書評:大友克洋全集12 (AKIRA 1)
単行本との比較をメインに。
▼内容について:
第1話から描き直しが大胆で衝撃を受けた。ただし第1集を最後まで読んだ限りでは、ここまで大きな変更は第1話だけだった。
「バキッ」みたいなちょっとした擬音が全集は手書きで、単行本は活字、みたいな細かな差もあって面白い。
連載時の通りに区切られて、各話ごとの扉絵がある。他の漫画の単行本を読んでるときのようなリズムが生まれるので読みやすい。
これ、連載時は連載の単位で起承転結やクリフハンガーを考えてネームを構成している(はず)なので、こうして扉絵で区切るのが作品として正しい形だと思う。
たとえば連載時にその回での最後のコマは本質的には「来週もよろしくな」と区切りを打つためのセリフ(表面的にはもちろん違うけど)だったりするので、そこで一度扉絵を挟むことで心地よさがアップする。
しかし単行本ではそこで扉絵を挟まないので、実質的に同じような内容のコマが連続して間延びしてる印象になっていたり、逆に性急すぎる場面転換になっていたりして、グルーヴを途切れさせてストレスになっていた箇所があったことに、今回全集を読んで気がついた。
単行本とページの左右配置が変わってる回もあって面白い。これは扉絵の有無の影響によるもので、そこまで重大な問題ではないが、やはり連載時の左右配置の方がページをめくる際の時間経過の感覚が自然にフィットしているような気がする。
更に、単行本では見開きの絵があるときは調整が必要になって、コマ割りを変更して長くしたり、逆に縮めている箇所もあった。これらについては全てオリジナルのコマ割りの方が読みやすいと感じた。
▼印刷について:
カラーも復刻されていて感動した。
上質な紙を使っているので印刷は明瞭で、白が明るくて読みやすい。ただしこれは漫画特有の粗悪な紙で得られる手触りや雰囲気を損ねてしまうので、一長一短だとは思う。個人的には単行本の粗悪な紙の質感の方が好みである。
▼装丁について:
これは大友克洋全集が発売された直後から言われていたことだが、ビニル製のブックカバーは難ありだと思う。
まず、ビニルが劣化した時に、目立ちそうで心配である。
そしてブックカバーが本からはみ出ている形状なので、普通に本棚に立てるとカバーの下側が折れ曲がってしまう。慎重に置けば立てることもできるが、時間が経てば重力で潰れてしまうだろう。
実際に、某大型書店で大友克洋全集の『童夢』が立ち読みOKのサンプルとして置いてある店舗がある(太っ腹!)のだが、そちらではグニャリと潰れてなんだかみっともなく変形していた。手元のコレクションもいつかそうなってしまうのかと思うと、少し残念な気持ちになる。
なんだろう、ビンテージ物のジーンズみたいに捉えれば良いのかしら?(笑)
▼2集以降どうするか:
今回のリイシュー版で改善された点は多くあるが、実は私は既刊の単行本で概ね満足している。
これから何年もかけて全8集で完結するようだが、最後まで付き合うかどうかは、正直まだちょっと悩んでいる。1集を買ったのは自分の目で確かめるためにも、納得してるし満足の行く買い物だったけどね。
ただ、全集の方が読みやすくて、格好良いから、迷うなァ。(笑)
全部揃えると結構な値段になるのも、足踏みする理由になるよね、正直。でも数年がかりなら買えてしまうから騙されそうだ。(笑)
(了)