なぜアメリカの怪獣映画はあんなに残忍になれるのか?【ゴジラxコング新たなる帝国】
あるキャラクターが非常に残虐な方法で殺されてしまうので、その理由について考察してみます。
このnoteには『ゴジラxコング 新たなる帝国』および過去のレジェンダリー制作ゴジラ映画のネタバレを含みます。
▼あるふせったーにて:
公開初日から絶賛ムードだった本作について苦言を呈したネタバレ感想がありました。
要点をまとめましょう。
0)楽しんでる人を貶す意図はないが…
1)大きなゴリラばかりで怪獣に見えない。
2)スカーキングの倒し方がエゲツない。
3)メカアームつまらない。
4)走るゴジラが一番まともに見えた。
雲斎氏はかなり気にしておられますが、映画なんて個人の感想が自由にあって良いと思います。
私は本作を《良質なギャグ映画》くらいに考えていますので肯定的に評価していますが、シリアスなものを求めた場合にあまり響かなくなるだろうなということは十分共感できます。ちょうど『ザ・フラッシュ』と似てますね。あとはどちらがTwitterやFilmarksで多数派になったかという違いだけでしょう。
そんな肯定派の私でも、雲斎氏に強く共感するのは二点目に挙げている《スカーキングの倒し方のエゲツなさ》です。
▼スカーキングの最期:
百聞は一見に如かず、なので見ていただきましょう。
ラストシーンは、こんな感じです。👇
はい、別の映画から引用しましたけど、全くこの通りですよ。(笑)
凍らせて、砕いてましたから。
カメラからはフレームアウトさせてましたけど、完全に粉々に砕け散った破片が見えました。
あれ、解凍して腐り始めたら、腐敗臭で付近は地獄になりますよ。
そもそもリオデジャネイロの都市全体ごと破壊され尽くしてるので、もはや気にならないレベルかもしれませんが。(苦笑)
アダム・ウィンガード監督は前作『ゴジラVSコング』でも『ダイハード』のような80年代ハリウッド大作映画を取り入れて楽しませてくれましたが、今作『ゴジラXコング』ではシュワルツェネッガーのようなアイコニックなアクションが多いように思えました。
▼雲斎さんの自己分析:
確かにエゲツなさなら、レジェンダリー版ゴジラは第一作から一貫してるように思えます。
トカゲや昆虫のようなモンスターを相手にならまだしも、ヒト型の生き物にこのようなことをやるのはキツイと感じられたとのこと。
また仮にヒト型だとしても、人類に対して具体的な悪事を働いたのであれば理解のしようもあるが、本作ではそれも無いとのこと。
なるほど、と思う部分もありますが、それでも私は氷漬けにして粉砕するのは、生き物を相手にする行為としては、度を越していると思います。
日本人が作った怪獣映画ならば、たとえ人類に直接的な被害が出た後でも、ここまで残忍な殺し方はしないのではないかと。私なんかはムートーやギドラでもやりすぎだと思いましたよ。
私はアメリカが作る怪獣映画を日本人が残酷すぎると感じる理由は、少し違うポイントにあると考えます。
では私の考えを述べましょう。
▼アメリカ人が容赦無くなれるのはキリスト教のおかげである:
結論は、ずばりキリスト教のせいでしょう!
え?あの優しい印象のキリスト教が?
と思った人には、YouTubeにちょうど良い動画があるのでそちらを観ていただきたいのですが、簡単にまとめると…
自然環境が原因で肉中心の食生活をしていた。
⇒家畜を躊躇なく殺せる強いマインドが必要だった。
⇒キリスト教は《神の教え》として殺しても良い命と良くない命に分別した。
⇒人間は殺してはダメ、ただし動物の中で神が決めたものは殺しても良い。
⇒自分達と同じ教義に従わなければ人間の形をしていても人間ではないと認識するようになった。
というベースが思想の根底にあるので、敵モンスターの命の重みなど全く感じなくなれるのです。
ちなみに、ヨーロッパやアメリカでは黒人を奴隷として人間未満のゴミとして扱う人種差別が出来たのも、逆にクジラやイルカの命を尊重して食用にやたら過激に反対する人達がいるのも、根本はこの思想で繋がっていたりします。
大事なのは、彼らには命の重さを明確に線引きする文化があるということです。
だからアメリカの青少年は、スカーキングバラバラ殺害に、残酷さをたぶん微塵も感じていません。
これは八百万神の信仰から生まれた日本神道で思想が作られている日本人には到底理解できない感覚です。日本神道のすごいところは、それがあまりにも抽象化して生活様式の奥深くに根付いてしまったために、日本人自身が自らの宗教観に無自覚であることなのですが、これを意識できるようになるとアメリカやヨーロッパの映画が時々ひどく残酷になるのが理解できるようになりますよ。
理解しても無理して好きになる必要はありませんが、自分が嫌いである理由を知るのは、嫌いなものでも鑑賞する助けになるような気はします。
より詳しく知りたい人のために、この動画が元にした書籍もリンクを貼っておきますね。
(了)