騒音から救ってくれるもの
小さい頃から私は音に過剰な反応を示したらしい。
赤子の頃は外の犬の鳴き声で泣き出し、少し大きくなってからはちょっとした音で目が覚める。非常に育て辛い子供だったと母親から聴かされた。
そんなのはそちらの都合で、音に苦しめられた本人からすると「辛いのはこっちだ」という話だ。
矛盾していると言われるかもしれないが、私は音楽が大好きだ。中でも長いこと好んでいるのは、騒がしい音の代表格とも言える「ヘヴィメタル」である。
学生時代に年賀葉書の仕分けバイトで知り合った子から渡されたカセットテープ(!)が、私のメタル好きの原点とも言える。『ファイヤー・アンド・アイス』のクソださジャケットに心惹かれなかったら、ドツボにハマることは無かっただろうけどね!
激しい音楽を聴いている間は、騒音から逃れることができる。
デカブツにはデカブツをぶつければ良いという、あまりにも単純な原理。好きな音なら許容出来てしまうあたり、人間とは実に都合の良い生き物だなあと感心してしまう。
それでも逃れられない騒音が有り、時々私を苦しめるのだ。
機械を使った工事音。街の中の雑踏に響く声。降りしきる雨が屋根を打つ音。全く興味のないジャンルの音楽。
一番困るのは周囲が静寂なのにキーンと響く耳鳴り。これは気にすればするほど酷くなっていく。
耳鳴りは逃れるのは難しいので、音楽という雑音をぶつけて誤魔化すしかない。それ以外の時に愛用しているのが、キングジムから売り出されている「デジタル耳栓」である。
私が持っているのは旧型で少し取り回しが宜しくないのたけど、現在はこちらのシュッとしたタイプがあるのでそろそろ購入しようかなと思っている。
私より酷い症状を抱えている従姉妹には、耳鳴りまで防ぐことはできなかったようで流石に万全ではない。障害を持っている人に向けて作られたわけではないから、仕方ないといえば仕方ない。
長々と書いてしまったが、要するに私は「聴覚過敏」の傾向が有るのだろう。
医師に相談したこともあるが、抱えている持病が原因なのか生来の体質なのかこの歳となっては判断が難しいとの事だ。まあ、仕方ない。
外の工事の音が止んだようだ。
私は耳栓を外してむず痒くなった耳を掻く。これが嫌であまり使いたくないのだけれど、背に腹は代えられない。
ああ、早く工事が終わりますように。
体力が残っていればお出かけしてしまうんだけどなあ。