クジラが先か蛇口が先か 187【迎】
【迎】
一週間干したまんまのバスタオルありがとずっと迎えてくれて/藤田美香
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ごく近い駅に迎えに行った日々 その必要がなくなった日々/蛇口ひろこ
※美香さん、次は「日々」でお願いします。
■ 今回の美香さんの歌
今回もいいなぁ。干しっぱなしをこんな詩的に表現できるなんて!
ほめてるよ、ほめてるからね(笑)!飛んで行ってないってことよね、これはつまり。干した布団を飛ばした私が言います。と書いて思ったけど、ほかの誰もしまってくれない状態だよね(苦笑)同居している人がいる場合。誰と暮らしていてもひとりで暮らしていても、切ない。迎えてくれるのがバスタオルだけのように読める表現も、とても心の奥がぎゅっとなるのにユーモアがあって、ほんと美香さんの歌好きです。
帰ってくるたびに干してあることを確認するならしまおうよ…というツッコミも一応書いておきます。でも玄関を開ける前に確認して、家に入ると忘れるよね。自分がしまってないのになくなっていた場合、飛んで行ったのか誰かがしまってくれたのか、無駄にドキドキするよね。しないか。誰かしまってくれた?!と期待して、え?って反応が返ってきた場合、どこかに飛んで行ったってことじゃんかーーもうその前に誰かしまってよーと思う、私なら自分のことは棚に上げて。
■ 前回の私の歌
毎回丁寧な感想もありがとう。すごくいい読みしてくれて嬉しかったです。バスタオルが翼っぽいと思ったんだけど、バスタオルこそ何回もバサバサしないな、と思ったのと、翼っぽすぎるな、と思ったのとでタオルになりました。最初シャツのイメージだったんだけど、そこから広がらなかった。やけくそ的な意味合いからの「飛べる気がする」よ。やけくそ的というか要するになんらかの不満は持ってる状態での、いつかこの状況から脱出したい、してやる、的な。上昇志向でもいいけど。好きって言ってくれて嬉しかったです。
■ 前回の美香さんの歌
「わたし」の説明、ゾクッとした。なにがいいのか説明できなかった!私!
そっかああああ。めちゃくちゃスッキリした!ありがとう。
ところで頭の中の誰かがささやく話。某歌人さんの頭の中には某歌人さんがいるそうよ。この話を聞いたとき、美香さんもいたような。
■ 改作案についてについて
後半私が表に出せなかったことを書いてくれてた。評判になった短歌で疑問符が頭に浮かぶことがあって、たぶん同じ感覚なんだろうと思う。でもそういう歌を詠めるということもまた才能なんだとは思う。私に合う合わないは別として。
また話が広がっちゃうけど、これ(読み手に響くように言葉を組み立てる、というような話)、詩の世界で谷川俊太郎さんがおっしゃっていたのだけれど、谷川俊太郎さんだと尊敬できるのはなんだろう。最初から、他にできることがなくて詩で食べていくしかなかった、と明言されているからかもしれない。美香さんが好きじゃなかったらごめんね。話にあまり出てこないってことはあまり好きじゃないんだろうな、と思ってる。亡くなった直後のいまは特に言いづらいと思うので、これに関しての返事はしなくていいです。
美香さんの短歌観、すごくすごく好き!めちゃくちゃ響いてるよ、読者に。嘘のない美香さんだけの感情を、万人に響くような、でも誰も思いつかない言葉の選び方をして短歌にすることができているからすごいと思う。
■ 私信
まっすぐ家に帰ってください。
【181.線→182.イヤホン→183.片→184.集→185.バサバサ→186.タオル→187.迎→188.日々】