アーミー・オブ・ザ・デッドの感想(初日)
初日に観たんだ。これを書かずして何を書くのよ?
率直に楽しい映画でした。
鑑賞後の勢いでわーっと書いてるのでネタバレありです。
Netflixで視聴できるので、先に映画を鑑賞されるのが良いと思います。
もう一度書きます。
本稿はネタバレ注意です。
総合的な感想
★★★★(星4つ;最大で5)
率直に楽しい映画だった。アクションの見せ方とか残酷な破壊描写とか。ザックは見たいものをしっかり見せてくれた。爆発。薬莢。硝煙。人体破壊。血飛沫。お金。モンスター。陶酔的なスローモーション。パーティに必ず一人はいる嫌な奴。初心者キャラの成長。心に傷を抱える主人公。大切な誰かを失ったところからスタートして、取り戻すまでのストーリー。これだよ、これ!
良い作品だと思う。ただ、やはり巨大な爆発などVFX主体のシーンでは予算の違いが画面に現れてしまい、ザックが手がけたDC映画と比べると迫力で見劣りする部分はある。そういう予算のプロジェクトだと納得すればそこまで気にはならない。(そもそもゾンビ映画っていうのは低予算で撮れるジャンルとして始まってるので、何も問題ないのだが。笑)
着想の面白さ:ゾンビの軍隊
タイトルの Army of the Dead = ゾンビの軍隊 である。
クリエイターにとってアイデア(着想)は肝だ。それまでのゾンビのセオリーは、ドラクエで言うところの「すばやさ」と「かしこさ」がひどく低下する(だからこそ非力な女性にも勝てるチャンスがある)のが常識だったが、2004年にザックは自身の初ゾンビ映画で「すばやさ」を爆上げして世界を変えた。(彼より先にゾンビが走る作品があったらすみません)
そして2021年、この最新作でザックは「かしこさ」まで開放した。これによってゾンビの戦闘バリエーションが爆発的に増えて、何より王国を築き、軍隊を組織することが可能になった!
しかしゾンビのくせに機敏で思考ができるって、それ最早ゾンビじゃなくて、ただシンプルに人間の上位互換が出来上がってしまわないか?笑。
いかん無粋だったか。ただゾンビに弱点がなくなったので、味方キャラの超人的な強さと運の良さに依存する度合いが高まった側面はあると思ってて、私の場合は「逃げる主人公への感情移入」や「与えられた条件で工夫を凝らして勝利する」という鬼ごっこ逃走中みたいな緊迫感が薄れてしまったのは、少し寂しかった。(『ワイルドスピード』がだんだんカーレース映画からアクション映画に変わっていったのにちょっと似ているかも)
とはいえ、ザックはまた一つ新たな発明を生んでしまったんじゃないだろうか。ゾンビの感染が二種類あるため知能タイプと脳筋タイプに分かれるというのは面白いアイデアだと思う。ゾンビ映画はあまり多く観てないが、ゾンビがここまで知性とコミュニケーションを使って組織的に人間を追い詰める展開ってゾンビがメインの大作映画では初めてだよね?もしあったとしても知能タイプと脳筋タイプが同時に存在するパターンは稀なんじゃないかな。
なかなか複雑で制約の多い設定ではあるので、そのまま別の作品に流用するのは難しいかもしれないけど、これまで見たことがない展開という意味では新しさを感じる作品だった。
王道か、凡庸か:人間ドラマはゾンビ映画に必要か
序盤はちょっと人数が多すぎる気もしたが、登場人物のキャラが全員とも濃くて良かった。いかにも寄せ集めの集団という感じで非常に良い。台詞はザックの過去作品と同様みんな早口でかっこいい言い回しをしようとするし、興奮すると母国語(ドイツ語やスペイン語)が出てしまうヤツもいて、本格的というか、子供だまし感は皆無である。
人間ドラマの部分はよく言えば王道で、悪く言えば平凡。ただし、劇中でゾンビのアイデアがいろいろと提示されるので、そちらの理解に脳を使いたいので、このくらいのバランスで丁度良いと思う。そもそもゾンビ映画って人間の愚かさを描くことはあっても、人間キャラの愛憎や友情をメインに据えるものじゃないでしょ。(今回キングゾンビの感情爆発してたけどな。笑)
ただし「よく見るタイプのドラマ」ではあるが、本作品がザック・スナイダー(当時51歳)が愛娘オータムンを自殺で亡くし(享年20歳)てから最初に制作した長編映画であるということを意識すると、それなりに重みが変わってくる。本作の主人公スコットと娘ケイトの年齢は、そのままザックとオータムンのそれに当てはまる。父と娘が亡くなった母について話す場面や、失われた時間をまた二人で暮らせば取り戻せるのかなど、現実の関係性とはすこし違う設定ではあるが、ザックがオータムンに想いを馳せて撮っているような場面が何度もあり、なかなか感情に訴えるものがあった。
だから緊迫した映画なのに父は何回も「この仕事が終わったらサンドイッチ屋さんやろうぜ」という話を娘にするのだろう。(でも何故サンドイッチ、、、あ、、、もしかして、、、サブウェイ?)
脚本:ザック・スナイダー
話自体はシンプルだけど、みんな早口で情報量が多く、日本語の字幕は結構削っている印象を受けた。ただし『エンジェル・ウォーズ』みたいに妄想上で展開する映画ではないから、理解が難しいというレベルではないね。
あと受け答えがカッコいいんだけど、字幕では短い日本語で状況を理解させる必要があるから割と無難でざっくりな意訳にはなってしまうよね。そこがもったいない。(これは彼の作品に限ったことではないが)
撮影監督:ザック・スナイダー
ジャスティス・リーグで多用したIMAXカメラから、良い意味で彼の過去作に先祖返りしたような味わいの画に変わった。
たぶん砂漠にセットを実際に建てて撮影していて、CGは遠景の利用がメインだったと思う。だから屋外のシーンは質感がリアルで目新しかった。
俯瞰のシーンはさすがにVFXでまとめていたけれど。
58分30秒頃の自由の女神像のショットは猿の惑星へのリファレンスだろう。「かつてラスベガスだったこの場所では、人間に変わる知能が世界を支配している」というメッセージ性がまるで同じ。
そして、その自由の女神のシーンの直後、主人公たちが建物に入っていくショットで、ザックの遊び心が炸裂している。巨大なマジシャンのポスターに貼られた顔と名前がラリー・フォンなのだ!ザックはお世話になった人や団体を広告でカメオ出演させるのがお好きね。笑
キャスト:真田広之(※答えあわせ)
さすがに荒唐無稽すぎた私の予想は外れた。(当たり前だw)
真田広之が演じる役は、日本刀でゾンビを斬り捨てる現代のサムライではなかったし、ゾンビに埋め込んだ電極でゾンビの軍隊を指揮するマッドサイエンティストでもなかった。笑
ただ存在感はあったので説得力はあった。ちゃんと英語が話せる日本人俳優は貴重だなー。そして、それなりに黒幕として良からぬ事はしていた。笑
彼は Bly Tanaka という名前で、アメリカ国防総省のかなりエライ役職の日系アメリカ人、もしくは国防総省と裏でつながりを持つ重要人物という設定らしい。(たぶん)
(なお私の外れた事前予想は前日に投稿した記事にある。笑)
その他ニヤリとしたポイント
・お願いする時だけ「パパ」って言うケイトはずるい。(普段はスコット)
・燃料タンクを背負って歩くとか怖すぎるよな。絶対誰か誤爆すると思ったけどなかった。(自爆はあったけど)
・オタク気質のある白人と仏頂面の黒人が仲良くなる(バリーとビクター)
・ヘリコプターのパイロットがひたすら男前。(エイリアンのリプリー、ターミネータのサラ・コナーに匹敵する)
・ゾンビタイガーに襲われるシーンは猫に遊ばれるみたいで妙にリアル。笑
・脳みそパクリ、ペシャリ、パカリがエグすぎる。笑
・くるっ+バキッ→ぺろりん。笑
・ギータって結局最後どうなったっけ?
物語に深読みの余地はまだありそう
設定が面白くて複雑そうな映画なので、もう一度か二度くらい再視聴して、細かなところを考察したいなー。そしたらまた記事を書こう。
単純に何も考えないで見ていても楽しいんだけど、ちょっと掘ると色々出てきそうでワクワク感がある。
さあNetflixで観よう、あなたも!
別にこの記事を通して観ても、私には一銭も入らないけど宣伝。笑
どうでもいいけどスナイダーカットと時期が重複してマジで忙しいわ!
(喜びの悲鳴)