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『日本のミュージカル界』の未来


ウィーン版『モーツァルト!』を視聴して

先日WOWOWで放映されたウィーン版ミュージカル『モーツァルト!』。
2016年の上演を収録。
ちょうど日本版が博多座で千穐楽を迎えた日の夜の放映でした。
(※私は今年の日本版は観劇していません)

<ウィーン版出演者>
ヴォルフガング・モーツァルト:ウード・カイパース
アマデ:ゾフィー・ヴィルフェルト
レオポルト・モーツァルト(モーツァルトの父):トマス・ボーヒェルト
ヒエロニムス・コロレド(ザルツブルク大司教):マーク・ザイベルト
コンスタンツェ・ウェーバー / ニッセン(モーツァルトの妻 / 未亡人):フランツィスカ・シュスター
ヴァルトシュテッテン男爵夫人:アナ・ミルヴァ・ゴメス
ナンネール・モーツァルト(モーツァルトの姉):バーバラ・オーバーマイヤー
セシリア・ウェーバー:ブリギッテ・エルケ
アルコ伯爵:ジョン・ジョフリー・ゴールズワーシー
ほか

とにかく圧巻。ミュージカルというよりキャストの歌唱力の高さはオペラを観ているようでした。
モーツァルト役のウード・カイパースさんのキラキラ感+歌唱力も圧倒的で、大司教役のマーク・ザイベルトさんはトート閣下も演じているので有名な方ですが歌のみならずヴィジュアルも素晴らしい→なんといっても腹筋の割れ方が凄かった笑

一方で日本版は、初演のモーツァルト役が井上芳雄さんと中川晃教さん。
以前この作品の演出家が「(当時)帝劇の初主演(ダブル)をこの2人に決めたというチャレンジは、集客面は他のキャストで出来るだろうと踏んだからだった」と言っていました。

<2002年初演時のキャスト>
レオポルト 市村正親
ナンネール 高橋由美子
コンスタンツェ 松たか子・西田ひかる
大司教 山口祐一郎
ヴァルトシュテッテン男爵夫人 久世星佳

確かにこの布陣なら集客は安心。
そうでなければ、井上・中川のWヴォルフは生まれなかったかもしれません。チャレンジが出来た時代でもあったのかもしれません。

今で圧巻の歌唱力を持つセンターマンは井上芳雄さんと中川晃教さんであることは間違いない

この二人に加えて山崎育三郎さんも、です。(2010年~2021年までヴォルフ役)
日本版のミュージカル『モーツァルト!』は新星若手スターの輩出ミュージカルでもあったわけですね。
ところがはたと気づいたのですが、この3人以降、10代~20代前半で帝劇の主演を務めてしかも歌唱力が圧倒的に高いスターがいるか?と考えると・・・(世界でも通用する歌唱力を持つ人)

私が知る限り、残念ながらいません。

歌唱力が圧倒的に高い若手スターが日本で生まれて来ない理由

ほぼこの理由一択に尽きるのですが→”商業演劇は利益を生まなければならない”

”ビジネス”として利益が生まれるには、今はチケット代金のみでは利益が出なくなってきました。そのため、
①劇場での集客
②劇場で販売される公演グッズ類の売り上げの高さ
 及び劇場での飲食などの売り上げの高さ
③配信や映像化(DVDやBlu-ray)の売り上げの高さ

この3点が揃わないと商業演劇は利益が出ない時代に入っています。
チケット販売や舞台美術&音響などのIT化によるコスト高、人件費の値上げ、さまざまなメディアでの広告宣伝費、物流や運搬費用の高騰などなど。。。。
コストは上がり続けるばかりなので劇場が満員御礼になれば利益が出るという時代は過ぎ去りました。
となると、②③も収益が出るキャスティングが必須となります。

『観客に推し活を促進させる要素』>>『とてつもなく高い歌唱力と芝居力』

つまり『アイドル』で無いと収益が出ないわけですね。
そのために、
人気の高さ(知名度)>容姿の良さ>>>>>歌唱力&芝居力
という構図になってしまっていると私は考えます。

仮に容姿が良く+歌唱力&芝居力があっても、『知名度=既にファンを持っている』が無いと
昨今のチケット代高騰の折なかなか劇場は満員御礼にはならないし、
公演グッズの売り上げも上がりません。

こうなるとなかなか実績の無い新人若手が帝国劇場のセンターに立つことはままらないのですよね、収益上。

『購買力の高いファンをたくさん持っているか?』でのアサインが今後も続く

収益のためには劇場に足を運んでくれるファンがいるだけではダメで、グッズ類や配信&円盤などの購買力も高い大規模のファン集団がいる人が今後もこぞってキャスティングされるでしょう。

今でもそうですが、旧J所属、元坂系、元宝塚歌劇団所属(特に元トップスター)のキャストたちは、この『購買力』が高く大規模のファン集団がいる、ので収益確保にはうってつけなのです。

チャレンジが出来ない日本のミュージカル界はどうなる?

残念ながらグローバルレベルには追い付かない&追いつけない限界は続くことでしょう。
一方で「日本国内ならみんな満足だからいいのでは?」と言う既存顧客も多いかもしれません。
しかしながら、本当にそれでいいのか?
ベストアンサーは見つかりませんが、個人的には”容姿、人気度、購買力の高いファン集団”に偏ること無く、実力があるかつての井上芳雄さんや中川晃教さんのような新人若手が次々とデビューしていくような、チャレンジングで活性化された日本のミュージカル界であってほしいと願います。

#ミュージカル
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