【終活110番025】家族介護は絶対するな ~「様子を見よう」が地獄の一丁目~
親の介護は絶対にしてはなりません。親も子も、ともに不幸になります。そんなリスクを回避するために、私たちは有無を言わさず、介護保険料を天引きされているのですからね。
家族介護を全面否定する理由は、ズバリ、親子愛の崩壊です。介護は長いです。10年越えだってあり得ます。来る日も来る日も親の介護にかかわっていると、いつしか実の親を憎むようになってしまいます。排泄や認知症が絡んできたら親子殺人だってあるかもしれない。
で、結果的に親の介護が終わってからも、子どもの胸の内には、親に対するネガティブな記憶ばかりが残ってしまいます。これは、親子双方にとって哀しくてやるせないことです。
親の介護問題が生じた時、半数以上の人が、「できるところまで自分でやってみよう。自分を産んで育ててくれた親なんだから…」。そう考えます。
でも、これが間違いです。
とにかく、介護は長引きます。
しかも、どんどん状況は悪くなります。
残念ですが、よくはなりません。
やがて、かけがえのない自分の親を怨むようになります。
そんな自分のことを、ひどい人間だと思って責めるようになります。
でも、それはちがいます。
長い長い人類の歴史の中で、私たちの遺伝子には、年老いた親を子が介護するというプログラムが記録されていないのです。現代の日本に生きている私たちだけが遭遇した未経験の領域の話なのです。だからネガティブな感情が芽生えて当然なのです。自分を非難するのはやめましょう。
40代から50代の人たちは、ちょっと考えてみてください。
あなたは、自分が年老いた時、わが子に介護をしてもらいたいですか?
おそらく、ほとんどの人がノーと答えるはずです。自分の老後のことで、可愛い子どもたちに面倒をかけたり、人生を損なってほしくないと思うはずです。それは、あなたの親御さんだって一緒のはずです。
だから、遠慮なく、施設に入れたり、介護専門の人に任せたりすればいいのです。自分のことを親不孝だなんて卑下する必要は一切ありません。
無理をして親の介護に携わってしまった人は、親が死んでからも親に対するネガティブな感情に縛られます。そんなの、いやじゃないですか。親のほうだって浮かばれませんよね。
だから、家族介護はしないほうが絶対にいいのです。
介護のプロに任せたり、施設に入れたりすることで、たまに見舞いに行った時に、やさしい気持ちで親に接することができるのです。たまに会うから、お互いに幸せを感じることができるのです。相手を愛おしく思えるのです。
哀しい現実をお話ししておきます。
歳をとるというのは、喪失のプロセスです。
いろいろなものをなくしていく…。
それが老化というものです。
一方で、さいごまで残るもの。
それが、自尊心と自我です。
だから年寄りは気むずかしくなります。
頑固になります。
子どもの言うことを聞かなくなります。
介護が必要になったら、さらに拍車がかかります。
認知症になったら、もう昔のやさしかった親ではありません。
人格的に、別人なのです。
だから、いくらあなたがやさしく接しようと思っても、それは不毛なことです。
なので、悪いことは言いません。
親の介護はしないことです。
ちゅうちょすることなく、家族介護の選択肢は、はじめから外すことです。
親だって、わが子に面倒を見てもらいたくはなかったはずです。
子どもであるあなたがすべきことは、介護ではありません。
親のこころに寄り添ってあげることです。
たまに見舞いに行って、ただそばにいてあげることです。
親の話に、ただ頷いてあげることです。
ただそっと手に手を添えてあげることです。
それ以上のことは必要ありません。
それですべてがうまくいきます。
そうすれば、親が旅立った後も、きれいな思い出だけが残るでしょう。
いわゆる老老地獄を回避するためにも、親の介護からは、きっぱりと手を引いてください。