、などを決める必要がある。
守備側は、「アムヘンオサ」の通路を防衛するのに集中するか、自分たちの陣営の入り口を徹底防衛するか、それとも攻撃的に敵陣の陣営(円)を占領するかを決め、チーム員を配置する必要がある。
リーダーシップとコミュニケーションを学ぶ
チーム員全員が同じ意見を出すことは難しい。そのため、自然と各チームにリーダー的存在が現れる。リーダーを中心に決めた戦略をチーム員全員が実行する。ここでリーダーシップとコミュニケーションの重要性を学ぶことができる。
運動能力の強化
イカゲームは非常に過激な遊びであり、女の子が参加することはめったにない。遊びの中ではあちらこちらで相撲のような格闘が起きる。片足立ちで敵陣まで進み、自分を倒そうとする敵に対抗しながら前進するには、相当のバランス感覚も求められる。
地面に倒れて血を流したり、買ったばかりの服が破れたりすることは日常茶飯事だった。当時の親たちは「子供は怪我をしながら育つ」と考えていた時代であり、ちょっとした怪我は特に問題視されなかった。
最後に
40年ほど前にイカゲームを楽しんでいたころは、この単純なゲームが私たちの成長にどんな影響を与えられるか考えたことはなかった。しかし、大人になって振り返ってみると、これは実に凄い遊びだったと感じる。
イカゲーム2の詳細内容は知らないが、本日紹介した内容がNetflixのイカゲームを楽しむうえで参考になれば幸いと思う。