日本橋牡丹堂菓子ばなし7「かなたの雲」
みなさんご機嫌よう。もーやんです。
お久しぶりの読書感想文です。本日は中島久枝さんの『日本橋牡丹堂 菓子ばなし』シリーズの第7巻、『かなたの雲』について。
※ネタばれ注意報(*'▽')!※
○神回
はい。シリーズ中Most心揺さぶられる神回でした。
【主なあらすじ】
日本橋に来て3年が経ち、牡丹堂のメンバーとして成長した小萩。みんなの計らいにより、牡丹堂のサービスの1つとして、お客様の注文に合わせてお菓子を考える『小萩庵』という看板を持つことに。
責任感、やる気と先のワクワクに満ちあふれますが、親友たちがライフイベントを着々とこなす中で、女性として葛藤も。小萩ももう19歳。結婚して子供を育てるレールから外れたとしても、江戸で自立することを決意し物語は始まります。
悩みは尽きませんが、小萩庵は大忙し。小萩のアイデアを元に、牡丹堂のみんなと力を合わせて、お客様のためにお菓子を生み出していきます。
そんな中、秘かに想いを寄せる伊佐との関係に大きな変化が!
なんと、因縁の伊佐の母親が再登場するのです。
幼い伊佐を捨て、数十年経ってから金の無心に現れ、息子の人生を滅茶苦茶にしようとした母。前回は牡丹堂のみんなで伊佐を助けましたが、今度は長年の荒んだ生活から重い病気にかかった母親を、伊佐がみんなに内緒で看病していたのです。大事な書物を質屋に出して換金し、母親の痛み止めを買ったり、夜通し看病に行ったり。。。
みんなの助けを拒み、「俺の母親だ。俺が1人で何とかする」と小萩も突っぱねる伊佐。
「母親だ。面倒見るのは当たり前だろ」と理解を示す周囲とも、小萩は相容れません。あのお母さんが、伊佐さんを不幸にしてるのでは。過去に、母親からお腹を蹴られた小萩。あの痛みが忘れられないのです。
好きな人を助けたい小萩。でも、母親を許せない小萩。伊佐だけではなく、小萩自身も大きく心を曇らせます。
果たして、2人の関係はどうなるのか。
小萩庵は、無事お客様の無理難題を叶えられるのか。
目が離せない第7巻なのです(・ω・)ノ
○伊佐の母
伊佐は、頑なです。1人で全部背負う伊佐を、小萩も私も理解できません。でも、牡丹堂のみんなは伊佐の想いを受け、見守りつつ好きにさせています。
「お母さんはいい人だね。だって、伊佐さんのお母さんなんだから」と、新入りの清吉の言葉に、小萩はハッとします。
母親だって、普通の娘時代を過ごし、道が違えば、普通のお母さんだったのでは。彼女が投げ込まれた環境が、普通の娘だった彼女を変えてしまったのでは。
やるせない。母親も伊佐と同じように、1人で背負う性なのですね。まったくお馬鹿さん!人に助けを求めるのも能力の1つなのかしら、なんて考えてしまいます。
○おかみさんと旦那さんが見守る若者達
作中で隠居してから、ほんとに出番も減った大旦那さんとおかみさん。でも、要所でキュッと締めてくれます。
小萩のモヤモヤも、伊佐の想いも、すべて見越してそれぞれ見守っているのです。旦那さんが言った「伊佐も正念場だな」に小萩も一緒に私も???でした。でも、終盤でそれも明らかに。
伊佐も、自分と葛藤していたのです。自分を捨てた母親なのか、誰の話を信じるのか揺れ動き。堕ちた母の姿に恐怖を感じた自分を打ち消すように、献身的な看病をして尽くす。
「こう見えて幸せなんだ。自分は可哀想なやつじゃない」これは、小萩ではなく自分に言い聞かせてたのかもと感じました。
おかみさんも旦那さんも、牡丹堂のみんなを見守っています。お店から少し離れた分、みんなのことがよく見えるようになったのかも。良き理解者であり、牡丹堂の心なのです。
○食べたい!スイーツが盛りだくさん
杏仁が香る『卵を使わない卵菓子』が本当に気になる(* >ω<)!
今作のスイーツは、過去イチのオリジナリティを誇ります。
コーヒーに合う和菓子とか、興奮しました。江戸時代の人も、コーヒー飲んだのね。そりゃあ長崎もあるし、世界は繋がってるものね。と、ロマンを感じました。。。うっとり
柿の中から黄身餡がとろっとするのも美味しそう~(*ノ´□`)ノ!
○何が心に刺さるのか?
やっとまとめ。今回長いわね。笑
シリーズを通して、『人生とは?幸せとは?仕事とは?』といった、人の芯に迫る生身の問題が、どんどん迫ります。
問題にぶつかり、傷付きながら、もがきながら答えを模索する。自分と折り合いをつけ、決意し、進んでいく。
何時代でも関係ない『人間としての話』が、穏やかに、優しく、人肌のぬくもりを私に感じさせてくれます。
人に『綺麗な部分しか見せない』今の時代に生きる私だからこそ、情けなさとかカッコ悪いところとか、駄目なところを直視する内容が刺さります。
食を通して人を幸せにする。そんな話が大好物で、ぷらす人間模様も面白い。
おすすめです。