健康にまつわるパラドックス
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映画「ペコロスの母に会いに行く」(主演 岩松了 赤木春恵)
最後は不覚にも泣いてしまいました。しかし、観終わって暫く経つと、はて、こういう話で良かったのだろうか、と思えてきました。単純なくせに偏屈なのです。
もちろん、ボケたからといって、その人の歩んだ人生が否定されるものではないし、周りも必要以上に悲観することもありません。この映画が描く通りそれは確かなのですが、だからと言って何も改善されることがないのも事実なのです。退行は確実に進んでいきます。
私事で恐縮ですが、サラリーマン生活を辞め独立して以来、健康診断を毎年正月の休み明け1月4日に受けていました。しかし、今年は未だ申込みすらしていません。去年受けたときに何だか妙なパラドックスに陥ってしまったからです。いや、診断結果はいたって健康とのことでした。フツーなら有難いことだと喜ぶべきです。しかし、私はこれって本当に良いことなのかと思えてしまったのです。
というのは、このまま身体が健康でいるということは、脳の方が先に侵される可能性が高いということです。私の母は九〇近くまで生きましたが、パーキンソン病でした。それ以外はどこも悪くないという健康体だったのに、悲惨な晩年を送りました。自分もああなるのだろうか。それだけは嫌だ。ああなる前に身体のどこかが悪くなって死ぬ方がましだ――などと思ってしまいます。
もちろん、生きているうちは健康でいたい。しかし、健康であることが悲惨な終末期を迎える――なんというパラドックスでしょうか。
画像引用元 映画.com