飲食店のマーケティング戦略について考えてみる
近江商人の格言に「店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何」というものがあります。この格言は飲食店の経営にも当てはまると言えます。店の大きさや華やかさよりも、自分たちがお店を出そうとしている場所の良さを重視すべきであるということです。良否の基準は、ターゲットとなる顧客層が十分に存在しているのか、認知されやすくアクセスしやすい場所に立地しているかです。しかし、店が大きく場所も良かったとしても、味やサービスがダメなら長くお客様から支持されることはありません。新規顧客を獲得できても、リピート顧客につながらず、いずれ限界を迎えるでしょう。一方で、味やサービスが抜群であれば、いくら店が小さく場所が悪くても、リピート客の支持や口コミによって持続的な経営ができる可能性があります。この大前提は必ず押さえておく必要があります。
ここで、売上の作り方について考えていきます。飲食店の売上を左右する方程式は、シンプルに考えれば「売上 = 客数 × 客単価」です。売上を大きくするためには、客数を上げるか、客単価を上げるかの二択しかありません。それでは、どうすれば客数がアップできるか、客単価がアップできるかについて考えてみたいと思います。
客数について
客数は、新規顧客とリピート顧客に分けることができます。誰もがはじめは新規顧客であることを考えれば、開業時にお店のことを認知してもらい、新規顧客に来店してもらうことはとても重要です。ここでは、新規顧客とリピート顧客について考えてみます。
新規顧客について
新規顧客は、「検索顧客」と「発見顧客」に分けることができます。
1. 検索顧客
「接待先を探している」「デートで失敗しない店を検索している」──こうした明確な目的を持った顧客層は、Google検索やGoogleマップ、食べログなどの飲食メディアを頼りに行動します。攻略のカギとしては、SEOに配慮したホームページ、ブログやSNSの定期更新で、「ジャンル」「場所」「用途」などでヒットする情報を配置することです。また、Google評価の向上で信頼性を高めたり、飲食メディアへの口コミを集めたり、写真を充実させたりすることで「行ってみたい!」と思わせることができます。
2. 発見顧客
一方で、たまたま偶然に見つける、雑誌やテレビ、SNS上で「面白そう!」と直感的に惹かれる発見顧客も見逃せません。攻略のカギは、独自性のあるメニューやコンセプト、内装などで、インフルエンサーやメディアが「紹介したくなる」要素を用意することです。話題性を広げ、「いつの間にか有名なお店」にステップアップすることを目指します。
リピート顧客について
実は、飲食店が最も意識すべきはリピート顧客です。新規顧客が1回きりの来店で終わってしまえば、いつかお店に来る人はいなくなってしまいます。一方で、何度も継続的に来店してくれるリピート顧客が増えれば、経営の安定が図れます。だからこそ、お店の未来を築くのは、継続的に来店していただけるリピート顧客なのです。新規顧客に「もう一度行きたい」と思わせた瞬間から、ビジネスは加速し始めます。肝心なのは、初回で満足させることはもちろん、その場で次回への導線を引くことです。例えばエステサロンでは「帰る前に次回予約が取れなかったら、もう来ないと思え」と言われるほど次回誘導が重要視されています。飲食店でも同様に、クーポンや期間限定メニューの予告などを活用して、次回来店のきっかけを作る努力が必要です。
客単価アップについて
最後に、客単価アップについて触れたいと思います。この客単価アップは、ほんの一言で実現できるケースも多いのです。例えば、美容院の場合、カット料金は1時間5,000~6,000円ほどです。カットだけを延々と繰り返していても、売上は稼働時間の上限に達してしまいます。しかし、売上を上げている美容院では、5,000円~10,000円のシャンプーをきちんと販売しています。その秘訣は「今回のシャンプーはいかがでしたか? シャンプーだけの販売もしているのでおひとついかがですか?」という一声をかけているだけです。この「ひと言」の提案が、飲食店でサイドメニューをすすめたり、お得なドリンクセットを紹介する際にも有効です。
まとめ
「近江商人の格言を胸に刻む」「新規顧客への情報発信を強化する」「帰りがけの次回誘導を始める」「スタッフに追加メニュー提案の声がけ教育をする」これらの小さな一歩が、驚くほど大きな変化を生むかもしれません。