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【モアナ2】あらすじ・感想(三幕構成で読み解く)

#ネタバレ

結末まで語るので、本編を未見の方にはブラウザバックを推奨します。

登場人物
モアナ:海と会話する特殊能力を持つ少女。
マウイ:半分神、半分人間。変身能力を持つ。
モニ:モアナの村の若い男。絵描き。マウイに憧れて乗船する。
ロト:モアナの村の若い女。大工見習い。エンジニアとして乗船する。
ケレ:モアナの村の老人。コックとして乗船する。
コトゥ:カカモラの戦士。訳あってモアナ達のチームに入る。


まずは、物語を三幕8場構成に分解します。

一幕

1)モアナは無人島で古い土器を見つける。海の向こうにきっと人は居る。

2)モアナは故郷の島でタウタイ(Wayfinder)の称号を受ける。そしてご先祖さまのお告げを受けて、彗星と星座を頼りにモトゥフェトゥ島を目指して船出する。

二幕

3)モアナは船上で個性が強すぎるメンバーをまとめる。

4)巨大な貝に飲み込まれる。コトゥが仲間に加わる。

5)マタンギがモアナに知恵を授ける。モアナ達はマウイと合流して、神の道で近道する。

6)モアナ達はモトゥフェトゥ島を引き上げるため、ナロがかけた呪いの嵐に挑む。マウイが引き上げる前にナロの雷が直撃して能力を失って倒れる。モアナは逆転の発想で自分が海に潜り、島にタッチすることでナロの呪いを解く。

三幕

7)海の底でモアナは先祖の力に触れて半神になる。マウイも力を取り戻す。

8)世界中の人々が海の道で繋がる。(ここで言ってる「世界」とは、ポリネシアのことを指す)

FIN

2024年製作/100分/G/アメリカ
原題または英題:Moana 2
配給:ディズニー
劇場公開日:2024年12月6日

▼解説・感想:

●構成

綺麗な三幕八場構成だと言えます。

1-1:海の向こうに誰かいる
1-2:Wayfinderに俺はなる
2-3:チームをまとめる
2-4:大きな貝に飲み込まれる
2-5:道は他にもある;神の道;再会
2-6:VS嵐
3-7:半神になるモアナ
3-8:世界の人々が繋がる

一幕
 一場:状況説明
 二場:目的の設定
二幕
 三場:一番低い障害
 四場:二番目に低い障害
 五場:状況の再整備
 六場:一番高い障害
三幕
 七場:真のクライマックス
 八場:すべての結末

参考:ハリウッド式三幕八場構成

●魅力的な物語

6年前の第一作でのモアナは幼くて恐怖や責任をそこまで強く感じなかった(と記憶しています)ですが、本作での成長したモアナは強く感じます。それは大人の視聴者の方がよく感じ取ることができるでしょう。

そして、大昔に悪しき神ナロが奪ったポリネシアの島々を繋ぐ海路を取り戻す伝説の船乗り(The Wayfinder)となるべく、少女は運命に挑みます。

私は本作に「アバター2のようなスゴイ映像」を期待して観たのですが、物語も見事だったので大満足です。

前作は勇敢な少女と半神の男のバディムービーで、お供のブタとニワトリが他の性格やキャラを担っていましたが、本作では追加キャラが現代の価値観を反映させた豊かな個性で彩りを与えていました。

体は大きいのに少し女々しくてブロマンス的要素があるモニ、逆に体は小さいけど男まさりな性格で行動力の塊みたいなロニ、そして高齢者のケレ。これらは本来の意味でのポリコレの流れですが、よく批判される「過度なポリコレ」とは異なる自然な脚色なので、ストレス無く観られました。

●魅力的な歌

吹替版で観たらマタンギという魔女の歌が異次元レベルに上手くて。どこかで聴いたことある声なのにどうしても思い出せなくて、エンドクレジットでソニンの名前を見つけて懐かしさと驚きで感動しました!

Twitterでもこの曲を誉めている声は結構多く見かける気がします。

原曲を聴いたらニュアンスまでそっくりで更に衝撃を受けました。

尾上松也の歌詞で「滅亡の日だって?ただの火曜日!」とあって、その場では意味がわからなかったのですが、原曲のドウェインジョンソン版を聴いて「Doomsday」と「Tuesday」で韻を踏んでたとわかりました。

まあでも日本語吹替は難しいですね、これはドンマイです。(笑)

●彗星の名は…

ご先祖のお告げで空に炎(彗星)が現れた時は…

これを思い出すのは不可避でした。(笑)

偶然にも「まだ会ったことのない君を、探している」というキャッチコピーまで一致してます。(笑)

たぶん監督が好きな映画だから、自分もやりたくなっちゃったんですかね。

途中で爆発した時は、それまでの彗星からまるで花火みたいに、急に距離感がバグって近くまでに修正されてて、心の中で「んなことあるかーい」ってツッコミ入れて笑っちゃいましたけど。

てゆうか、モアナが「夜空の星を頼りに航海する」こと自体は間違ってないんですけど、星というのは地球が回ることで位置が変わるのでそこまで計算して見るものであって、「この星座の下にある島」という発言も、サイエンス的にはめちゃ間違ってるんですよ。

まあ子供向けアニメであるとか、神話の語り口に合わせたファンタジーであるとか、いくらでもフィクションとして受け入れることはできますけど。(笑)

ただ、小学生の理科レベルの常識が無視されてるのは、少し気になってしまいましたね。

●世界をつなぐ船乗り

日本語で「船乗り」と表現される言葉は、英語では「ウェイファインダー」と呼ばれて、もう少し意味が狭い言葉です。要するに、日本人がイメージしやすいヨーロッパ風の海賊が使っている航海技術(ワンピースのナミ)とは、全く異なる技術で航海する能力を使える人のことを指しています。

ウェイファインディング(Wayfinding) は、一般にポリネシア航法とも呼ばれ、広義にはオセアニア諸地域で用いられているGPS、六分儀、羅針盤、海図、クロノメーターなどの機器を用いない航海術のことである。狭義には、1980年にハワイ在住のナイノア・トンプソンが考案・命名した航法技術のことである。スターナヴィゲーションとも呼ばれることもある。

ポリネシア、ミクロネシアの先住民たちは極めて広大な海域に点在する島々で生活していたため、航海カヌーによる遠洋航海を行う必要があったが、その際には陸地が一切見えなくなることも多かった。そこで彼らは天体観測、海流や波浪の観測、生物相の観察、風向の観測などから自らの現在位置と方向を推測する航法技術を発達させた。これが広義の「スター・ナヴィゲーション」である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ウェイファインディング

また映画の中では「世界の人々と繋がる」という表現をされますが、日本人がイメージする世界とは少し異なり、ここでは主にポリネシアの島々のことを指します。

https://ja.wikipedia.org/wiki/域外ポリネシア

欧米で世界(world)と言うときは《自分たちの民族(仲間)が認識してる範囲》を指すんですよね。だからヨーロッパで「世界」と言った時に、アジアやアフリカは含まれませんし、アメリカで一番を決める大会なのにワールドシリーズといったりします。同じように、ポリネシアの島国で「世界」という単語を使った時はポリネシア全域を指してると考えるべきです。だから映画のラストで世界中の人々が集まった時に、白人や中華系が居ませんでした。

でも、だからこそ、良かったと思いました。ちゃんとポリネシアの中だけで完結している物語なので、いわゆる過度なポリコレってやつが無くて快適に感じました。このように現地の文化を尊重する作品は観ていて心地良いですね。

日本人は「世界」と言われると地球全体をイメージする人が圧倒的多数派だと思いますが、それに近い単語はユニバースです。the universeで全人類とか全世界を指すニュアンスになります。

なお日本語ではthe worldとthe universeを区別するちょうど良い単語がなくて、「世界」と翻訳するしかありません。日本語でも欧米と同じニュアンスで「世界」を使う時があって、例えば「あの人と私では住む世界が違う」と言うときの「世界」がまさに欧米が使うthe worldとかなり近いです。

(了)

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まいるず
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