FF16ストーリーを終えての感想【ネタバレ含む】
※本稿はFF16のネタバレを含む感想です。ご了承下さい。
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FF16のストーリーを終えました。あまりに衝撃的な体験で、心を駆けめぐる様々な感情を上手く言葉に出来ません。でも、素晴らしいゲームだと思う気持ちは強い。
発売前に流出があったとは言え、正直、公式が配信等でのネタバレを規制しないことに驚きました。それと、開発の皆さんが「最後までプレイして欲しい」と繰り返していたことは、開発者としての当たり前の願い以上のものがあったのかと想像します。
私自身は、FF16は全てプレイして「自分ならどう受け止めるか?」が凄く大事なゲームだと感じました。何より、今の気持ちをどこかに残しておきたい。間違いなく、一生忘れられないゲームの1つです。
先に書いておくと、FF16のエンディングはクライヴの物語として納得できる、最高の体験だったと思います。同時に「やり切ってくれてありがとう」と感じました。それ以上の感想については、長くなるので後述します。
■プレイと物語が1つに重なる濃密な体験
まずFF16の全体について語ると、自分は“尖ったゲーム”という一言に尽きます。それも天井を突き破るほどに。怒濤のストーリー展開、心を鷲掴みにするドラマ、最高の高揚感を得られる召喚獣合戦――全てにおいて「ここまでやるか」と圧倒されました。
正直、体験版をプレイしたときは「AAAのRPGにしては要素を絞りすぎなのでは?」と不安を覚えましたが、序盤である青年期の終わりで印象がガラリと変わりました。ゲームシステムはシンプルでも、プレイ時間に対して体験の“濃密さ”が突き抜けています。
顕著なのは、カットシーンだけでなく、マップ環境もバトルもストーリーテリングの一部となって、全てが“1つの物語”として繋がっている感覚です。特に、アレテ・ストーンでプレイできる要所は、ゲームプレイとストーリーが1つに重なり合っていると感じました。
ボス戦や召喚獣合戦においては、その感覚が最高潮に。バトル中に挿入されるカットシーンは、単なる格好良さの演出に留まらず、“拳で語り合う”ような感情表現、FFらしい技を使った見せ場、バトルの中でしか描けないドラマを体験することに一役買っている。
FF16の手法は、ゲームとストーリーを交互に繰り返すプレイ感から脱却して、ゲームプレイとストーリーを一体化させ、バトル中もストーリーを途切れさせない表現への挑戦を感じました。惜しむらくはボタン入力がQTEを想起させることで、その点は今後、一歩進んだゲームプレイが実現されればと願います。
けれども召喚獣合戦を含む山場は、前代未聞のド派手な演出もさることながら、2段、3段、あるいは4段構えの異なるバトル内容に、クライヴたちの“意地のぶつかり合い”をダイレクトに体験している感覚が楽しい。普段、感情を抑えたクライヴがそれを爆発させる場面でもあるだけに、ドラマの情動と激闘の高揚感が同時に襲ってくるんですよね。
かたやフィールドでの体験は多彩で、何を強く感じるかは展開次第。平原一帯がガルーダの暴走に蝕まれる光景に息を呑むこともあれば、新たな大地で仲間との旅と世界の広がりを堪能する冒険もあり、灰の大陸のように不気味さと不穏な空気に圧迫されることもある。
そして、終盤になって気付いたのは、フィールド全体は決して小さくなく、サブクエストが意外に多いこと。メインストーリーの疾走感が強くて、体感と実際のゲームボリュームが全く一致しないです。本当に、ゲーム全体において密度が凄い……!
■ドラマの見せ方に心が震え続けた
FF16のドラマで特に好きなところは、登場人物たちがすぐに感情を爆発させるのではなく、感情を抑えて、耐えて、溜め込んで……弓の弦を引き絞るようにして爆発させる。“感情のタメ”が効いているところです。このお陰で、ドラマが心の奥底まで響きました。
普段、ゲームによく感じることなのですが、“感情を爆発させるシーン”=“ドラマを感じるシーン”ではないはずです。感情のタメがなければ爆発させても心に刺さらない、むしろ叫んでばかりでシラけてしまう……そんな風に不満を抱くゲームは少なくありません。
話をFF16に戻すと、本作は、人と人の繋がり、そこにある“想い”がとても丁寧に描かれています。口調や表情、仕草、その場の環境や小道具に言外の感情が表れているシーンは多く、それが想像力を刺激して“気づき”を与えてくれる。そうした想いに気づいた数だけ、登場人物もまた魅力的になっていきます。
言うなれば、金太郎飴のように何処を切っても同じ顔が出てくる一元的なキャラクター性で登場人物を象るのではなく、切り口によって異なる顔を見せる複雑な人間模様が、登場人物に深みを与えている。ゲームを進めるほど、実に“人間らしさ”を感じました。
人間ドラマの話は、感想を語るとキリがないのですが、1つ具体的なシーンを選ぶならクライヴが最終決戦に赴く場面。それまでジルへの愛を態度で示しても言葉にしなかったクライヴが、初めて口に出して、ジルも同じ言葉で応えます。
あの場面は、それまで描かれてきたクライヴとジルのやり取り、そしてクライヴが殴られた出来事、2人の想いをめぐる全シーンが収束するように繋がっていて、自分のゲーム歴でも屈指と言える本当に最高のシーンでした。
序盤からずっと引き絞っていた弓の弦が、ついに放たれた瞬間と言ってもいい。心の奥底から色々な感情が込み上げて思わず泣きました。というか止まらなかった。丁寧な描写を積み上げて、最後に全てが繋がる最高のシーンを持ってくる表現は、FF16の真骨頂だと思います。
けれどジルにしてみれば、クライヴの愛を喜ぶだけでなく、なればこそ彼1人に背負わせたくない、自分も隣で戦いたい想いをさらに強く持ったはず。彼女が自分の気持ちを抑え涙を堪える様子は、たまらなく胸を締め付けられました。
だから、クライヴらが飛び去った後、ついに堪えきれず彼の名を叫んで涙するジルの姿に、涙がさらに溢れて……あの場面は本当に心から消えません。ヒロインが主人公を見送って叫ぶ場面は使い古されているのに、ジルの背中は自分にとって凄く“特別”です。
今、この感想を書きながら涙が止まりません。なんて凄いドラマを俺の心に刻んでくれたんだ、FF16ってゲームは!!!
■息づく世界、世界に生きる“人”
上で述べた通り、人と人の繋がりや想いが丁寧に描かれているFF16ですが、その対象は主要な登場人物に収まらず、脇役のNPCにも“人”を感じられるのが良かったです。
別の言い方をすると“ヴァリスゼアで暮らす人々”を大事に描いると思います。サブクエストなら、「その人がヴァリスゼアの現実にどう向き合っているのか」を描いた内容が多いし、そういう話はドラマも深い。だから、単なるNPCでも“生きている”と思えるし、人の息吹がヴァリスゼアの世界観をより深めていると感じました。
それと何と言っても隠れ家のNPCたち。サブクエストが用意されている人物も多いですが、世間話のような自動で流れるセリフを聞いているだけでも、そこに考え方や性格が滲み出ていて、だんだんと人となりが見えてきます。
そうやって、個々のNPCの人柄を感じられる頃合いになると、隠れ家が“家”のように思えてくる。終盤、ガブが隠れ家の皆を家族と呼びますが、あのときは単なるセリフとして以上に、それまでのプレイを重ねた実感として彼の言葉に頷きましたね。
ちなみに、NPCに焦点を当てたサブクエストで気に入っている話は、ルボルが首長になる「茨根ざす砂原」です。シナリオやセリフが良かったのもありますが、演出のカメラワークが素晴らしく、ルボルや子供たちの言葉がより心に入ってきて。おそらくシーン自体は汎用のモーション等で作られたと思うのですが、とても表現に凝った内容だと感じました。
協力者たちと人々を描いた一連の前後編サブクエストは、どれもメインクエストで良いくらいのドラマ性だったと思います。主人公が世界を救った“先の世界”で人々がどう生きるか、その想像を助ける話は、FF16の場合はすごく意味が深い。
余談ですが、こうまで語っておきながら、サブクエストで一番好きなものはジルと雪月花を見に行く「白銀の君」です。あのクエストこそ、最終決戦に出発するシーンを際立たせるために、メインクエストのどこかに入れておいて……! と思いました。
■アクションの奥深さと丁寧さ
バトルの“本番”と言えるFFチャレンジやアルティマニアックは殆どプレイしていないので、バトルについて感想を書くかは迷うところなのですが……それでも1周目を触った範囲で感じたことを述べようと思います。
ちなみに、自分は「アクションゲームに苦手意識はないけど得意でもない」くらいの人間で、アクションフォーカス&オートアクセ無しでプレイしました。体験版の感触よりも歯応えを感じて、姿勢を正してプレイするようになったのが青年期のラストあたりです。
最終的には、回復薬を使い切った戦いが何度かある一方、死んだのは召喚獣でも回復できることを見落とした1回なので、おそらく自分にジャストフィットな遊び方が出来たと思います。ただ、レベル49でクリアしたので、その恩恵は大きいですけどね(笑)。
だからオートアクセは使わなかったのですが、これはコンフィグではなく装備なのがミソだなと思っていました。コンフィグは触らない人は絶対触らないけど、装備は逆に触らない人がいない――たぶん、そういう気遣いなんだろうと。
「誰でもクリアできるように気を遣った」と各所で繰り返されていましたが、その一方で、考えるポイントは多く、アクションの背骨はキチンとしているというか。ハードルを下げることとアクションの奥深さを保つこと、その針の穴に糸を通すような丁寧さを感じました。
アクションの奥深さとしては、考え得るコンボが多彩で、自分の攻撃→自分の攻撃と繋げる以外に、敵の攻撃や特定の条件下など、様々なシチュエーションにアビリティを繋げる意味があることは、非常に魅力的です。手触りもいいので、上手に動けるとすごく気持ちいいですし。
ただ、ひとつ大いに不満なのは、アビリティ&アクセの装備セットを保存できないこと。それとアクセの種類が多すぎるので、カテゴリ分けしたUIかソート機能が欲しいことでしょうか。現状だと“試して戻す”が面倒すぎるので、そこはビルドの試行錯誤の足枷になりそうかなと……。
1周目は無くてもそんなに困らないのですが、おそらく2周目以降には必須の機能だろうと思いました。ちなみに、下の画像は自分の現時点のアビリティセットです。
■最後は絆に泣いて絆が心に染み渡る
ゲーム全般の感想を概ね語ったので、エンディングの感想について続きを書きます。FF16が自分にとって大切なゲームになったので、可能な限り、あのときの気持ちや考えを残しておきたい。
言うまでも無く、FF16をプレイしてきた全てがエンディングに繋がっています。だからあのとき……「月を見ていた」が流れたとき、心を駆けめぐった感情は哀しみだけでなく、様々な情動が涙に変わって溢れ出てきました。
涙はスタッフロールが始まった後も止まらずに、自分は涙が涸れ果てるまで泣き続けました。泣きすぎて激しい頭痛がしたのは、ゲームでは初めてかもしれません。そして涙が涸れた後の喪失感は、例えるならば、心が黒の一帯に覆われた、そんな心境です。
でも、エピローグを迎えたとき、空虚な心に小さな花が咲きました。それは、クライヴの想いと兄弟の絆が、それぞれに実りを迎えたことを感じさせるシーンで。花は、心を覆う黒の下に確かな根を伸ばしていった。そんな風に思えました。
FF16の物語を一言で表すなら、絆の物語だと思います。ただ自分の記憶が確かなら、ゲーム内では1度も絆という言葉を直接使っていない。思うに、絆を月に喩えるなら、夜と星をしっかりと描くことでその大きな輝きを際立たせていた、FF16はそういう物語だったと思います。
そもそも絆を辞書で調べると「人と人を離れがたくしているもの。絶つことのできない結びつき」という意味。一般にイメージされる清い意味合いは含まれず、人同士の繋がりの強さだけを指しています。
振り返れば、フェニックスゲートの一件で人との繋がりを全て失ったクライヴが、信用、悪意、憎悪、愛情、友情……様々な想いをぶつけられ、時に自分の想いをぶつけて、ゼロから再び絆を作り上げてきた。ゲームで、彼に繋がる想いの全てを体験してきました。
あらゆる想いを受け止めたクライヴは、彼自身の想いをより強く抱いて、人の清濁を受け入れた自我の共存という絆ある生き方を求めた。人の自我を否定するアルテマも、ベアラーの自我を否定する人も、絆のアンチテーゼとして重なります。
だから、FF16は単純に世界を救う物語になり得ない。世界を救うこと、世界の理を壊すこと、それは目的のための手段であり通過点です。
敵を倒しても大戦と黒の一帯の傷跡は残り、魔法が消えれば文明が衰退し、暗黒時代が訪れることは歴史の必然。“人が人として生きられる場所”は、数世代かけて人々が絆を広げることで実現する。
考えを整理したとき、エピローグのときに感じた気持ち、心を覆う黒の一帯に咲いた花は、一輪、また一輪と増えていくのだろうと思えました。FF16の体験が“思い出”に形を変えながら。
FF16は、終わって考えさせられるゲームとも少し違って、プレイを終えた後に、何を感じて、受け止めて、考えて――それも含めて心に刻む。心に湧き上がる様々な感情の咀嚼、長い余韻を含めて完成するゲームだと感じています。
■FF16でしか味わえないゲーム体験がある
FF16を始めてから、コントローラを置いている間は「ラスアス2」を思い出すことが増えました。ジルとエリーの声優さんが同じだからですが、2つともストーリー体験とゲームプレイを究極に一体化させたゲームで、その部分が似ている。FF16もTGAで賞を取って欲しいです。
自分にとってゲームは、個々のゲームでしか得られない体験を求めてプレイするものです。その意味で、FF16のプレイ中は濃密な時間を過ごせました。
高揚感にしても喪失感にしても、感情のメーターが振り切れんばかりの体験。一方で、丁寧に描かれる登場人物たちの“想い”が胸の内に沁みる。心理的なストレスはあるものの、それが却って登場人物への共感とゲームへの集中を高め、ダイレクトに心を掴んできます。能動的にストーリーを体験している実感が凄くあるんですよね。
ただ、ひとつ贅沢を言うならば、シングルプレイRPGである以上、もう少しロールプレイ性があっても良いと思いました。昨今は、アクションRPGとアクションADVの境界がとても曖昧です。両者を隔てる薄皮1枚は、やはりロールプレイ体験の厚みだと思うので。
それでも、間違いなくFF16でしか味わえない“ゲーム”が体験ができたし、ここまで様々な感情を呼び起こして心を揺り動かしたゲームは記憶にありません。本当に素晴らしいゲームを届けてくれた方々に感謝です。
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