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8月15日に考える

8月15日、我が国では先の大戦の『終戦』の日である。相変わらずどの閣僚や政治家が参拝しただの、平和を考えると言う様な見出しで、まるで夏の季語の如く扱うマスメディアには辟易とする。

静かに各々が平和への祈りと鎮魂の祈りを捧げ、自らの頭で考えればよい事を、頭の悪いアホマスメディアにくだらぬ平和論など押し付けられる理由はない。
現在の我が国を取り巻く状況や世界を見渡し『平和を継続』する為に何が必要か?をしっかり考えなければならない。これは気持ちや気分、或いはリアリズムを排除したものではない。
実に合理的、数学的であるかから考えなければならない。ボケた感情論で語る様な愚かな話しではない。

ユルヴァル・ノア・ハラリと言うイスラエル人歴史学者は『21世紀の最初、20年ほどは人類史上で最も平和な時代であり、戦争の遂行は経済的にも地政学的にも最早殆ど理に敵わなくなった。だからと言って平和が完全に保証された訳ではない。何故なら人間の愚かさは歴史を動かす極めて重要な要因であり、合理的な指導者でさえ、甚だ愚かな事を頻繁にしでかすからだ』と述べている。

その上で、今般のロシアによるウクライナ侵攻について衝撃を受けたと発言している。
何故ならこの様な暴挙はロシアはおろか全人類にとっても途方もない害をもたらすからだ。
誇大妄想癖のあるロシアの独裁者であろうとも、自らの利益を考えれば合理的な判断が出来そうなものである。後述するが、今や戦争など前時代的な行為であるのは間違いないのだ。

先に述べたハラリの言葉通り、合理的な指導者であれ甚だ愚かな事をしでかす典型例であり21世紀の平和な時代と歴史を変えてしまう極めて重要な事態を招いているからだ。平和な時代に終止符を打ち、人類の存続すら危うくなる新時代の扉を誇大妄想癖の独裁者は開けてしまったのだ。

ラセット&オニールの平和の為の五要件と言う理論がある。

理論らしい理論のない国際関係論にあって今現在では究極的な理論として世界で扱われている。
リアリズムとリベラリズムを見事に融合させた理論で、これを超える理論は今の所見当たらない。

リアリズムとしての『有効な同盟関係』と『相対的な軍事力』。
リベラリズムとしての『民主主義の程度』『経済的依存度』『国際的組織への加入』である。
この五要件をどれだけ満たしているかで、平和をどれだけ維持出来るかが数学的に導き出す事が出来るのである。
有効な同盟関係を結ぶ事で40%、相対的な軍事力が増す事で36%、民主主義の程度が一定割合増す事で33%、経済的依存度が一定割合増す事で46%、国際組織への加入が一定割合増す事で24%、それぞれ戦争発生のリスクを減少させると計算される。

つまり戦争と言うものは『避けようもない自然災害』などではないと言う事である。
それは過去の歴史を見ても明らかである。つまりは戦争は人間自身の選択の結果である。
先の大戦以降、大国間での戦争もなければ国際的に認められた国家が他国に征服され壊滅する等と言う事例もない。
現在ロシアは1945年以降なかった事例を作ろうとしているし、またウクライナはそれに猛然と反発し、またそれを自由主義国は支えもしている。
悪しき前例を作らせてはならないからだ。

くだらぬ平和論を盾に『停戦しろ』とウクライナに迫るバカどもは時代遅れの侵略国家なるものを認めると言う事である。それが『平和』だと言うのだから無茶苦茶である。この世の言葉全てを並べても到底言い表すことが出来ない程の『バカ』である。
平和なら侵略も仕方ないと言う論理だ。

そんな事をすれば『侵略は得をする』と言う話しで、そうなれば我も我もと侵略し出す。
そんな覇権主義が衝突し世界が混沌としていたのが1945年以前の世界だ。

例えばこんなデータがある。
古代農耕時代には全人類の約15%が、戦により死亡していた。これは農耕定住生活をすれば食糧確保には広い土地が必要だからで、皆が土地を奪い合うからだ。弥生時代の日本でもそうであった事は事実である。
それが20世紀には戦争や犯罪と言った何らかの暴力を含め全人類の5%が死亡していた。
主に資源の奪い合いである。

それが21世紀には全人類の1%にまで激減している。
少し古くなるが2012年のデータで見ると人類全体の死亡者数は6500万人である。
内、紛争暴力による死者数は62万人だ。そしてそのうち戦争による死者数は12万人、残り50万人は犯罪による死者数である。
2019年に於いても、紛争による死者数は7万人、自殺者は70万人、交通事故は130万人、糖尿病による死者数はなんと150万人に上る。
今や砂糖が武器を上回って人類を殺しているのだ。

現在では戦争をしても殆ど得るものがないのだ。
ハラリはこう思考している。
例えば、中華人民共和国がアメリカのシリコンバレーを侵略したとして、そこには何らの資源もない。
あるのはAmazonやFacebookやGoogleがあるだけで、それら企業を侵略で獲得しても、何の得もないのである。むしろそれら企業と連携し経済活動をする方が金を稼ぐ事が出来る。

そう考えると今だに紛争が絶えない地域は、中東やアフリカと言った地域で発展途上国も多数あり資源に頼って生きている地域だ。
1998年、ルワンダがコンゴを侵略した。
それはレアメタルが狙いであった。レアメタルのコルター鉱山がコンゴにありこれを略奪する目的である。コルターはスマフォ等のバッテリー寿命を伸ばしたりする。レアメタルは世界的戦略物資でもある。これによりコンゴは年間2億ドルの収益を上げる事が出来たと言われている。
現在のレートで280億円である。たったその程度の収益だ。資源に頼るしかない国では、戦争するコストの方が安いと言う事である。
我が国の国家予算の4分の1を獲得する為に侵略をするのだ。

先述した様に今世紀に入り戦争や暴力で死亡する人類は1%以下である。
それは今や奪い合うのは『資源』ではなく『知識や技術』だからだ。
資源ならば侵略する事で獲得出来るが『知識や技術』は武力では奪えないからだ。
それが証拠に1945年以降、次の戦争を計画する大国等ありはしない。それ以前は物資を奪い合う為に戦争を政策として計画し、侵略の作戦を常に立ててきた。いまや物資を巡る戦争は一部の地域のみの特徴であり続ける程度の話しだ。戦後の経済大国は帝国主義の様な征服などなくても発展した。
現に敗戦国である日本、ドイツ、イタリアは領土を失い領地が縮小したが世界で有数の経済大国となっている。
中華人民共和国にして1979年以来、大きな戦争もせずに経済成長している。

にも関わらず、ロシアの誇大妄想癖独裁者は侵略に打って出たのである。ロシア兵達はウクライナの各都市で虐殺をし、ウクライナの人々が暮らす家々や施設からテレビやカーペットと言った日用品を略奪してコレをロシアにせっせと送っていたのだ。
当然こんな略奪した物資で誇大妄想癖の独裁者が始めた戦争の戦費が賄えるはずもなく、ロシア国民の失われていく財産の保証にもならない。
単なるプーチンの誇大妄想による『恐怖心』を幾ばくか宥める為の戦争であるのだから当然だ。
それは権力を保持し、その欲望を満たし、その欲望の実現を何者かが阻もうとしていると言う恐怖心である。

そしてウクライナ侵略から見える重大な問題は、経済やテクノロジーの変化だけでは平和を生み出すには不十分であると証明した事だ。
指導者の中には権力欲に駆られて、無責任に保身の為には自国経済に破綻をもたらしても是とする人間が存在し、全人類を核で破滅に向かわせる様な戦争を始めると言う事だ。

世に存在する世界中の言葉を使っても表現しきれないレベルの無茶苦茶平和論者の花畑理論は殆ど役に立たないと言う証明でもある。

先に示した平和の五要件を見ればわかるが、経済やテクノロジーによる平和の構築はリベラリズムの論理である。しかし今般のウクライナ侵略を見れば時にリベラリズムの論理は役に立たない事があると言う事だ。
そうなれば、リアリズムとしての『核抑止論』と言う物も我が国は考えておかねばならない。

そして『自由主義』としての世界的な秩序の構築が急務であろう。

我が国は、リアリズムとして有効な同盟関係を米国と築いているが、相対的な武力を保持しておらず米国の武力に依存している。
そして何より恐ろしいのは、武力とは組織や法律も含めていると言う事を忘れてはならない。
我が国は法も組織も実はないのである。

そもそも戦争と虐殺の区別がついていないので単純に『いざとなったら自衛隊』と思いこんでいる。
しかし自衛隊は法的に軍隊ではない。
戦争は軍隊と軍隊が戦うのであって、それは外交手段の一部でもある。我が国が経験した戦争末期の米国による大虐殺は戦争等ではない。
軍隊がしっかりと戦争をすれば、自国民は虐殺に会うリスクが低くなるのだ。

リベラリズムとしての国際組織への参加は現在ならば国連だが、誇大妄想癖の独裁者が2カ国も常任理事国に入っている。つまり国連では自由主義国の平和秩序など全く保てようはずはない。
国連が全く必要がないと言う話しではないが、機能不全を起こしているのが現実だ。

いくら平和を継続しようと努力したところで『人間の愚かさ』を過小評価する様では平和など継続する事は不可能であり、我が国に限って話しても隣国に誇大妄想癖の独裁者が三人もいて、それらがハルマゲドンや一大カタストロフィを起こす兵器を持っているのが現実だ。

そう言うと勇ましく、戦前の我が国を持ち出し『あの頃の我が国は』と懐古主義よろしく帝国憲法に戻せ等の話しを始める輩もいるので困ったものだ。
戦前の我が国を取り巻く状況と現在では全く違う事が認識出来ていないのであろうか。
そんな事をやったところで必要な軍事力や法整備は出来ず平和など継続出来ない。

我が国がやらなければならない事は人間の愚かさを認識し、証明された矛盾に対処し『誇大妄想癖の独裁者』を生み出さない世界的秩序の構築や新しい平和論であろう。

ロシアの誇大妄想癖独裁者は幸か不幸か、我が国が平和の為に何を急務とするかを証明したのかもしれないのだ。





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