私が考える”会員拡大の要諦”とは?
今回は、団体の会員拡大の在り方について記載しておきたいと思います。
反省すべき点は多々ありますが、某団体において拡大数全国1位を獲得した経験を基に、現在感じていることを思うままに書き連ねたいと思います。
団体の状況によって最適解は違いますし、どこまでいっても私見でしかありませんので、こんな考え方もあるなと思ってヒントにしてもらえたら幸いです。
会員拡大の現状
団体における会員は、団体の活動や運動を継続する上では、資金面でも人材面でも必要不可欠な存在であります。
しかし、どの団体においても人材の新規入会に苦慮しているという現状があります。
年齢制限を設けている団体も多いかと思いますが、誰一人新規入会することなく年々卒業していくメンバーだけが累積していけば、最年少メンバーの卒業をもってその団体は消滅します。
だからこそ、会員の新規入会については最も優先度の高い事項として常に目標を掲げ続けなければなりません。
会員を一挙に増やす弊害
とは言え、単年度で一挙に会員を拡大することは決してよいやり方ではないと考えています。
なぜならば多くの場合、新規入会だけをゴールに見据えて、その後のフォローまで考えていない場合が多いからです。
単年度で一挙に会員が増えても、増えた人員をフォローができる体制が整っていないために、せっかくの新規入会者が退会してしまうことが多いのです。
入会させることばかりに気を取られて、退会者を出さないための努力を忘れてはいけません。
樽の中の酒の量を保とうとするには、栓よりも底漏れの方を大事と見なければならないのです。
だからこそ、単年度で一挙に増やすのではなく中長期的な会員数目標を掲げて、毎年の目標値に落とし込みながらそれを達成し続けていく必要があるのです。
理想の会員拡大の体制とは?
私が考える理想の会員拡大の在り方は、以下の2点に集中することです。
退会者を出さない組織づくりのために
スパン・オブ・コントロールという言葉があります。
スパン・オブ・コントロールとは、直訳で「コントロール(できる)範囲」という意味であり、管理限界や統制範囲とも訳されます。
様々な研究から、一般に一人の管理職が管理する適正人数は、概ね5~8人、最大でも10人程度だと言われています。
団体の人数が多くなってくると、どうしても遠心力が働くようになります。
その理由としては、団体トップの求心力ですべてを束ねることには限界があること、個が強くなったことで団体に所属することにアイデンティティを見出しづらくなったことなどが考えられます。
また、求心力が強すぎると組織の柔軟性を乏しくさせるという負の側面も持っています。
それでは、どうすればよいのか?
スパン・オブ・コントロールの無理のない範囲内で、”この5人だけは、信頼関係を切り結んでいる”というリーダーを数多く創り出すことにあると思っています。
この信頼関係を切り結んだ仲間がいないと、組織への帰属意識は時を経るごとに弱まっていきます。
だからこそ、会員拡大と同じレベルの最重要事項として”会員育成”が必要になってくるのです。
毎年の目標を確実に達成していくために
毎年の目標を確実に達成していくためには、拡大戦略を立てることが必須だろうと思います。
拡大戦略には、必ずマーケティング思考を取り入れるべきです。
経営学者のピーター・ドラッカーは、「マーケティングの理想は、販売(営業)を不要にするものである」と言っています。
顧客に「買ってください」と売り込まなくても、商品が「売れる仕組み」をつくることがマーケティングであるということです。
つまり、拡大対象者に「入会しませんか」と声がけしなくても、入会の問い合わせがくる仕組みをつくるということです。
拡大対象者の本能的欲求を、団体が持つ価値で衝くことができれば、この仕組みが実現できます。
拡大戦略の立案について
団体のマーケティング戦略を考えるにあたっては、以下について考える必要があります。
❶誰を対象にしているか:
たとえば、30代を拡大の対象にしているのであれば、具体的な属性を明らかにしておく必要があります。
女性なのか、男性なのか、日本人なのか、外国人なのか、サラリーマンなのか、起業家なのか、事業承継者なのか、親や上司なのかなど属性は多岐にわたります。
対象を広げれば広げるほど、戦術の効果は薄まりますので、対象は絞ったほうがよいと私は考えています。
また、対象者の顕在的欲求は、「販路の拡大」「仲間づくり」「社会貢献」「自己成長」「次世代への期待」などがあげられると思います。
これらの顕在的欲求に対しては、それらに対して団体が提供できる価値を提示すればよいわけです。
ところが、この顕在的欲求だけを捉えていては、対象者の強烈な入会意欲を生み出すことはできません。
そこで、目を向けなければならないのは、拡大対象者の”インサイト”です。
インサイトとは、顧客の行動や思惑の背景にある”本能的欲求”のことを指します。
❷対象者のインサイトはどのようなものか?
それでは拡大対象者のインサイトを考えてみましょう。
ここでの拡大対象者は、サラリーマンとしての修行を終えて地元に戻り、父親が経営している会社を継ぐ日本人男性の2代目、3代目の事業承継者と設定してみたいと思います。
インサイトを考える手順としては、「要因⇒場面⇒お気に入り⇒お気に入りの理由⇒不満や未充足」という流れで考えていくとよいと思います。
❸対象者のインサイトを衝く団体の価値は何か
拡大対象者のインサイト(本能的欲求)を衝くことができる団体の価値はどこにあるのでしょうか?
それは、「同じような境遇や、より過酷な状況であっても、団体の中で自分を磨いて信頼されるに足る人物に成長できる」という事実ではないでしょうか?
この価値を明確に定義するということが何よりも大切なのです。
❹価値をどのように対象者に伝えるか
ここで定義した価値をどのように対象者に伝えるかというのは、マーケティングコミュニケーションの話です。
価値が明確に定義できているからには、このコミュニケーション戦術をどれだけ数多く生み出し、仕掛けられるかで、成果が大きく変わってきます。
プッシュ、プルと提供価値の観点から整理したマトリックスを載せておきますので、”できることをすべて徹底的にやりきって”ください。
拡大の戦術の実践について
いままで述べて来ました拡大戦略については、一朝一夕で実現するものではなく、数年かけて着実にブランドを作りあげていくべきものです。
だからこそ、短期的には”プッシュ型ローバリュー戦術”である、アポを取って価値を伝えるという地道な活動をし続ける必要があります。
拡大の戦術を実践するにあたって最も大切なことは、責任感を持って中心となって拡大を行う拡大担当者やメンバーを決めることです。
そして、中長期目標の人数に到達するためには、今年度は何名の純増(正入会者数-卒業生数)を確保しなければならないかを決めてください。
次に、早い段階で本次年度の引継ぎ(拡大候補者リストの共有)を実施して、初速を早くすることです。
次年度の動きが始まる頃には、次年度の引継ぎを兼ねて最後の一押し頑張るか、早々にバトンタッチをしてしまうイメージです。
そう考えていくと、実際のところ、次年度の開始と同時に拡大を始めても遅いというのが実感です。
年始第一回目の理事会等にて正入会する人数を最も強く意識すべきと思います。
スタートダッシュの第一回目理事会で正入会員をどれだけ入れられるかで、メンバーに意気込みを示すことができると思うからです。
拡大担当者の心構えは、毎月の理事会にて1人でもいいから必ず仮入会申込書の受領を意識することです。
そして、仮入会申込書をもらった次には、仮入会から正入会に移行してもらうという壁が出現します。
その壁を突破するためには、愛情と責任を持ってフォローすることが必要であり、それが一番できるのは、苦労して仮入会申込書をもらってきた拡大担当者でしかあり得ません。
最期に”徹底的にやりきる”べき項目を整理しておきます。