あなたが上司でいられる理由 ~月給は部下のガマン料~

ところで、上司というのは偉い人なのでしょうか? 選ばれし者なのでしょうか? 部下に対して権力を振りかざすに値する人物なのでしょうか?

勘違いしてほしくないのは、なぜ、あなたが今、上司面をしてのうのうとふんぞり返っていられるのかということです。答えは、部下がいるからです。部下があってこその上司だということ。生徒が居なければ教師は教師たりえないし、患者がいなければ医者は医者たりえないということです。これをしっかりと認識していれば、縁あって自分の配下となった部下たちに、そんなに無責任で失礼な言動はできないはずです。

でも、これがなかなか難しいのです。今の50代・60代の上司は、かつて軍隊教育の時代を生き抜いてきた人がほとんどなので、自分がされたように部下と接してしまうという愚を犯しがちなのです。不易流行。ここは当時の良い点はそのまま残しつつ、時代の変化には対応していく柔軟さを体現していかねばなりません。

「理屈ではわかっているんだがなあ。いざとなると、なかなか言動に移せないんだよなあ」。管理職研修では、そうおっしゃる上司が溢れています。もしもあなたが旧態依然型の上司であったとしても、今すぐどうこうなるものでもないでしょう。しかし、そのまま放置すれば、そんな「黙ってオレについてこい」型の上司は、やがて裸の王様となる日も近いでしょう。いや、もうすでになっているかもしれません。

部下は自分を評価する立場にあるあなたに、決してネガティブなコメントは吐きません。むしろ、常に機嫌を取ってくるような部下だっているでしょう。しかし、あなたが旧態依然型の上司であったとしたら、彼らの心はすでにあなたから離れてしまっているはずです。まちがいありません。曲がりなりにも、いま部下に好き勝手をしていられるのは、たまたまあなたが上司だからです。あなたが異動したり退職したりしたら、いまの部下たちは決してあなたのもとへ寄り添ってくることは金輪際ないでしょう。つまり、部下の命運(評価)があなたの手中にあるから、我慢してあなたの身勝手に耐えているだけのことなのです。その対価が給料だと思っている部下たちもかなりの割合で存在するのです。

中国の古い言葉に、「上は3年で下を知る、下は3日で上を知る」というのがあります。これは、上司が部下を見抜くには3年もの月日を要するが、部下はわずか3日もあれば上司の本性を見抜いてしまう、という意味です。部下というのは、あなたの前では決して本音を語らない、本性を見せない。だからあなたは部下の表層しかわからない。心の中まで見抜くことは非常にむずかしい。つまり、批評価者である部下たちは、評価者である上司の前では常に仮面をまとっているということです。

一方の部下たちは、上司であるあなたがいかにもっともらしいことを言おうと、それがあなたの本当の姿かどうか、言行一致しているかどうかを敏感に察知してしまう。上辺だけをもっともらしく繕っても底は丸見えですよ、ということです。私自身、身につまされるような言葉です。上司は演技力でも部下たちを上回らなければなりません。

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