【老親リスクを回避せよ17】きみ、ためらうことなかれ

親が変だと思ったら、ちゅうちょせずSOSを発信してください。それが親子双方のためです。私どもに寄せられる相談ケースを見ても、とにかくご家族の初動が遅い。本人のみならず、ご自身やご家族のためにも、初動を早くしてほしいと思っています。はじめの一歩を早く踏み出せば、それだけ早くみんなが苦しい思いから救われるのです。これはもうお願いです。少しでも「あれっ?」と感じたら、いっさいのためらいを捨ててSOSを発信してください。

では、誰に対してSOSを発信したらいいのか?

ズバリ、社会福祉士という国家資格者を筆頭にあげておきます。
 
みなさんの地域で、社会福祉士は一体どこらへんに生息しているかというと、自治体や社会福祉協議会に多く在籍していることはご存知かもしれません。

ただ、公職についている社会福祉士の場合は、話は聴いてくれますが、実際に動いてはくれません。彼らは他者の職域を侵してはならないからです。たまぁに個人的善意で動いてくれる社会福祉士もいますが、そういう人は、大尾にして組織の中では中途半端なアウトロー的存在なので、ある所までいったら突然はしごを外されてしまうリスクがあります。

病院勤務の社会福祉士も一定数居るのですが、彼らの守備範囲は、自分の病院の患者さんに限定されるので、みなさんがそこに入院でもしない限り、動いてもらうことはできないでしょう。

となると、おすすめは、自分で開業している社会福祉士です。業界では、独立型社会福祉士と呼ばれている人たちです。みなさんがお住まいの地域に独立型社会福祉士がいるかどうかは、インターネットで調べればすぐにわかりますよ。

社会福祉士という国家資格は、社会的に弱い立場の人たち向けの相談業務のプロフェッショナルです。

例えば、相談テーマに強い弁護士を探し知恵を授かったうえで、当事者の意思を確認し、資産分配において家族争議が起きぬよう、必要手続きの一切をだいこうとてくれたりします。
 
例えば、実家不動産を処分したい相談者に対して、複数の中古物件専門の大手不動産会社に買取査定をしてもらい、もっとも好条件だった会社との間で、すべての手続きを代行してくれたりもします。
 
例えば、一切合財で20万円以内に収まるよう、希望地域の葬儀社と個別交渉し、段取りしてくれたりもします。

これらはほんの一例ですが、シニアの課題であれば、ひと通りあらゆる相談に対応してくれますし、実際に同行・代行までしてくれるので、弁護士や医師や公務員と比べたら、はるかに使い勝手がいいはずです。しかも安いっ!
 
社会福祉士の他には、さらに融通を利かせた民間の認定資格・百寿コンシェルジュというのも心強い味方です。24時間365日対応の電話相談、カウンセリング、病医院とのあらゆる折衝、転院先の確保、終のすみか探し、介護事業者との契約立会い、役所や金融機関での諸手続きの立会い…。

加えて、遺言状作成、相続手続き、土地家屋の転売、葬儀社探しといった、エンディングを迎えるまでに遭遇するであろう、あらゆることに対応できるのです。

ある意味、百寿コンシェルジュは、生命保険の医療介護特約や互助会の積み立てよりも、はるかに安心で実際的なサポートです。
 
シニアが本当に求めているのは、何か問題や心配が生じたときに、いつでも・なんでも・気軽に相談できる総合窓口です。自治体や医療機関や金融機関の窓口というのは、一定の時間内(通常は、平日の日中時間帯のみ)に、ある一部の問題にしか対応してくれません。

しかし、シニアが抱えている問題というのは、大概は夜間や休日に起こりがちですし、その中身にしても、「老人は病気の百貨店」というのと同様に、いろいろな要素が交錯している場合がほとんどです。そのひとつひとつに対処するために、あちらこちらの窓口を回って個別に折衝するというのは相当なストレスなのです。

さらに、たまたま出会った相手が杓子定規だったり、コミュニケーションが稚拙だったりすると、そこであきらめてしまう。「まあ、いいか」と問題を先送りしてしまうことが多いのです。
 
子どもの携帯を鳴らしても、子どもたちだって忙しいです。だから、最初のうちはいいけれども、電話が頻繁になってくると「いいかげんにしてくれよ」となる。

で、親子関係が変になっていくわけです。やむなく、がまんしながら、ごまかしながら時間を過ごし、あるとき、ついに緊急事態が発生します。どうしていいかわからずに、たまたま出くわした相手に一任し、すべてを委ねてしまう…。そして後で悔やむのです。こんなはずじゃなかったと。
 
実は、社会福祉士にしろ、百寿コンシェルジュにしろ、福祉のみならず、医学・法律・栄養学・社会学・統計学・心理学・介護実務…といった、実に多岐にわたる勉強をしなければなりません。その意味で、シニアが直面するであろうすべてのテーマについて、かなり広範囲にわたる知識や情報を持っているということができます。

また、その地域の社会資源、医療機関・介護事業所・各種施設・法律事務所・会計事務所・葬儀社・配食事業者・介護タクシー・リフォーム事業者。不動産会社等々。こういったあらゆるサービスの提供者とのコネクションを持っています。
 
百寿コンシェルジュは、さらにカウンセリングやコーチングを含めた、シニアとのコミュニケーション技法までを習得していますからグッドです。彼らのポテンシャルは絶大です。確保して、うまく活用しない手はありません。

欧米では、ソーシャルワーカーと称される専門職たちが前面に出てシニアの暮らしをサポートする光景をよく目にします。日本ではまだまだですが、早いうちから、できれば50歳になったら、親のため、あるいは、自分自身のために、社会福祉士や百寿コンシェルジュを探し出して接点を持っておくことをお勧めします。

ただ、社会福祉士について言えば、社会福祉士であれば誰でもいいというわけにはいきません。まあ、これは医者でも弁護士でも同じ話です。ひとりの人として、相性とか波長とかが合うかどうか。そこを見極めたうえで、つきあっていく社会福祉士を見つけるべきでしょう。


さて、認知症の問題は、いまや誰しもが通る可能性を持っています。まちがっても、自分には関係ないなどと高を括らないことです。私どもに相談をしてくださるのは大変うれしいかぎりですが、こと認知症の相談については……、

初動が遅い。初動が遅い。初動が遅いんです!
 
もしも、親がちょっとでも変だと思ったら、迷わず気軽にコンタクトしてみてください。これはもう、本当に迷わずに、お願いします。
 
そのはじめの一歩が、あなたの視界を遮っている暗雲に、ひとすじの光を投げかけてくれることだってあるんです。
 
私自身も、うちのスタッフも、そんなひとすじの光になりたいと思いながら仕事をしています。みなさんのお役に立てるとしたら、こんなにうれしいことはありません。

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