米Googleのハイブリット勤務と心理的安全性
米Googleは、感染者が減少したため、4月からオフィス勤務を再開することを決定しました。
4月4日からフルリモート勤務を廃止し、平日5日のうち3日はオフィスで、残り2日は好きな場所で勤務できるようにするとのことです。
Google幹部は従業員に対して、「オフィスでの共同作業も重要なので、ハイブリッド勤務にする」と説明しています。
このGoogleが実証実験で位置づけた働く上で、最も大切な概念があるのでここで紹介したいと思います。
それは「心理的安全性」です。
心理的安全性とは
心理的安全性(psychological safety)とは、組織行動学を研究しているハーバード大学ビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授が提唱した心理学用語です。
心理的安全性が注目を集めるようになったのは、Googleが4年をかけて実施した社内調査の結果、「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」を発表したことがきっかけです。
そしてその実証結果、心理的安全性の高いチームは4つの効果が出ました。
①チームの離職率が低い
②メンバーが提案した多様なアイデアの活用・ブラッシュアップがうまい
③リーダーから評価される機会が約2倍ある
④チームの収益性も高い
この4つの結果から、心理的安全性の高いチームこそ、労働生産性の向上に直接貢献できるチームとも言え、業績向上を目指す近道です。
さらに、エドモンドソン教授は、心理的安全性を損なう要因を以下のように発表しています。
心理的安全性を損なう要因
①「無知だと思われる不安」
②「無能だと思われる不安」
③「邪魔をしていると思われる不安」
④「ネガティブだと思われる不安」
これを端的に言えば、「チームの為に行動しても、罰を受ける」という不安やリスクのある職場だと言えます。
うっ、、と心当たりがある方は、ここから解決策を紹介したいと思います。
慶應義塾大学の研究チームの発表では、日本において、心理的安全性を高く感じられるのには4つの因子があると発表されています。
日本の職場で心理的安全性が高く感じられる4つの因子
①話しやすさ「何を言っても大丈夫」
②助け合い「困った時はお互い様」
③挑戦「とりあえずやってみよう」
④新奇歓迎「異能・どんとこい」
文字通りではありますが、端的に言えば「健全に意見を戦わせ、生産性のある仕事をする」ことに力を注げる職場チームです。
心理的安全性を構築するのは、何と言ってもリーダーであることは間違いないでしょう。
そこで、この4つの因子について、リーダーにぜひおこなっていただきたいことがあります。
リーダーに見つめ直してほしいこと
①4つの因子それぞれについて、リーダーご自身が新人の頃を思い出しながら「自分の言動がメンバーの心理的安全性を下げてしまっていないか」を見つめていただく。
②「この指示には意味があるか」ということも考える。
③「きっかけ」と「みかえり」はセットで考える。
③については、具体的に言うと多くのリーダーは「○○してみたら?」「○○してみてね」など、「きっかけを与える」ことはよくやります。
メンバーは、このきっかけに基づいて何かしら行動します。
しかし、この行動に対する「みかえり」、つまりフォローアップをするリーダーはほとんどいないといっても過言ではありません。
また「なんでも言ってね」と「きっかけ」を提示しながら、いざ部下が何かを言ってみた時「それは違うんじゃない?」とネガティブな「みかえり」を与えてしまう、というケースもあります。
メンバーからすれば「このリーダーの『なんでも言ってね』は、『なんでも』ではないんだな」と学習します。
これ親子関係でもよくあります・・・と言いますのも私の経験ですが、子供たちに「学校であった悪いことも言ってね」って言っておきながら、いざ子供から報告を受けると、「なんでそんなことしたの!!」と叱ってしまいます。
うーん・・・家庭での心理的安全性は取れないことが多いな、と記事を書きながら反省しています。
話は戻りますが、「心理的安全性」というのは”チームの文化”なので、逆の立場でも同じです。メンバーからの反応が悪ければ、やっぱりリーダーの士気は下がります。メンバーから指摘ばかりされていても辛いものでしょう。
もちろんリーダー自身に問題があるということもあるかもしれませんが、意識として、メンバー一人ひとりが心理的安全性を取り入れることも重要ではないでしょうか。
明日から出来る案としては、会議で最初に「心理的安全性宣言」をすることです。
会議の際、リーダーが「この場を心理的安全に保ちます。意見が出たらまずはこの行動を認めよう。そしてその意見を一度テーブルの上に乗せて、前向きにディスカッションしていこう。」と宣言してみるのも効果的です。
結局のところ、「心理的安全性」とは「その組織やチームで存在意義を感じられるかどうか」だと思います。
そういう意味でも米Googleは、完全リモートワークより、ある程度顔合わせができるハイブリット勤務の方が、メンバー同士の「心理的安全性」を高めやすいということが立証できたのではないのかな、と思っています。