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【ジョーカー2】がラジー賞を獲った件
なかなか「不名誉」な受賞である。
最低映画を決める #ラジー賞 『#ジョーカー2』に最悪続編賞 作品賞は『マダム・ウェブ』#マダムウェブ #コッポラhttps://t.co/vmTAJMnJEC
— シネマトゥデイ (@cinematoday) March 1, 2025
まあでも、「より多くの観客の《期待》を裏切った映画」という観点では異議なしである。
私は昨年のベスト10に入れたけど、一応は客観視も出来てるつもりだ。
むしろ一度はたくさんの市民から好かれて、直後にその市民を裏切って大多数から嫌われるなんて、ジョーカーそのものじゃないか。素晴らしいよ。映画の枠を越えたアートだとさえ言える。
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なんというか、アメリカではラジー賞も一種の洒落(ジョーク)として実施してるのだが、日本の映画ファンはくそ真面目なので真に受ける人が多そうな気がして、そこだけ心配である。
実際に2022年4月に失語症を理由にブルースウィリスが引退した時には、ラジー賞は速やかに受賞取り消しの措置を取った。彼らは、あくまでジョークとして笑える範囲だからやっているのだ。
その年の“最低映画”を選出する第42回ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)が、ブルース・ウィリスの受賞を取り消すことをIndieWireが報じた。(中略)ウィリスが認知能力に影響を及ぼす失語症と診断されたことが明らかになった。ラジー賞の共同設立者であるジョン・J・B・ウィルソンとモー・マーフィーは、「もし誰かの病状が意思決定や演技の要因になっているのであれば、その人にラジー賞を与えるのは適切ではない」とコメントしている。
「本当に出来が悪い映画」じゃなくて、何かしらの理由で「観客を失望させた(怒らせた;炎上した)映画」を選ぶのがラジー賞だからね。
日本語訳は『最低映画賞』じゃなくて『炎上映画賞』と呼ぶべきだと思う。
ジョーカー2の場合は、撮影とか音楽とかめちゃ金をかけてて豪華だし、脚本と編集はすごく挑戦的だし、映画としては1年に数本あるくらいのハイクオリティで、アートとしては最高峰である。ただ、アメコミ映画を好む人達の多くが面白いと感じるポイントをあえて外す作りだったので、興行的には伸びなかったけどね。
あとは、弱者が弱者らしく死んでいく物語だったので、左翼的傾向のあるエンタメ業界の批評家からも厳しく評価されてしまったね。こういう事情まで見えてないと、ロッテントマトの数字は正しく読み解けないよ。
それが日本のウェブ記事では以下のように:
前作が世界中で大ヒットを記録し、ホアキン・フェニックスにオスカーをもたらしたことで期待された続編の『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』だったが、批評面でも興行面でもその期待を大きく下回る結果に。ラジー賞では最低作品賞をはじめ最多7部門でノミネートされ、2冠に輝く結果となった。この結果について、ラジーは「世界中の観客を失望させ(つまり怒らせ)た結果、ラジー受賞作となった」としている。
…とわずか1行にも満たない文章で、理由も書かないので、まあ普通の人達はそこに気づきにくいよね。
他の受賞者も確認しておこう。
第45回ゴールデンラズベリー賞の受賞結果は以下の通り。(編集部・入倉功一)
■最低作品賞
『マダム・ウェブ』
■最低主演男優賞
ジェリー・サインフェルド 『アンフロステッド:ポップタルトをめぐる物語』
■最低主演女優賞
ダコタ・ジョンソン 『マダム・ウェブ』
■最低助演男優賞
ジョン・ヴォイト 『メガロポリス(原題) / Megalopolis』『レーガン(原題)/ Reagan』
■最低助演女優賞
エイミー・シューマー 『アンフロステッド:ポップタルトをめぐる物語』
■最低監督賞
フランシス・フォード・コッポラ 『メガロポリス(原題) / Megalopolis』
■最低スクリーンコンボ賞
ホアキン・フェニックス&レディー・ガガ 『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』
■最低前日譚、リメイク・パクリ・続編賞
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』
■最低脚本賞
『マダム・ウェブ』
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■名誉挽回賞
パメラ・アンダーソン 『ザ・ラスト・ショーガール(原題) / The Last Showgirl』
ジェリー・サインフェルドの 『アンフロステッド:ポップタルトをめぐる物語』が日本のニュースでは話題にすらならないのが悲しいぜ。(苦笑)…私は結構面白く観たけどねえ。ここはサインフェルドの知名度の問題かな。アメリカではそれなりにバズりやすい名前だと思う。ラジー賞もやるからには話題になりたくて選んでる節はある筈なので。
『アンフロステッド:ポップタルトをめぐる物語』
— まいるず James Miles ⚒️ (@james_miles_jp) June 12, 2024
超有名番組『となりのサインフェルド』のジェリー・サインフェルドが監督脚本主演を務めた歴史コメディ映画。1960年代のケロッグ社とポスト社の朝食スナックの覇権をかけた戦いの史実をもとに大胆にコメディアレンジした異色作。古臭さが逆に新しい。 pic.twitter.com/4bcEnYMsNO
対照的に、日本でもよく話題になる『マダム・ウェブ』は、まあアレだよ、言葉を濁さず言うと、ダコタ・ジョンソンとシドニー・スウィーニーがおっぱいを封印したのが敗因だと思うよ。(笑)
ダコタジョンソンと言えば、そこはやっぱり『フィフティシェイズオブグレイ』の人である。
— まいるず James Miles ⚒️ (@james_miles_jp) February 22, 2024
であれば、彼女を起用しておきながらお色気シーンが無かったならば、それがある意味一番「男子の期待」を裏切ることになるのかも。
実は「米国で酷評の嵐」の原因の一つだったりして?(笑)#マダム・ウェブ pic.twitter.com/a4RyksPWZE
もちろん脚本もメチャクチャだったけど、そこは所詮アメコミ映画だからという言い訳で許してもらえるじゃん。でもジョンソンとスウィーニーを招集しておいて、あのエロスの無さはやっぱり悪手だったというか、それが他の要素がポンコツでも免罪符になるのに使わなかったわけだから。
別に直接乳房を出さなくても、なんとなくエロい雰囲気にすることは出来たはずで、それを一切放棄して挑んだわけだから、それは叩かれない「完璧な脚本」にしなきゃ厳しいよ。ただでさえスパイダーマンを出せなくて苦しいSSU(Sony's Spider-Man Universe)なのに。
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コッポラの『メガロポリス』は、まあコッポラが昔から『地獄の黙示録』や『ワン・フロム・ザ・ハート』などで、文字通り人生を賭けた大博打を繰り返してるから、それに対する愛のある弄りだよね。
『ワン・フロム・ザ・ハート』
— まいるず James Miles ⚒️ (@james_miles_jp) December 17, 2024
1982年公開。フランシスFコッポラ監督が自会社を倒産させた原因になったミュージカル映画。内容は倦怠期に入った男女がすれ違って喧嘩別れして本当の愛に気づいてそして最後は…という感じの王道ドラマだが、ラスベガス再現巨大セットなど画面から滲み出る狂気がすごい。 pic.twitter.com/KFJlqmkKb0
メガロポリス、気になるぜ。
たとえ『メガロポリス』が、一部の人が言うような「駄作」であったとしても、それはただ、現代の映画としてはわかりにくいだけなのかもしれない。最高のSF作品のほとんどは、ハチャメチャで、観る者の頭を混乱させる。例えば『ジュピター』がそうだ。『2001年宇宙の旅』だってものすごく変わっている。でも、名作だ。スペキュラティブフィクション(さまざまな点で現実世界と異なった世界を推測、追求している作品)は、未来を想像するためのジャンルとして存在する。1980年代に『メガロポリス』の執筆を始め、ワイン事業の売上から資金を調達したと言われているコッポラが、この作品に全力を注いだとすれば、それは一見の価値がある。無名の優れた新人監督によるオリジナル大作を観たいのは山々だが、Netfilxがザック・スナイダー監督の『REBEL MOON』に賭けたのなら、どこかがこの作品にも同じことをするべきだ。
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(了)
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