【登記関連】登記・供託に関する定番の実務書20選
登記に興味関心のある方、司法書士試験合格者及び司法書士有資格者向けに登記関連に関する定番の実務書を独断と偏見で20冊選定してみました。
どちらかといえば初心者?向けなので、より専門的な実務書については、別途記事を作成予定です(未定)。実体法の書籍については、冊数が多くなるため、除いています。
なお、本記事中意見にわたる部分は私の個人的見解を述べたものにすぎません。
第1 はじめに及び選定基準
1 はじめに
まず、なぜ登記に関する書籍の記事を書こうと思ったのか、といいますと、単純に不動産登記及び商業法人登記に関する実務書について、まとめサイト、書評やレビューがめちゃくちゃ少ないからです(司法書士の先生はみなさんお忙しい、そしてまとめるのは結構めんどくさい)。
そこで、「ないなら自分で紹介してしまおう。どうせ誰も見ないだろうし(笑)」と書いてみた次第です。司法書士の諸先輩方にとっては、真新しさもなく異論のある記事だと思いますが、何卒ご容赦いただければと思います。
独断と偏見とはいえ、書籍の選定基準については、次のとおり定めました。
2 選定基準
ア 発売中の本
入手できない本をおすすめされても困りますよね。
イ (自分の経験上)定評のある本
実務家の方が使用している本を選定しています。
ウ 基本書的な本
登記法の分野自体が専門的ですが一般的に多い登記申請に絞りました。
判決による登記や渉外登記はあえて除外しています。
エ 高価すぎない本
高価すぎ、巻数多すぎ…という本は除いています(書式シリーズ、書式精義、詳解商業登記など)。
オ 自分が所有又は使用してよかった本
主観的なものです。使用したことがない書籍については除いています。
第2 定番の実務書20選
1 実務書20選一覧(忙しい方はこちらをどうぞ!)
鈴木龍介『登記法入門―実務の道しるべ』(商事法務,2021)
山野目章夫『不動産登記法概論―登記先例のプロムナード』(有斐閣,2013)
日本法令不動産登記研究会『6訂版 わかりやすい不動産登記の申請手続』(日本法令,2023)
青山修『【補訂新版】 不動産登記申請MEMO 権利登記編』(新日本法規出版,2009)
幸良秋夫『全訂 設問解説 相続法と登記』(日本加除出版,2023)
青木登『元登記官からみた登記原因証明情報―文例と実務解説―』(新日本法規出版,2017)
青山修『改訂 登記名義人の住所氏名変更・更正登記の手引』(新日本法規出版,2009)
松井信憲『商業登記ハンドブック(第4版)』(商事法務,2021)
神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介『商業・法人登記500問』(テイハン,2023)
永渕圭一『3訂版 ケース別 株式会社・有限会社の役員変更登記の手続』(日本法令,2023)
神﨑満治郎『特例有限会社の登記Q&A(新訂版)』(テイハン,2023)
泉水悟『事例解説 合同会社の登記』(日本加除出版,2021)
金子登志雄・立花宏『商業登記実務から見た 合同会社の運営と理論(第2版)』(中央経済社,2021)
伊藤文秀『【新訂版】公益法人・一般法人の登記』( 全国公益法人協会,2022)
磯部慎吾『基礎からわかる供託【第2版】』(きんざい,2020)
登記研究編集室『【新訂】実務 供託法入門』(テイハン,2015)
鎌田薫・寺田逸郎・村松秀樹編著『新基本法コンメンタール 不動産登記法【第2版】』(日本評論社,2023)
神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介『論点解説 商業登記法コンメンタール』(きんざい,2017)
山本浩司ほか『司法書士 山本浩司のautoma system 必携オートマ先例集 不動産登記』(早稲田経営出版,2020)
山本浩司ほか『司法書士 山本浩司のautoma system 必携オートマ先例集 商業登記・供託』(早稲田経営出版,2020)
2 登記法概論
① 鈴木龍介『登記法入門―実務の道しるべ』(商事法務,2021)
商業登記分野で高名な鈴木龍介先生(日本司法書士連合会副会長)が著者です。本書は、不動産・商業登記に限らず、動産、後見登記についても概要があり、全体を俯瞰したくなったときにおすすめの1冊です。
以下は、商事法務HPからの引用です。
② 山野目章夫『不動産登記法概論―登記先例のプロムナード』(有斐閣,2013)
著者は、早稲田大学教授、令和3年民法・不動産登記法改正にかかる法制審議会民法・不動産登記法部会長でもある山野目先生です。
本書は、不動登記全体を見通すことができる1冊で、特にコラムが秀逸です。私もかれこれ4回購入しています(3冊後輩に贈呈)。
以下、有斐閣HPからの紹介文を引用。
3 不動産登記の実務書
① 日本法令不動産登記研究会『6訂版 わかりやすい不動産登記の申請手続』(日本法令,2023)
本書は、不動産登記申請について、網羅的に書かれた1冊で、はしがきにもあるとおり、法務局の若手職員向けに書かれた節があり、申請に関する根拠条文もしっかりと記載され、信頼できる1冊だと思います。
なお、監修は法務局職員OB(元統括登記官)の方です。
以下、日本法令HPから紹介文を引用。
② 青山修『【補訂新版】 不動産登記申請MEMO 権利登記編』(新日本法規出版,2009)
著者は数多くの書籍を執筆されている司法書士の青山修先生です。
本書は「MEMO」シリーズの権利登記編で、私も相当お世話になった1冊です。ほかにも表示登記、商業登記、利益相反、農地、抹消登記、仮登記などなど、私もかなりお世話になっています。ただし、本書で注意が必要なのは、2009年以降の法改正に対応していないことです。
なお、現在は電子書籍のみとなっています。
以下、新日本法規出版から紹介文を引用。
③ 幸良秋夫『全訂 設問解説 相続法と登記』(日本加除出版,2023)
本書は、相続登記について、網羅的に書かれた1冊で、相続登記の問題はこれ1冊で解決するのでは?と思うほどです。実際、私も疑問に思ってい立点について、本書を読んで解決したことがあります。
著者は、元公証人(元地方法務局長)の幸良秋夫先生です。
これは絶対に買うべき1冊です。
以下、日本加除出版HPから紹介文を引用。
④ 青木登『元登記官からみた登記原因証明情報―文例と実務解説―』(新日本法規出版,2017)
本書は、不動産登記の添付書面である「登記原因証明情報」について解説された1冊です。
著者は、標題どおり、元登記官の方です。
私の観測範囲では本書を使用する司法書士の先生は多いと思われます。
なお、本書は2017年発行ですので債権法改正(2020年4月1日施行)に対応していませんので注意を要します。
以下、新日本法規HPから紹介文を引用。
⑤ 青山修『改訂 登記名義人の住所氏名変更・更正登記の手引』(新日本法規出版,2009)
本書は、不動産登記における、いわゆる「名変」を解説した1冊です。
本書も著者は青山先生です。ニッチな分野の1冊ですがみんな持っているのではないでしょうか?シンプルに見える名変も奥が深く、司法書士の先生も悩むことがあるのではないでしょうか。そんな悩める司法書士の救世主となる1冊…かも。
以下、新日本法規出版HPから紹介文を引用。
4 商業・法人登記の実務書
① 松井信憲『商業登記ハンドブック(第4版)』(商事法務,2021)
本書は正しく商業登記のバイブル!商業登記の仕事をする上で本書を持っていないということがあるのでしょうか?と思います。通称『ハンドブック』。
著者は、裁判官出身で法務省民事局の松井先生です。
主に株式会社を中心とした商業登記全般を記した1冊です。
唯一の弱点は、持分会社、特例有限会社、外国会社の記載が弱いことでしょうか。
なお、本書は、はしがきにも書いてあるとおり、令和元年会社法改正のうち、株主総会資料の電子提供制度の創設や支店登記の廃止について対応していませんので、他日改訂が見込まれます。
以下、商事法務HPから紹介文を引用。
② 神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介『商業・法人登記500問』(テイハン,2023)
本書は、商業・法人登記において、悩むであろうポイントを網羅し、文字どおり、「痒い所に手が届く」おすすめの1冊です。著者は商業登記倶楽部で高名な神﨑(こうざき)先生、やはり商業登記で高名な金子先生、鈴木先生です。
以下、テイハンHPから紹介文を引用。
③ 永渕圭一『3訂版 ケース別 株式会社・有限会社の役員変更登記の手続』(日本法令,2023)
本書は、株式会社及び有限会社の役員変更登記について、特化した1冊で申請書や添付書類のひな形も掲載された「ミニ書式精義」ともいうべき1冊です。
また、本書は、巷間、その万能ぶりから「司法書士をダメにする本」とまで言われるほどだそうで…。
以下、日本法令HPから紹介文を引用。
④ 神﨑満治郎『特例有限会社の登記Q&A(新訂版)』(テイハン,2023)
本書は、特例有限会社の登記について、Q&A方式で詳説し、従前(旧商法)及び会社法改正時の取扱いも含めて、現行法に対応した1冊です。
私は旧商法時代のことについてわからないので、そんな時、この本にはかなり助けられています。
以下、テイハンHPから紹介文を引用。
⑤ 泉水悟『事例解説 合同会社の登記』(日本加除出版,2021)
本書は、合同会社の登記について、申請書及び添付書類の記載例も含めて解説した1冊です。
司法書士試験合格同期の方から教えていただきました。
なお、私が司法書士試験を受けた時に商業登記の記述式問題で合同会社が出題されました。今となってはいい思い出…。
以下、日本加除出版HPから紹介文を引用。
⑥ 金子登志雄・立花宏『商業登記実務から見た 合同会社の運営と理論(第2版)』(中央経済社,2021)
本書は、標題どおり、商業登記実務から見た合同会社の運営について解説された1冊です。
特筆すべきは、合同会社について、実務上よく問題となるにもかかわらず、他の文献に解説がない事項についても、金子先生が解説されている点にあり、類書がないということです。合同会社は、いまだ運用に不明な点も多く、個人的にかなりおすすめです。
以下、ビジネス専門書Оn-lineHPから紹介文を引用。
⑦ 伊藤文秀『【新訂版】公益法人・一般法人の登記』( 全国公益法人協会,2022)
本書は、公益法人・一般法人について、網羅的に解説された1冊です。
特に、公益・一般法人登記について類書が少ないという点で貴重な1冊だと思います。
以下、全国公益法人協会HPから紹介文を引用。
5 供託の実務書
① 磯部慎吾『基礎からわかる供託【第2版】』(きんざい,2020)
本書は、法務省民事局の方が一般的に多い供託類型について、網羅的に解説した1冊です。
司法書士業務においても、意外と供託が必要となる場面もあると思い、本記事において紹介いたします。
基本的な供託の理解に役立つ1冊で、私も折に触れて読み返しています。
以下、きんざいHPから紹介文を引用。
② 登記研究編集室『【新訂】実務 供託法入門』(テイハン,2015)
本書は、供託の実務について、「入門」と謳いながらも詳解した1冊です。 私が知る限り、供託実務の基本書といえば、現行ではこの1冊ではないでしょうか。
なお、債権法改正、近年の供託規則改正に対応していないので注意を要します。
6 登記法コンメンタール及び先例集
① 鎌田薫・寺田逸郎・村松秀樹編著『新基本法コンメンタール 不動産登記法【第2版】』(日本評論社,2023)
本書は不動産登記法のコンメンタール(逐条解説)です。
特筆すべきは、コンメンタールといえば、学者先生が執筆されていることがほとんどなのですが、本書については、そのほとんどが、裁判官、法務省職員、法務省及び地方法務局長OBなどの実務家で占められているところにあります。
以下、日本評論社HPから紹介文を引用。
② 神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介『論点解説 商業登記法コンメンタール』(きんざい,2017)
本書は、現行商業登記法の唯一のコンメンタールです。
以下、きんざいHPから紹介文を引用。
③ 山本浩司ほか『司法書士 山本浩司のautoma system 必携オートマ先例集 不動産登記』(早稲田経営出版,2020)
本書は、実務書というよりは司法書士試験向けの先例集ですが、その網羅性は類書がなく、発行年が新しいものです。
私も先例の早引きとして使用しています。
以下、早稲田経営出版HPから紹介文を引用。
④ 山本浩司ほか『司法書士 山本浩司のautoma system 必携オートマ先例集 商業登記・供託』(早稲田経営出版,2020)
以下、早稲田経営出版HPから紹介文を引用。
第3 番外(関連書編)
登記に関する関連書について、「登記」の実務書ではないですが、次のとおり、有用と思われる実務書○選をピックアップしてみました。個人的にはこちらもおすすめしたい!
1 戸籍、字体の書籍
① 小林直人ほか『相続実務に役立つ“戸籍"の読み方・調べ方【第三次改訂版】』(ビジネス教育出版社,2024)
相続登記は登記だけを理解していても戸籍が読めなければ意味がありません。本書は、そんなときにお助けしてくれる1冊です。
以下、Amazonから紹介文を引用。
② 小林勝彦『むずかしくないぞ!!誤字俗字・正字』(日本加除出版,2011)
登記においては、氏名について、「字」が同一なのか更正登記が必要なのかが問題となります。
本書は、そんなときに役立つ1冊です。通称「博士本」。
以下、日本加除出版HPから紹介文を引用。
2 令和3年改正民法・改正不登法の実務書
① 村松秀樹ほか『Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法』(きんざい,2022)
本書は、令和3年改正民法・不動産登記法・相続土地国庫帰属法について、立案担当者が解説した1冊です。通称『トウキツネ本』。トウキツネかわいい。
以下、きんざいHPから紹介文を引用。
② 荒井達也『Q&A 令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響』(日本加除出版,2021)
本書も①と同様に改正民法について解説された1冊です。個人的にはこちらの方がわかりやすかったです。
以下、日本加除出版HPから紹介文を引用。
3 その他
1 寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』(日本加除出版,2018)
本書は、土地の境界について、その理論と実務を解説した1冊です。
土地の境界について、本書は定番といってよいと思います。
著者は、検察官出身で法務局長、最高検察庁検事を歴任された寳金先生です。土地家屋調査士の方はお持ちだと思います。
不動産登記、権利登記に直接関係するものではありませんが、読んでおけば、土地家屋調査士の先生と土地の筆界について話すときにスムースかもしれません。
以下、日本加除出版HPから紹介文を引用。
2 書式精義
書式精義とは、次のとおりの書籍です。
ここでは、それぞれ紹介するに留めますが、現在はテイハンから登記研究編集室という著者名で発行されています。
① 不動産登記書式精義
本書は、前身となる書式精義が存在しますが、現在、新しい書式精義が発売されています。
なお、第2巻は発売されていません(2023年11月現在)。
以下、テイハンHPから紹介文を引用。
② 商業登記書式精義
以下、本書改訂新版について、紀伊國屋書店HPの紹介文を引用。
第4 おわりに(そんなに買えないよ!というあなたに)
いかがでしょうか。「20冊なんて買えないよ!」という声も聞こえてきそうです…。
そんなあなたは、とりあえず次の書籍を買っておけば間違いなし!とオススメしておきますね!
・相続法と登記
以上です。
今後、おすすめの書籍がありましたら私にも教えていただければ幸いです!
「おわりに」だけを読んだ方も全て読んでいただいた方もお読みいただきありがとうございました。