富士の裾野で海水廃棄、それホントに?
例によってTwitterをつらつらと眺めていると、富士山麓に建設のサーモン養殖場から海水が廃棄されるて下流が塩害でヤバい、というような話を見かけました。
どなたが書いたかと思えば、築地市場の豊洲移転の際にワイドショーや都のプロジェクトチームで八面六臂の活躍をされた、一級建築士の森山高至さんでした。(今は「SDGs建築エコノミスト」を名乗られているようですが)
それにしても、富士山麓で海水を排出するなんてとんでもない話…
って、丸ごと鵜呑みにする人が多くて正直驚きました。暗黒メガコーポじゃあるまいし、そんな訴訟リスク満載な計画でこれだけの規模のビジネスを始めると思う方が大概です。
このプロジェクト、いくつかネット上の記事を見ると、下記の様な概要になっています。
ノルウェーのプロキシマーフード社が静岡県駿東郡小山町にアトランティックサーモン「閉鎖循環式陸上養殖」施設を建設
場所は大和ハウス所有の工業団地
2023年6月竣工予定、2024年半ばからの出荷を計画
年間生産量は約6300トンを見込む(日本のサケマス輸入量の2~3%)
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「閉鎖循環式陸上養殖」、素人の私にはまったく馴染みがなかったのですが、文字通り陸上で海の魚を人工的に養殖するもの。特に閉鎖循環式では飼育水をろ過システムで浄化しながら循環利用することで、山の中でも水があれば養殖が可能。飼育環境の管理がしやすいため、外部の影響を受けず、安定して育てられるというメリットがあるとされています。
天然や海での養殖では漁場が限られているため、期待が高まっている技術のようです。
そんな施設ですが、森山氏は一連のツイートで下記のように批判していました。
プロキシマーフード社の施設で使われるアクアマウフ社製閉鎖循環式陸上養殖システム(RAS)は「完全閉鎖式」ではなく、飼育水の10%程度が捨てられる
山の中で養殖するのは、海水養殖を想定した法律が未整備で、規制が無いため
富士山麓の渓流に海水が排出されれば下流域に甚大な影響が出る
大手商社やデベロッパーまで巻き込んで、そんな間抜けなプロジェクトがあるんでしょうか?
プロキシマーフード社のWebサイトを見ると、サスティナビリティに関するページがあり、そこにはCICERO(ノルウェーの外部評価機関)のレポートが掲載されていました。「Water use and wastewater management(水使用と排水管理)」の項を見ると、このように分析されています。
アクアマウフのシステムは水の99.7%を再循環する
→ 10%も排出の根拠はどこから?一日あたりの排水量は180立方メートル/日よりやや少なくなる見込み
河川に放流する前に紫外線とオゾンで処理を行う
環境への影響は国の基準より厳しい地元当局の基準で評価
→ 基準はある排出許可証には塩分濃度を2.5ppt(2500ppm)にすることが規定されているため、排出前に希釈を行う
→ 海水そのままではない河川の水質をモニターし、ネガティブな変化がある場合は逆浸透膜を使用する
まだ稼働前の施設なのであくまで計画に基づく評価ですし、企業側が提示している資料ではありますが、一定の排水はあるものの、少なくとも規制を逃れて海水垂れ流しという森山氏の指摘とはだいぶ隔たりがあります。
塩分濃度2.5pptの排水とのことですが、海水はといえば35pptくらいです。河川で更に希釈されるので、下流域への影響はないという事で地元当局も排出許可を出したのだと推測されます。
この評価レポート、グリーンボンド(環境改善効果のあるプロジェクトに要する資金調達のための債権)発行に関わるものなので、万が一、森山氏の指摘通り海水垂れ流しであれば虚偽ということになり、大変な問題になることでしょう。何か余程のエビデンスがあって批判されているのでしょうか?
森山氏は今後も追及を続けていかれるようなので、動向が注目されます。
🤔…
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