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日本学術会議 任命拒否問題

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2020年9月、菅義偉内閣総理大臣(当時)が、日本学術会議が推薦した会員候補のうち6名を任命しなかった問題を機に、関係する情報整理とJASTJ会員の意見表明のために立ち上げました。
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#会員からの意見

【日本学術会議 任命拒否問題】 人間の自由な精神こそすべての源泉だ

 2020年10月10日 JASTJ会長 室山哲也

 社会をにぎわせている日本学術会議問題を見ていると、悲しくなる。
 この問題の根底には、人間本来の好奇心や、創造活動に対する無知と、力によって物事を収束させようとする傲慢さがある。それとともに、為政者のレベルの低さ、日本という国の虚弱さすら感じてしまう。


 推薦された新会員の「任命なし」の理由を説明せずにいることは、関係者に対する脅しと同じ

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【日本学術会議 任命拒否問題】 アカデミーが正常に機能するには、政治にも責任がある

 日本学術会議が推薦した新規会員6人の任命を菅義偉総理が拒否した問題で、自民党内ではすでに日本学術会議のあり方の議論が始まっている。しかし、その議論がこのまま進むなら、日本の将来にとって決して先行きの明るいものとはならないだろう。

 日本学術会議は、かつては左派に偏向した学者が優遇される形で会員が多く決められていたこともあり、国は一貫して学術会議の権限を減らす方向で動いてきた。国と学術会議との冷

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【日本学術会議 任命拒否問題】 誰がために研究する

 日本学術会議に関して様々な意見がネット上を飛び交っています。新聞記事に書く場合、学術会議とは何かを説明してからでないと、本題に入れない。そんな知名度の低い存在でした。

 保守系とされる論者が問題にしているのは、2017年に発表された軍事的安全保障研究に関する声明ですが、声明が出されたときよりも関心が高いというのは、考えてみれば不思議です。

 ネットで起きているのは、エコーチェンバー効果と呼ば

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【日本学術会議 任命拒否問題】 「人事とカネ」の動きを変えるために出来ること

 私は1997年、企業内研究者の副業として著述業を始めた。2000年から著述業に専念し、2010年までは科学と技術を守備範囲として執筆を続けてきた。しかし2011年、東日本大震災を契機として、社会と社会的弱者の問題、特に最後の生活基盤である生活保護の問題に軸足を置くようになった。2014年からは「学術的基盤のもとで、より責任ある提言を」という希望を持ち、大学院博士課程で2000年以後の生活保護政策

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【日本学術会議 任命拒否問題】 人文・社会科学との対話こそ

 2020年10月18日 佐藤年緒(環境・科学ジャーナリスト、JASTJ理事)

 日本学術会議会員の任命拒否問題に対して山極寿一前会長が10月11日のオンラインシンポジウムで挨拶した、「国の最高権力者が意に添わない者は理由なく切る、問答無用である、と明言することは、その風潮が日本各地に広がることが懸念される。これは民主主義の大きな危機だ」とする見解に私は賛同する。政府に異論を唱える人文、社会系の

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