大阪高裁、介護福祉士養成講座を担当していた私立大学講師を大学教員任期法でいう「教員等」に当たらないとして、控訴を認容して、雇止めを無効と判断
大学教員任期法の定め
有期雇用の大学教員は多くいますが、この方たちの無期転換ルールについて労働契約法の5年とは異なるものが、大学教員任期法(大学の教員等の任期に関する法律)に定められています。
下記のとおり、7条から無期転換の継続雇用契約期間は5年ではなく10年になるのですが、それは4条1項各号に該当するようなポストにつける場合とされています。
本件の概要
大阪にある羽衣国際大学で、介護福祉士の養成講座を担当していた講師がこの法律によって無期転換は10年であるとして、6年の継続雇用契約を締結した時点での無期転換を認められず、最終的にその後雇止めになったたため、無期転換を前提として雇用契約上の地位確認を求めた事件で、原判決の大阪地裁は上記大学教員任期法を適用して請求を棄却していた(大阪地判令和4年1月31日)のですが、大阪高裁は控訴を認容して、雇止めを無効と判断しました(大阪高判令和5年1月18日)。
原判決でも、原告は、要は、自分は大学教員等任期法の対象になるような研究者ではないと主張していたのですが、大阪地裁は、この改正法の審議過程における「(大学の)講師」は「基本的に「研究者」に該当する」との答弁などを指摘して退けていました。
コメント
研究の側面の乏しい教育だけを担当する講師であるならば10年ではなく5年で無期転換となると、担当している内容によって無期転換までの継続雇用契約の期間が変わってくることになります。
任期法4条1項各号である程度の水準以上であることを求めているのは事実なので、講師であればなんでもよいというわけではないだろうとは思います。
しかし、一方で、4条1項1号の「先端的、学際的⼜は総合的な教育研究であることその他の当該教育研究組織で⾏われる教育研究の分野又は方法の特性にかんがみ、多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。」というのは、大学であれば教えるのは誰でもいいわけではないので、大学で講義を持つような教員であればほぼ該当するものともいえるようにも思えます。大阪地裁はこちらの考えに立ったものといえます。
取り急ぎ、現在の大学における非常勤講師の雇用の実情からいくと、影響を与えうる判決といえるとは思われます。