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死ぬか生きるか どたばたジェットコースター・ストーリー !『象を喰った連中』

吉村公三郎監督 1947年 (松竹)

松竹鎌田撮影所に入所以後
島津保次郎監督をはじめ
五所平之助、豊田四郎、成瀬巳喜男の助監督をつとめ

『暖流』キネマ旬報7位
『安城家の舞踏会』キネマ旬報1位
『偽れる盛装』毎日映画コンクール監督賞などに輝いた
吉村公三郎監督の
ちょいと 世相を皮肉った喜劇映画。

この映画は
映画史上に名を残す作品でもなけりゃ、
ベストテン映画でもないけれど

こんなにキュートで チャーミングな映画
埋もれさせたままじゃ、勿体ない。

例のごとく
ネタばれ全開で行くわよ!

          〇

時は終戦直後。
東京の動物園で 日本でただ1頭の象が死んだ。
名前はシロウちゃん。

シロウちゃんの治療に当たっていた
原保美・安部徹・神田隆・日守新一の
4人の細菌研究所の所員は

好奇心と研究心で (?)
シロウちゃんを 食べてみることにした。

ジュージュー焼いた
厚切りステーキのシロウちゃんを
みんなで ウマイ、ウマイと食べていると
そこへやって来たのが 飼育係の笠智衆さん。

笠さんは シロウちゃんがまだ小象の頃
シャムの山奥から 買い付けて来たこともあって
深い深い愛情を 注いでいたが

まさか、それがシロウちゃんの肉とは知らず
喜んでご馳走になってしまう。

食べ終わってから シロウちゃんの肉と知り
呆然となって 家に帰る笠さん。

するとこれを聞いた 笠さんの妻は
何年か前 シャムで象の肉を食べた原住民の夫婦が
30時間後に ぽっくり死んでしまったことを思い出し
大騒ぎとなる。

研究所員が 象の死因や過去の資料、文献を
調べ直した結果、シロウちゃんは
恐るべきバビゾ菌によって 死んだことが判明。

過去に 確かに
人が30時間後に死亡した 事実も確認された。

真っ青になる5人!

至急 あちこちの研究所に 血清を要請するが
特殊な血清のため どこにも無い!

すっかり観念した5人が
年老いた親や 妻や子供たちと
不運を嘆き 別れを惜しんでいると

突然、盛岡の研究所から 血清が届くことになった。

大喜びの5人!
早速、注射器持参で 
上野駅の待合室で 血清の到着を待ってると
これがまた、
途中の事故による大混雑で 列車は大遅れ。

その間にも 時は刻々と過ぎていくが
やがて やっとやっと血清が到着。

しかし またも不運なことが!

列車の殺人的な混雑により
5本の血清のうちの 1本が破損していたのだ。

誰かひとり、死ななくてはならなくなった!
死ぬか生きるか、
喜びと失望の ジェットコースター・ストーリー!

僕は死にたくない、僕も嫌だ、
僕だって小さい子供がいるんだ、

結局、ここは公正に
くじ引きで決めようと いうことになるが

その結果 先の折れたマッチ棒を引いた
日守新一さんが死ぬ運命に・・・

実は 今は両親もなく 独身の彼は
こっそり自分で マッチの先を折ったのだった。

そしてとうとう 運命の時刻がやって来た。
「みなさん、さようなら」

しかし、あれ?
時間が過ぎても ぴんぴんしてる。

そこに
旅先で騒ぎを聞いた 研究所の博士から電話が来た。

「バビゾ菌は摂氏70度で死滅する。
 煮たり焼いたりすれば 安全なのだ。
 そんなことでガタガタ騒いでおるとは
 君たちは それでも科学者か!!」

          〇

上映時間85分。

チクタク、チクタク・・・
登場人物の運命を刻む 時計の針と共に
お話は途切れなく進み オチもすっきり納得!

能天気な研究所々員たちの 騒動記でした。

おしまい

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