中国人妻の地元を訪ねて⑥〜お墓参りとママの過去〜
中国江蘇省出身の妻の地元への2週間帰省旅行滞在記シリーズ、今夜で最終回となります。連日連夜連昼ぶっ通して続く宴会を経て、ママ、妻、パパ、大姨娘、大姐(大姨娘の娘)、大哥(大姨娘の息子)、ダーイーフーらと一緒に、ママの両親のお墓を訪れます。お墓に行く前に準備している道具を見ると、金色の五重塔のような紙製のオブジェ、おもちゃの紙幣みたいなもの。お供え物として使うのでしょうか?
バスや電動三輪車を乗り継ぎ向かう先はまたしても広大な田園風景。中国のお墓は郊外に作るのが一般的なようで、あの世で綺麗な景色を見てほしいという理由らしいです。
中国式墓参りの作法
中国でのお墓参りへの参加は初めての私。妻からは、とりあえずママが仕切るから見ておいてと言われました。
まずは、現場にあるドラム缶で焚き火を始めます。お線香用かな?と思ったら、ママが何か雄叫びをあげながら事前に準備していた金箔の城を炎の中に投下!続いて、他の家族たちも、おもちゃ紙幣?と思わしきものをオンザファイヤー!実は、この紙幣は「冥銭」と呼ばれるもので、あの世でいい暮らしをしてほしいという願いからお墓で燃やすために作られたもの。
その後、ママが墓前で正座をしながら、確か・・2回の礼と1回の合掌だったと思いますが、同様の形式で家族全員で繰り返していきます。
ママが大号泣、そして絶叫 初めて見る姿
燃えたぎる金のお城と冥銭を横目に、ママがお墓に対して強い言葉で語りかけます。方言で聞き取れない部分が多かったのですが、あとで妻に聞いたら「もう何年振りかしら。待たせてごめんね。娘も結婚して今日は日本から夫を連れてきてくれたんだよ」と伝えていたそうです。
普段クールなママが号泣。しかも非常に強い語気で感情おもむくままに心の叫びをぶつけている感じです。炎の熱で空気がゆらいでいる事もあって、涙しながら熱く語りかけるママの姿が幻想的で、次々ともらい泣きが連鎖していきます。
こんなに取り乱したママを見るのは初めてだったので、語りかけが終わった後に背中をさすって「ママ、大丈夫?」と聞くと「両親は私たちが若い頃に亡くなってしまった。四人姉妹を育てて重い病気にもかかって・・本当に苦労したので可哀想。もっと生きている間にできることをしてあげたかった」
これを聞いて、私はママの両親の苦労はもちろん、これまでに聞いたママの半生に思いを巡らせていました。若くして両親を亡くして農村から出稼ぎのために老姨娘と一緒に上海へ。その後パパと結婚して日本に来て家族の幸せを願って今でも必死に働いています。一番下の娘も社会人になった今、ママの今後の人生の幸せも願ってやみません。
私自身、高校生の反抗期ど真ん中で喧嘩別れのような状態で亡くなってしまった祖父には、もし何か超常的な力が使えるならあの世に行って直接謝りたいという気持ちが今でもあります。生きている間にもっと・・そんな気持ちは誰もが持つ人生の後悔のうちの一つなのかもしれません。
澄み渡るあお空、綺麗な田園風景、燃え盛る火炎、墓前での激しい語りかけ・・・不謹慎ですが、職業柄この状況で私が考えていたのは「中国式墓参りってすごいエンタメだなぁ〜」ということ。お墓に向かうまでの時間から、それぞれが演出要素になっていて、エモーショナルに一つのストーリーでつながる。
日本でのお墓参りは厳かにしっとり行うイメージですが、中国は真逆ですべての儀式がド派手。このあたりも文化の違いとして興味深いところです。
そして別れの日、荷物の支度をしていると白酒魔王のダーイーフーと二姨娘の息子に呼ばれます。老姨娘が日本で使っているスマホのSiriを使って遊んでいるようで「これすげーんだぜ!要求した音を出してくれるんだってさ!」
息子「放屁!(おなら)」 → 「ブー」 → 一同爆笑
私「放很大很大的屁!(めちゃでっかいおなら)! → 「ブーッ!!ブッ!」 → 一同大爆笑
このクソくだらないやりとりが、彼らとの最後のコミュニケーションタイムでした。
最後、ダーイーフーとも固い握手をして「次回来る時は美味しい日本酒を土産に持ってくるよ」と伝えると「日本酒はほとんど水じゃないか。次回も白酒で乾杯しよう!」と彼らしい挨拶。車に乗り込むと、みんなが笑顔で手を振っています。
ママの両親が亡くなる前にお会いできなかったのは残念ですが、今回の旅で中国にいるたくさんの家族と出会い、また日本にいる家族との絆も一層深まった気がします。
温かく時に激しい家族の絆と、急速に発展したインフラと反比例するように昔と変わらない老百姓(庶民)の姿。
帰国後の羽田空港で妻が言った「日本と中国の中間くらいがいいかもしれないね」という一言に妙に納得してしまう中国帰省旅でした。
中国江蘇省の滞在記シリーズはここまで。皆様、最後までお付き合いありがとうございました!途中回った数々の素敵な観光地の話はまた別の機会に記そうと思っているのでお楽しみに。
最後に今回の中国滞在シリーズの主な登場人物をまとめておきます