『脱力スキル』に書かなかったこと
12月6日に私の著書『最強の身体能力/プロが実践する脱力スキルの鍛え方』が発売しました。
脱力の技術、つまり”力み”に悩むすべての人に届いてほしいと願っています。
この脱力スキル本は、どちらかというとスポーツ選手向けなので、身体の専門家の方には少しものたりないかもしれません。
特に「脱力に関する生理学的/解剖学的な部分」に関する詳細は泣く泣く削ったので、、。
なので今回は『その部分』で書かなかったことを少しだけ触れておきたいと思います。
目次で言うと『第1章/力みの弊害』の部分。感覚センサーの話です。
太字になっている部分に関して。
本書ではこのようにかなり簡易的に書いているのですが、この部分にはとても大切な身体のシステムが関与しています。
その部分を少し記載したいと思います。
力むと重心が分からなくなる
『重心位置』という言葉はスポーツに関わる人でしたら皆さん聞いたことや使ったことがあると思います。
この重心位置はとても重要でその理由はいくらでもあるのですが、ここでの文脈上重要なものは大きく分けて2つ。
重心位置が重要な理由1
体重がかかる位置を決定づけるからです。
実際には重心位置ではなく、そこから地球の中心に向かって垂直に描かれる『重心線』が決定づけます。
重心位置が前方に移動すれば、重心線も前方に移動し、体重がかかる位置も前方に移動します。これはスポーツにおいてパワーの源となる重要な『重心移動』というやつです。
ということは、重心位置/重心線がちゃんと感知できていなければ上手くコントロールできないのは明白です。
重心位置が重要な理由2
重心位置の変化によって働く筋肉が変化するからです。
重力下で私たちが姿勢を保持するために縦方向に支えるための骨格構造と、それを倒れないようにアシストする筋肉たちがその役割を担います。
例えば単純に立っていることを保持しようとする場合、重心が前に移動した時にはそのまま前に倒れないように背中側の筋群を働かせて支持基底面内に重心線を止めようという反応が起こります。この反応が働く筋肉の変化を起こします。
この時も理由1と同じく、重心位置/重心線が感知できていることが重要であることは共通しています。
私たちはどうやって重心線を感知しているか
まず前提として、重心線は感知するしないに関わらず、機械的に決定します。
裏を返すと、重心性が存在するからって、正確に感知できているとは限らないということ。
ハイパフォーマンスを実現するために重心移動が深く影響する以上、感知のレベルがそのままパフォーマンスの差につながっていると言っても過言ではない、と私は思っています。
そして脱力本の文脈でこのことを書いているということは脱力と重心感知はものすごく深い関係にある、ということももう予測がついていると思います。
ではその脱力と感知の関係の部分について。
我々の身体はどのようにして重心線の位置や移動を感じとっているかというと、
筋肉内にあって筋肉の伸び縮みを検知する張力センサー(筋紡錘)と、骨格に圧が加わった時にそれを検知する圧センサーが働いています。
これらのセンサーが、重心が移動することによって身体に加わる感覚情報を検知し、そこに小脳・大脳基底核が連携して重心線を割り出します。
だから力みが入りやすい人は特にこの張力センサーが重心感知のために上手く働いてくれなくなります。
なぜなら、重心位置の変化によって生じる筋の張力の変化を検知する際に、力みから生じる張力情報が邪魔するからです。
こういう理由から、すぐに力んでしまう/思うように力みが抜けない、つまり脱力スキルが低いことは、重心感知の低下を招き、重心が繊細に感知できないことはパフォーマンスの低下を招くのです。
裏を返すと、脱力スキル本で書いてあるような基本的な脱力ができるようになれば張力センサーの感度は今よりも改善すると言えます。
特に骨に近い、身体の深部にある細かく小さい筋群(脊柱であれば長短の回旋筋や多裂筋、半棘筋など)をいかに脱力できるか(固まってしまわないか)は非常に重要度が高くなりますので、大きな筋肉の脱力が身に付いたら次はどんどん深くて小さい筋群をターゲットにしていってください。
方法は、実際問題として文面だけでは難しいです。
とりあえずは、、脱力トレーニングの際に『骨を意識することと・出来るだけ小さい幅でゆっくり揺らすこと』、あたりがやりやすいと思います。
これ以上を欲しがるガチ勢は直接トレーニング指導へ。
全てはパフォーマンスアップのために。