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西田さんの懐かしドラマ 「淋しいのはお前だけじゃない」

脚本・市川森一 

1960年くらいの頃からかな・・ テレビ界では
倉本聰、市川森一、山田太一、早坂暁、鎌田敏夫・・
といった 優れた脚本家さんたちが
競うように活躍していました。

1974年の人気ドラマ「傷だらけの天使」は
複数の脚本家さんが 交代で書かれていましたが
あ、今日の回はセンスいいな、と思って確認すると
市川森一さんだったことが よくあり

その時から 好きな脚本家さんとして
ジャスミン(←私よ)の 頭の中に
市川森一さんの名が インプットされました。

この「淋しいのはお前だけじゃない」は
1982年(昭和57)にTBSで 13回に渡って放映されました。

でも wikiによりますと
当時の視聴率はひとケタ台で 視聴率の低迷を知った
山田太一さんが激励の手紙を送ったとか。
市川さんはそのお返しに 
劇中で流れるテレビ画面のシーンに
太一さんの「思い出づくり」を使ったそうで。
いいですね、そういうのって・・。
ああ、「思い出づくり」も 今また見たいなあ。

しかし後年、
この「淋しいのは・・」の質の高さが再認識され 高評価を得て
結果、市川さんは この作品で
第一回向田邦子賞および テレビ大賞を受賞されました。

実は私は 当時も映画一辺倒で
あまりテレビとは 仲良くなかったのだけど
このドラマは夢中で見て
そして未だに 忘れられない作品となっています。

          〇

主人公は サラ金の取り立て屋・沼田 (西田敏行)

沼田の厳しい取り立てに
利息も払えず逃げ回っている 焦げつき連中5人がこちら 。
          ↓
① 家庭崩壊寸前・自動車セールスマンの河原崎長一郎

② 強度自律神経失調症・コンピューター業務の山本宣

③ 自殺失敗亭主の借金肩代わり
スーパー・レジ業務の萬田久子

④ 逆玉結婚チャンスなのに 元カノのストーカーに悩む
ホテルマンの潮哲也 

⑤ ヤル気、生きがいゼロ・国鉄職員の矢崎滋

あるとき、サラ金の親会社のボス・国分(財津一郎)から
沼田に指示が来る。

国分の愛人・常子(木の実ナナ)が
旅役者・市太郎(梅沢冨美男)と 駆け落ちしてしまったので
落とし前として 慰謝料2千万を言い渡し
証文にふたりの捺印を取って来いという。

共に旅役者の子として育った 幼馴染の市太郎と常子。

しかし沼田がふたりの潜伏先 四万温泉を探し当て
常子の身の上を訊くと 常子の亡くなった母親は
「花村月乃丞一座」という 芝居小屋の座長で
偶然にも 沼田は子供の頃、
忘れられない恩を 受けたお人でありました。

沼田は国分に嘘の報告をし ふたりを逃がすが
嘘はあっけなく見破られ
沼田は半殺しの目に合わされたうえ
2千万の連帯保証人にされてしまう。

沼田と市太郎と常子は 国分への借金返済のため
常子を座長にして「花村月乃丞一座」を旗揚げすることに。

しかし以前いっしょに
ドサ回りで苦労した仲間は 一人も集まらず

苦肉の策で 例の借金地獄に喘いでいる
河原崎・山本・矢崎・潮・萬田の5人を
一度だけと騙し 温泉旅館の舞台に立たせる。

すると、ここが面白いんだけど・・

はじめは
冗談じゃない、やれるもんか!と 怒っていた5人は
白塗りに 綺麗なおべべを着せられ
舞台で拍手を浴びると
もう誰ひとり、この世界から抜け出せなくなる。

実際、現実に帰っても
借金まみれに壊れかかった家庭、遣り甲斐のない仕事、
うつ病、結婚話のもつれ・・
夢も希望もなく ただ流され、生きていくだけなのだ。

かくして、場所は下北・すずなり横丁に
急ごしらえの素人劇団が旗揚げ!

この時点で座員10名 借金総額2683万5411円。
利息だけでも凄い。
ひと月→138万円
一日→4万6千円 それを10日括りで46万づつ
国分の手下(尾藤イサオ)が 死神みたいに取り立てに来る。

頼りになるのは 木戸銭とおひねり。
食べる物もきり詰め 役者のほかに真夜中までバイト。

全員が団結して 死に物狂いで 借金返済に立ち向かううちに
沼田は 自分の中のヒューマニズムに目覚め
他5人のそれぞれも 自分の人生に
すこしづつ 夢と希望を見出していく。

この作品が テレビ初登場となった
大衆演劇のトップスター 梅沢冨美男さん。
このお顔が・・

お綺麗!   

   

ゲストも含めて 芸達者な俳優さんばかりですが
ドタバタなところは まったく無く
むしろ やるせなくて悲しい・・特に最終話は泣けました。

西田敏行さんは 他の作品では
人柄の良い役が多かったと思いますが
本作の取り立て屋の沼田役は セコくて狡猾で情けない男。

それが だんだんと変わっていき
最後には人間性を取り戻す。
改めて凄い俳優さんだなと思いました。

それから 亭主の沼田に何かといえば どつかれ 怒鳴られ
それでも何も言い返せない
場末のキャバレーのホステスあがりの女房・泉ピン子さんが
とても良かった。

そして 最終話。
遂に沼田は決意する。
「国分をぶっ殺す!」
「国分を殺るって、何で殺るのさ、ドスかい、ハジキかい」
「ドスもハジキもいらねぇ、芝居で殺すのよ」

で、ほんとに正真正銘、お芝居で国分をヤッちまう。
このアイデアも素晴らしいの。

ラストのラスト。
借金のカタをつけ 一座は解散。
皆で飲んで、それぞれが ばらばらになる時が来るけど
「もう一軒、あと一軒、行こうよ」
矢崎滋が悲痛な声で誘う。
「僕は、僕は・・借金が懐かしい!」

こんないいドラマです。
DVDも発売されてますが とってもお高い! 
民放さん、お笑いばかりやってないで再放送してよ。

西田敏行さんの ご冥福をお祈りします。











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