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まいるずエンタメを議論する

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すこし踏み込んだ話題を扱います。映画とあまり関係ない話題も此処に集めます。
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#映画解説

【石丸伸二】ガチ恋勢の『洗脳』は解けるのか

取材不足氏が公開した一本の対談動画がかなり面白かった。 タイトルのおふざけ感とは裏腹に対談の内容はマジメで、よく考察してみる価値があるから、ここで紹介したい。 ▼背景:取材不足YouTubeチャンネルでは最近、多数の対談動画が公開されている。 興味深いのは対談相手が石丸アンチから石丸支持者まで幅広いことだ。アンチ同士の会話はある意味で私と考えが似てる人同士の会話なので新しい発見は少なめだが、石丸支持者やいわゆる『石丸信者』と呼ばれる人達との対談では、信者による斜め上すぎ

『バットガール』中止の理由を人種差別/白人至上主義だと決めつける愚かさ

DCの新作映画『バットガール』の公開中止を論じた記事が注目を集めています。記事は少なくない映画ファンに支持されているようですが、内容には偏りがあり、これをそのまま鵜呑みにすると大きな誤解になる可能性があります。 はっきり言ってあの記事はガセネタレベルです。あの記事を読んで勘違いした人達がワーナーに失望したり攻撃したりするのを見るのは心地良いものではないので、このnoteでは当該記事の問題点を整理します。 なお、このnoteの目的は当該記事の構造的欠陥を指摘することであって

大怪獣のあとしまつを叩きまくる世論に対して思うこと(三木聡=デュシャン理論)

一言でまとめると「社会が寛容さを失っている」と思います。 あの映画を観て期待外れになった人がいるのは分かりますが それでも 「1900円と2時間を投じて結果がこれかよ」 という意見を見ると、 ハズレることも醍醐味である映画を楽しめないくらいに 余裕が無い人達がいるのだな、 とちょっと寂しい気持ちになります。 人間は知恵をつけることで、本能以外の「余裕」を手に入れて、 だからこそ高度な文明や文化を築いてこられた生き物です。 そのように余裕がなくなる人が増えるということは、

洋画を日本語字幕なしで観たい理由;フレンチ・ディスパッチの画家と看守の会話を例として

この記事は、掲題映画の「電気椅子で死にたいと懇願する画家を女性看守が説得(説教)する場面」を用いて、本作を字幕なしで視聴する効用について解説していきます。後半では補足として解説を綴ります。 途中で離脱してしまった人も、面白いと感じたら高評価やコメントを残していってくれると嬉しいです。笑。 = = = ▼事例:画家と看守の会話を用いたケーススタディ:ある日、スランプに陥った画家は自殺を図るも自分では死ねず、刑務所の電気椅子に自ら座って、後から処刑室に来た看守にスイッチを押

ヒーロー映画に3時間は長すぎるか?(映画は90分がベスト説について)

私が好きな映画には長尺な作品もありますが、一般論としては「映画は長ければ良いってもんじゃない」と私は考えています。その理由を書き出してみました。 ▼上映時間が最も長いアメコミ映画は?:『ザ・バットマン』の上映時間が2時間55分だと告知されてTwitterが湧いています。Culture Craveによるとスーパーヒーロー映画で最も長い5作品は以下のようになり、ザ・バットマンは3位に食い込むそうです。 この順位には異論がありまして、私が敬愛するスナイダーの作品は劇場公開後に拡

ファンが無意識にマトリックス・レザレクションズを嫌ってしまう最大の理由

多くの人が「なぜ 気づかない」状態になっている本作の「弱点」について語ります。 ▼正直度100%で語ります:2021年夏に突如告知され、12月に公開された『レザレクションズ』は、直前までの盛り上がりとは裏腹に賛否両論、というか微妙に否定派の意見が多そうな作品です。 観客それぞれが自分の価値基準を持っています。そして、どんな映画にも良い点と悪い点はあるもので、本作も例外ではありません。よって不満点が出るのは理解できることです。 低評価の声を見ていくと「つまらなかった理由」

残された時間をどんな人生にしたいか(RestoreTheSnyderVerseの是非について)

鯔のつまり、人生の残り時間というのを考えると、闇雲にスナイダーヴァースの再興だけを求めるのも違うのかなという気がしてきてしまうのです。 ▼年齢とクリエイティビティ:ザック・スナイダーは2021年3月で55歳になりました。 一般的に日本での定年退職は65歳が通例だと思いますが、フィルムメイカーを生業としている人達は気力や体力がどのくらいまで持つものなのでしょうか。もちろん70歳を超えてもなお精力的に活動を続けるモンスターもいますが、彼らとて30年前と比べれば仕事のペースが落

なぜノーランはストリーミングに優しくないのか(ザック・スナイダーとのIMAXの使い方の違い)

クリストファー・ノーラン監督はあんなにIMAX上映にこだわるのに、ブルーレイやデジタル配信では上下が切れても気にしない理由を考察してみます。 本noteは、先日のアメイジングスパイダーマンの記事で画面比率に言及したのですが、そこには書ききれない内容があったのでテーマを絞って追記したエクステンデッドカットです。笑 ▼いま見るとスパイダーマンの画面は狭い:よく指摘されることですが、MCU版のスパイダーマンでスイングシーンが少なめなのに対して、アメイジング版では1&2共にニュー

日本のポスターが変更されたのはオリンピックのせい?(ワイルド・スピード/ジェットブレイク)

タイトルの通りなのだが、まずは日本版と国際版のポスターを見比べてほしい。 どちらが日本版なのかはタイトルロゴを見ればわかっていただけると思う。 日本版は主人公サイドの7名なのに対して、インターナショナル版は悪役サイドの2名を追加して9名になっているのだ。マーベルのヒーロー映画のポスターでは悪の親玉が一番大きく描かれることがお約束になっているが、インターナショナル版では主人公のドミニクが誰よりも大きくどっしりと仁王立ちしているのが印象的である。完全にサノスのポジションである

なぜタイトルが『100日間生きたワニ』に変えられたのか真摯に誠実に考えてみた感想

映画館まで観に行きました! 以下の文章ではネタバレを含むのでご注意ください。 ・・・ ▼率直な感想:普通に、良い作品でした。 まあ「日本アニメ映画史上最高の大名作!」ではないです。笑 でも大事なことなので2回書きますね。 100ワニの映画は、良い作品でした。 前半はワニくんが死ぬまでの100日間、後半はワニくんが死んでからの映画オリジナルの物語なのですが、たぶんそこそこ映画に詳しい方なら、こう書くともう「あ、上田監督のお得意なパターンで、前半じっくりかけて仕込ん