音鳴文庫に選書をしてもらった① 『プリズン・ブック・クラブ』
島根県の西側の山のほう。吉賀町・柿木村。わたしはなんでかここに、通っている。強力な磁石でもあるのかもしれない。
柿木村の高津川と呼ばれる清流のすぐ脇に「音鳴文庫」はある。
音鳴文庫とのはじめましては忘れてしまったが、店主・ヤギくんの選ぶ本と音楽を信頼している。そのときの気持ちを大事に包み込んで表してくれるから。
ずぼらで怠け者のわたしだが、音鳴文庫で買ってきた本は、わりとちゃんと読む。
これまで知らなかった世界を教えてくれるから。
本という世界の愉快さや不思議さを見せてくれたヤギくん。彼が勧めてくれて面白かった本のレビューを、勝手にやっていこうかと思っています。
ちなみに、ヤギくんの特技は水切り。水切りとは、小石を水平に投げて水面を石が跳ねるのをうれしがる、あれである。高津川で遊んでいたら、2メートル以上ある向こう岸に石が到達するほどの達人です。
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『プリズン・ブック・クラブ〜コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』
アン・ウォームズリー 著
向井和美 訳
紀伊國屋書店 刊
かなり分厚い本だった(400ページ超!)。表紙を見て「これください!」と叫んでいた。ヤギくんもこの本を仕入れたときに「これは欲しがりそうだなと思った」なんて言う。
カナダの刑務所で月に一度開かれる読書会を軸に、展開していくノンフィクション。ジャーナリストのアン・ウォームズリーの書きっぷりに魅せられる(ということは、向井和美の翻訳がいいのだ)。
アン・ウォームズリーが体験したこと、起こったこと、感じたこと、考えたこと、他の誰かの発言、動作、感情、ルール……ありとあらゆるものが入りまじりながら、記録としてわかりやすく書かれている。
起こったことを的確に書き進めていく技。これがジャーナリストの文章か……。
嫌いな本でも最後まで読むこと。
本の中に出てきた本を読むこと。
感想や自分の気持ちを書くこと。
刑務所での読書会を通じて、出てきたメンバーの気づきや行動(メンバーをとんでもない情熱をもって導く女性のアドバイスもあり)。
一筋縄ではいかないメンバーたちと一緒になって、次は何を読もう? という気にさせられる。海外のエッセイも読んでみたい。