昔から近くにあった、どうしようもないリスクを怖がり続けること
と言うわけで、日本など比べ物にならないほどに被害が大きかった国が次々と過去のものとしている。
なのに、日本はあと1か月続けるという。
しかも、なぜか今後も感染症法の中に「5類」として残すという。
あれこれと理由をつけて、特別扱いを継続するという。恐れ続けるという。
これだけ大騒ぎて、湯水のように金を使ったのだから、今更やめることはできないのだろうけど、そんなに体裁を保つことが重要かね・・・重要なんだろうね・・・
もしかして、恐れるのは「後遺症」と言われているlong COVIDがあることが恐れ続ける理由なのか?確かにlong COVIDはある。慢性疲労症候群様の症状と類似するケースが多いと言われている。
しかし、待って欲しい。筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の原因となるのはCOVID19だけではない。もともとME/CFSは発熱や咽頭痛・胃腸炎などの感染症状を契機に発症することが多い、と言われているのだ(もちろん、感染症状がないケースもある)。
今最も有力視されているME/CFSの病態仮説は、誤解を恐れずにものすごくざっくりと言うと以下のようになる。
感染後の免疫応答異常により、抗自律神経受容体抗体が出現する。
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抗体の作用により自律神経の機能不全が起こり、循環系の調節障害が起こる。その結果、組織低酸素や静脈還流障害が出現する。
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労作に対する適切な循環調整能の障害がおこる。体が怠く疲れやすくなる。
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その調整障害に対する代償反応として交感神経系の亢進も出現(自律神経的にはバランスを取ろうと頑張っている)。その結果、さらに自律神経機能は乱れる。
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その結果、起立不耐や体位性頻脈症候群などの自律神経系循環障害、脳血流障害によるbrain fogや認知機能低下などを引き起こす。
(この辺りに関しては、直近では医学書院から出ているBRAIN and NERVEの2023年3月号に掲載された「慢性疼痛と筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」が分かりやすかった)
一言で言うと、ME/CFSをギランバレー症候群や急性散在性脳脊髄炎や多発性硬化症などと同じ自己免疫性神経障害とし、その中でも特に自律神経が優位に障害されるパターンと考える、という説が有力だ。私もこの説が最もしっくりくると思う。おそらく感染だけでなく、何らかの侵襲性のストレスや代謝性疾患(甲状腺や副腎、および下垂体や視床下部など)がトリガーの場合もありそうだ。もちろん、ワクチン接種がトリガーになる場合があることも容易に想像がつく。
ちなみに、一般に言われている「自律神経失調症」は全く違うので、念のため。むしろ、この「自律神経失調症」という謎病名が、「自律神経機能不全」の辛さに対する世間の無理解につながっているのではないか、と私は感じている。
何年前か忘れたが自己免疫性自律神経節障害(AAG)という疾患概念が登場し、私も過去に2例ほど患者を担当したことがある。起立性低血圧が強くて頭を上げて立つことができないし、脈の変動が激しいし、消化器の動きが悪いし、本当に大変そうだった。この疾患は血清抗gAChR抗体が高いケースが多く、私の経験した2例のうち1例が陽性だった。2人とも難治性で、結局ステロイドパルス、大量免疫グロブリン静注、血漿交換を全て行い少し改善した感じだった。
真の自律神経機能不全に陥ると、日常生活を送ることができなくなってしまう。我々が恒常性を有して生きているのは自律神経が奇跡的なバランスを保っているからである。
そして自律神経に随意性はない。外的・内的な環境の変化に勝手に反応し、自分の希望通りには働いてくれない。
この点は免疫系も同様だろう。
まさに我々は自分の身体によって「生かされている」のだ。
話はそれたが、要するに、感染後を含めた亜急性発症の自律神経機能不全は以前からあり、多くの人は自然改善するが、不幸なことに症状が残存してしまう方もいる、ということだ。ただただ、世間が「仮病」とか「疾病利得」とか「さぼり」とかレッテルを貼って、患者の存在を直視して来なかっただけなのである。
結局、この3年の各種コロナ対策と同様、今まで知らなかっただけで実は以前から存在しているリスクを怖がり続けているだけなのだ。
我々はもともと健康や生命を脅かすリスクと常に隣合わせで生きているし、全てのリスクを排除して生活することなどまず不可能だし、そもそも我々が恒常性を維持して生きていること自体が奇跡的なことなのだ。
だから、もう焼石に水にすらならない無駄な抵抗はやめましょうよ、それよりも不幸にして罹患してしまった方の治療法を模索し、ケアを行う方が大事でしょうよ、とず~~~っと思い続けているのだが・・・コロナ前からず~~~~~っと!!
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