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MCUとアメリカ政治
たまたま私の記事にいいねをくださった方の記事で、本質的なことを書いていらっしゃっるのを見つけました。
その方が仰るには「キャプテンアメリカは服はダサいけど、顔と筋肉と戦闘スタイルはかっこよくて、そして何より重要なのは『高潔』な精神がかっこいい」という主旨になっていました。
タイトルといいサムネ画像といい、大いに「釣り」の構えを見せながら、内容は至って真面目だったことに感銘を受けたので、その上で私も以下のような趣旨でコメントさせていただきました。(実際のコメントではかなり文章を端折っています)
ハンサムとマッチョ(とキュートなケツ)は全てのアメリカ人の憧れ。それを生身の肉体で手に入れたスティーブロジャースと、機械の力で手に入れたトニースターク。2人の身体と性格は何から何まで全て対照的。でも正義を実行するという点は同じで、2人はやり方が違うだけです。
キャプテンアメリカとアイアンマンは、どちらもアメリカ人が憧れるアメリカ人像を、理想主義と現実主義の2面性でそれぞれに表現しています。スティーブロジャースが掲げる理想だけでは悪を倒せませんし、時には国家から信頼を得られません。かといってトニースタークのように実利だけで行動すれば時に過ちを犯します。世界に武器をばら撒いて戦争を加速させたのも、地球の脅威となったウルトロンを創り出したのも、元はと言えばトニーの判断ミスが原因です。
だからこそ、この2つの主義や思想がぶつかり合って問題を解決しながら前進していくのがフェーズ3までのMCUの醍醐味でした。
ここから先は政治色が出てくるのでコメントでは控えたのですが、
▼ここから先が本記事の主題になります。
異なる意見をぶつけて議論し、より正しい場所へ進んでいく、というのは本来の意味での民主主義のあり方で、これはまさに、現在進行形でアメリカで共和党と民主党が、アメリカ国民の世論を真っ二つにしながら繰り広げていることなんですよね。
つまり、キャップが青いロバで、アイアンマンが赤いゾウなんです。星条旗のブルーとレッドが国を二分して戦ってるのがMCUだったんです。
参考資料:こちらより引用しました。
実際にはスティーブ/トニーのキャラクターは民主党/共和党それぞれのイメージの微妙な入れ子構造になっていて、あまりにもステレオタイプな仮託ができないように配慮されています(そこまでやってしまうと生々しすぎたのでしょう)が、しかし『シビルウォー』なんかを観ているアメリカ人はエンタメだと割り切りつつもリアルにこの社会背景を感じ取っている訳です。そりゃあ米国では大人が観ても面白いって話になりますよね。(日本の「大きなおともだち」が喜んでいるのとは見えている世界が違う)
MCUのフェーズ3までが展開した2008年から2019年というのは、オバマ率いる民主党からトランプ率いる共和党に政権が移り、ものすごく単純化して言えば「平和を掲げる理想主義者」から「強い国づくりを目指す企業経営者」にアメリカ国家のトップが劇的に変わった時期です。
だからトランプ政権への不安や批判がリベラルの影響が強く出るエンタメ業界では非常に高まり、そうした危機感の現れがMCUでの「侵略を恐れて過剰武装して結果的に災害を招くトニースターク=トランプ」として描かれていたり、「第二次世界大戦の頃から冷凍保存されていた古き良きアメリカ人として現代人が失った平和の理想を解くスティーブロジャース=オバマ」という描写につながっていた訳ですね。
ディズニーも馬鹿ではないので明言はしません(大手メディアによる政治利用や片方への肩入れは、そのまま半数を占める反対派のファンから嫌われてしまうことを意味するので)が、一連の創作を通じて常にトランプ批判のメッセージを含ませていたのは間違いないでしょう。
こういうことを言うと、「エンタメに政治を持ち込むな」と嫌がる日本人が一定数出てくるのですが、実態は、日本には成熟した民主主義がないから「理解できなくて不快になっている」だけだと私は思います(もう少し穿った見方をすると日本国民が真面目に政治のことを考えて「賢く」なられると困る勢力の人たちが妨害行為に走っているのかもしれません:←ファンタジーですよw)。ちゃんと理解できる社会問題を扱えば、エンタメ作品でも大いに喜ばれたりするものです。
たとえば2016年の『シン・ゴジラ』が特撮怪獣映画という超マニアックな作品でありながら社会現象にまでなったのは、東日本大震災と福島原発の問題をガッツリ取り入れたからです。特撮技術や自衛隊描写に尋常でない力を入れても、平成ガメラシリーズが特撮ファンしか取り込めなかった違いはこういう所に起因するものなのです。
MCUフェーズ3の最大のクライマックスである『エンドゲーム』では、それまでトランプ大統領のような振る舞いばかりだったトニースタークが、愛に目覚め、かつてスティーブロジャースが北極海でやったのと同じように、自分の命を犠牲にすることで指パッチンで世界を救いました。やろうと思えばワンダの魔法や、キャプテンマーベルのパンチで殺せてた筈のサノスなのに、わざわざトニーが自己犠牲の精神で世界を救わなければいけなかった理由がここにあります。なぜなら仮想トランプに改心してもらう必要があったからです。
現実世界でも2020年の大統領選挙では大接戦の末にバイデンが勝利しました。奇しくもMCUで起きた通りに打倒トランプが実現した訳です。
しかしながら、この大統領選は何度も再集計が走ったり、郵便投票がザルだと疑惑が指摘されたり、トランプ支持の過激派が議会を武力占拠(←ここまでの過激派はごくごく一部の人達ですが)して死傷者が出てしまったりと、混迷を極めました。選挙で票操作不正の有無は「藪の中」ですが、少なくとも2大勢力が非常に拮抗していたことだけは事実です。
そして2021年のアフガン事変と、それを契機とした米軍のお粗末な撤退(大変な悪手だったとアメリカ民主党支持者からも批判されて、現在のバイデン支持率は悪かった時期のトランプよりも低い状態です)でアメリカはますます荒れています。
▼MCUはフェーズ4で何を描くのか:
常にアメリカ社会の空気を敏感に感じ取り、もともとファイギが用意していたグランドシナリオに、各作品のクリエイターが時事問題のエッセンスを加えていくことで、MCUはただのコミック映画に止まらない壮大な社会現象になったと思われます。
2021年になってようやく始まったフェーズ4以降で、今度はどんな世界を描いていくのか、今は想像もつきません。思い返せばフェーズ1では登場人物を順番に紹介していくのがメインだったので、おそらくフェーズ4もまずはそういう段階だと考えるのが妥当でしょう。私自身もフェーズ1ではスルーしてて、フェーズ3くらいから無視できなくなってリアルタイム勢に加わったので、今後怒涛の潮流を作ってくれることを期待します。
ちなみに私は現時点で『ブラックウィドウ』も『シャンチー』も『ワンダビジョン』も『ロキ』も『バキ翼』も未見です。ほとんど観てない。笑。予告編をみて唯一テンションが上がった『エターナルズ』だけ観てきたのですが、なかなか良かったので、数年後くらいに全体像が見えてきたら一気に後追いで補完しようかなと考えています。
エターナルズは総括すると「まずはいろんな食材を集めてきました!」という感じが強かったですね。これをどのように調理してどうやって煮込むのか。本当に面白くなってくるのは繋がり始めてからかなーという気がします。
了。
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