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『小鳥、さえずる』を読みました。
「クジラと蛇口」という名で写真と短歌のユニットを組ませていただいています。そのユニットで短歌を担当してくれている藤田美香さんの折本が発行されたので、読ませていただきました。
その中から、好きな歌をいくつか挙げたいと思います。
磯部揚げふたつレンジの中にあり
子の弁当の隙間をおもう
ああやっちゃった感。「おもう」と平仮名なのが好き。
弁当の隙間だけじゃないよね、慮っているのはきっと。
平日に神社に参ること増えて
おはよう神様あなたも良い日を
神様のことも気遣う視点が好き。
絶対的存在だって、疲れることも悩むこともあるかもしれないよね。いやきっとあるよね。
怪物に追いかけられる夢をみた
ハエも私が怖いだろう 叩く
上の句と下の句のつながりがすき。さらに下の句の展開が好き。
今回の連作の中で、おそらくいちばん好き。
地下鉄の窓に並んだ無表情
マスクの下でちょっと歯を出す
スマホを見ている人しかいないであろう地下鉄で、他の乗客に目を向けてるところが好き。マスク社会になって長くなってしまった。そうじゃなくてもアレルギー持ちの私はマスクしていたけれど、ほとんど。
「歯を出す」というのがいい。「歯を見せる」というのは、笑うということだもの。私だったら、きっと舌を出す。でもそれでは字余りだし、その状況を打破するどころか悪化させるだけ。
その角を曲がった空に
腕のいい獏がいるって聞いたんだけど
獏ね。私は夢より食べてほしい現実がある。現実を食べるのが好きなちょっと変わった嗜好の獏、どこかにいないかな。悪い現実はおいしくないか。
何もかもツイートするのはやめなさい
子に怒られてミュートもされた
そのままなのだけれど、笑える。ちゃんと歌になっているところがまた。
ふつうは親が言うセリフを子が言ってるの、美香さんのツイートをいつも読んでいる人からすれば普通だけど(!)、よく考えたら上の句からの下の句、意外性を含んでいるのよね。笑える。(2回書きました。)
アイスノンは氷に非ず
だんだんと温まっていく気持ち悪さよ
これもかなり好き。
事実を書いているだけなのになにこの不穏さ。アイスノンを使うときは非常時。そして温まったあれ、怖い。それだけの熱を吸い取ったのか、とか思う、私は。つまりそれは熱が高かったということで。それを実感させられてしまう不気味さがよく表現されていると思って、ぞわっとしたので好き。
この連作ができるきっかけとなったことをどこかに書かれていたと思ったのですが、noteではなかったようです。私としたことが遡って探せませんでした。
美香さんだと思って、いつも以上に好き勝手書かせていただきました。
『小鳥、さえずる』未読の方は、ぜひお読みになってください。
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