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〜30代からの自分史編纂〜はじめてのnote
▼noteを始めるにあたり
「0の状態から何かを作り上げて、それを発信して、反響を得たり人の心を掴んだ経験はありますか?」
無さそうだけど、と言いたげな面接官の表情。
実際、そう付け加えていたのかもしれない。聞いていないだけで。聞かなかったことにして。
暖房の効いていないヒンヤリとした空気感に包まれた殺風景な会議室。もう1人の面接官は神妙な面持ちを続けている。外は穏やかな冬晴れだった。
実際、そのような経験はなかった。小学生の頃、書き初めが市内の展覧会に出た、その程度。
思いつきで適当に返した答えは、現に面接官の心を掴んでいない様子だ。少し険しい表現をしているよく知らない他人を前に、私は無理矢理伸ばし続けていた背筋を少し緩めた。
こびり付いた過去の記憶を文章にして、やりきれない気持ちを供養できないか。そして、少しでも前向きになれないだろうか。
同時に、こんな人もいるんだ。そう思っていただけたら幸いです。
そう思いnoteを始めてみました。
▼プロフィール
・30代、IT系サービス業の契約社員
・内定がないまま2016年に私大の文系学部を卒業し、既卒で挑んだ就職活動と公務員試験は失敗
・大学卒業から約1年後、契約社員として社会に出ていく
・逆流性食道炎を2回経験
2回目の発症時に満員電車内で倒れかけて以来、各駅停車の電車しか乗れず、元々苦手なバスは余計苦手になる
・心療内科では不安神経症と診断される
▼9年前の今頃
高校、大学受験と進路で大きく躓く事もなく、就活も大丈夫だろう、家族にいい報告ができるだろうと鷹を括っていました。
結果、"売り手市場の売れ残り" "訳アリ品" "古びた就活生" と評価を下すことになります。
将来どうでもよくなり、安い焼酎を飲み漁り、昼夜逆転の生活を繰り返し、どのように消えるかを模索していました。
立ち直ったというより、自分比で今は多少マシになったのでしょう。
例えば、どこか旅行先で消えるか。それなら温泉でお酒を飲んでからがいい。自宅から樹海までのルート、海に飛び込み浮かんでこない方法、肥えた人間が即身仏になれるの?
その前に先ずは身辺整理から始めねば、と考えたのは親族の遺品整理の経験があるから。
ものぐさな私にはそれが難しいのでした。
▼探している人/訪れた人
「顧客への宣伝とセールストークができる。クリエイティブな思考とスキルを持つ。それを併せ持つ人を探しているんですよぉ」
面接の終盤そんな話があった。あなたじゃないよね、と言わんばかりに。いや、実際言っていたのかもしれない。聞き逃しただけで。
背筋は緩み、膝に置いたはずの手は既に組んでいた。時折所在なく親指をくるくると回している。
程なくして終了が告げられる。解放感が混じった笑みでお礼を述べて、足早にその場を去り、ゆっくりとオフィスの外へ出る。
外は来た時よりも少し風が強い。乾いた風が目に染みる。正装をして初対面の人間へ自身の事を伝える。これは口と喉のいい運動になった筈だ。
穏やかな陽射しが降り注ぐ平日のお昼過ぎ、
軽く溜息をついて駅へと向かった。