【シン・ゴジラ】あらすじを三幕構成で読み解く
一幕(約45分)
一場:状況説明(巨大不明生物東京湾より現る)
東京湾で大量の水蒸気噴出を伴い出現した新種の巨大生物が大田区から品川区にかけて蹂躙する。政府は想定外の事態に、災害緊急事態の布告を宣言して超法規的に対処することを決定する。
二場:目的の設定(巨災対設置〜ゴジラ凍結作戦の立案)
政府は自衛隊を出動して駆除に当たるが、逃げ遅れた住民を発見して攻撃を中止する。巨大生物は京浜運河から東京湾へ姿を消す。政府は従来の海上自衛隊とは別で、官邸内に巨大不明生物特設災害対策本部(巨災対)を設置して巨大生物の再襲来に備える。
巨大生物とその残存物から放射能が検出される。米国から大統領次席補佐官および大統領特使が極秘裏に来日し、Godzillaの情報を提供し日米で対処することで合意する。巨大生物の呼称をゴジラに決定する。巨災対は血液凝固促進剤の経口投与によってゴジラを凍結させる「矢口プラン」を立案する。
二幕(約50分)
三場:一番低い障害(タバ作戦)
鎌倉からゴジラが再上陸。政府は武蔵小杉で玉川を最終防衛線とするタバ作戦を実行し自衛隊による駆除を実行するが失敗。ゴジラは東京都内への北上を続ける。
四場:二番目に低い障害(東京陥落)
港区まで進行したゴジラに対して、米軍の爆撃を日本政府は事実上の後追いで承認するが、ゴジラは熱戦を使用してこれを撃退する。政府は首相官邸から立川広域防災基地への官邸機能の移動を決定するが、移動中に総理大臣を含めた閣僚11人がゴジラの熱戦に巻き込まれて死亡する。ゴジラは東京駅構内線路上で突然活動を停止する。
五場:状況の再整備(立川に移管)
立川で臨時内閣が組閣される。巨災対はゴジラの残留肉片を科学分析して血液凝固剤の開発を官民一体で進める。米国は日本政府への協力を申し出るが、内政干渉を危惧した日本政府は巨災対に押し付ける。研究の結果、ゴジラの無性生殖による個体増殖や大陸間拡散の可能性などが示唆されて、海外研究者は熱核兵器による早期解決を検討する。
六場:一番高い障害(日本VS米国)
Godzillaを事前に把握していた米国は、証拠隠滅も兼ねてゴジラの熱核兵器による早期処分を国連安保理に決議させる。これに対して日本政府は、国土を守るために巨災対のプランを強行し、ゴジラから次世代エネルギーの研究利用価値を餌に仏国などに働きかけて避難期間の引き伸ばしなど時間稼ぎを図る。日系3世である米国大統領特使も米国議会で発言して米国の勢いを削ぐなど政治工作に躍進する。
三幕(約25分)
七場:真のクライマックス(ヤシオリ作戦)
東京駅付近でヤシオリ作戦を実行し、ゴジラの凍結に成功する。
八場:すべての結末(日本の復興に向けて)
都心を汚染したゴジラの新元素の放射性物質は半減期が20日だと判明し、復興の希望が見える。ただしゴジラ活動再開時には熱核攻撃の即実行で国連合意したので、余談は許さない状況である。
一方、東京駅で凍結したゴジラの尻尾の先端部には、背びれを持つ人型の小柄な生物数体が生じかけたまま静止している。
FIN
▼解説:
最初の状況説明パートが異常に長いことが構造的な特徴だと言えるでしょう。実際に映画を観ていると、ここだけでも起伏に富んでいるので退屈しないように工夫されており、むしろ120分の映画の中に35分の映画が入れ子状に組み込まれているような錯覚さえ起きます。
二幕に入ると立て続けにゴジラの障害が2つ起きる(タバ作戦と新橋壊滅)のは、ゴジラマイナスワンの二幕の2つの障害(海チェイスと銀座壊滅)と同じです。
二幕の後半は、ゴジマイでは主人公の心の変化や個人的な努力が描かれていたのに対して、シンゴジでは日本と米国の政府間の凌ぎ合いになっているのが、個人を描いた物語と組織を描いた物語という対比を最もよく表しています。
それぞれ政府組織と個人とで全く逆だと評価される2作品ですが、こうして映画の教科書に即して書き並べると、実は全く同じ展開だったことが判って大変面白いですね。
(了)
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