介護士の私が海外にいる理由~外国人介護士を日本に送りたい~

【なぜフィリピンにいるのか原点を振り返ってみる】

来月でちょうど丸10年フィリピンにいます。2011年は東日本大震災があり、その次の日の2011年3月12日にフィリピンに来ました。その時は、次の転職先に移るまでのバケーション感覚でフィリピンに来ていました。

帰国後、ほぼほぼ決まりかけていた転職先から「やっぱりあなたは必要ありません」と『NO』を突き付けられ、その後の就職活動も全然上手くいかず、〝自分は、日本の介護業界では通用しないのだな〟と悟りました。そして、半分くらい本気で、鎌倉にでも移り住んで、陶芸家になろうかと考えていたところ、フィリピンで知り合った恩人に、〝フィリピンで一緒に介護関連のビジネスをやろう〟と誘ってもらってフィリピンに来ました。2011年の7月のことです。

この時点で背水の陣を敷いていて、〝フィリピンでも通用しなければ次はアフリカしかない〟と覚悟を決めており、その覚悟があったからこそ10年もフィリピンにいることが出来たのだと思います。

そんなわけで、意気揚々とフィリピンに向かったわけではなく、ひっそりと日本を飛び立ったという感じですね。ただ、その時から自分がやりたかったことは1つだけ、外国人介護士を日本に送ることでした。

【遅かれ早かれ外国人介護士に頼ることになる】

私が見てきたアメリカの介護現場では、フィリピン人やメキシコ人がアメリカ人(といっても移民大国なので、中華系アメリカ人や日系人など)の介護を行っていました。言葉も文化も異なる外国人が介護士として働く現場を見てきました。そして、日本でもいずれ同じようなことになるなと思いました。

日本は、人口が減るが高齢者は増える。そして、介護士の給料の出処は日本国であり、その日本国が借金状態であれば、必然的に介護士の給料は上がらず、日本人は介護士になりたがらない(介護保険から離れたサービスは別ですが)。そうなると、外国人介護士に頼る以外の方法は、私の頭の中では思い浮かびませんでした。

高齢者が増えて介護職員が足りなくなれば、日本の介護現場はますます忙しくなるだろうし、身体介護以外のサービスを行う余裕がどんどんなくなっていくだろうと思いました。なので、外国人介護士に手伝ってもらい、日本人介護職員の負担を減らしたい。もっと余裕をもって介護の仕事が出来るようになってもらいたい、それが、結局はサービスの向上にも繋がる方法だと考えていました。今もそう思っています。

【フィリピンに10年いてよかったこと】

10年前の私は、あくまでも外国人介護士を日本人の〝補填〟としてしか考えていませんでした。介護業界の人手不足を補うために、外国人介護士に頼る。そこまでで考えがストップしていました。

しかし、この10年間どっぷりとフィリピンに浸かって、フィリピン人のことをよく理解できるようになってからは、彼らを日本人介護職員の〝補填〟としてではなく、日本人とは異なったキャラクターをもつ〝ユニークな仲間〟として捉えることができるようになりました。

1+1が=2の単純計算ではなく、1+1が3にも4にもなる可能性があることが分かりました。実際に私が勤めているフィリピンの不動産会社では、日本人スタッフを採用したことで、売り上げが3倍にも4倍にも増えました。フィリピン人と日本人の掛け合わせが生んだ結果だと思います。

介護はビジネスのように、結果が数値で出ずらいですが、日本人と外国人の掛け合わせ次第では大きな成果がでると確信がもてるようになりました。

【やる気のある人が一番パフォーマンスが高い】

介護に限らずどんな仕事でも共通するかと思いますが、結局は、やる気のある人が一番パフォーマンスが高くなります。やる気という意味では、日本を目指してやってくる外国人介護士は、少なくても半年間の勉強があり、試験があり、家族の期待があり、と高いモチベーションがあります。そもそもやる気がなければ、スタートラインにすら立てないのです。

言葉の壁や生活習慣の違いなど、乗り超えなくてはならないハードルもありますし、その点では受け入れ施設も大変かと思います。しかし、本人にやる気があれば何とでもなるかとも思います。むしろ、やる気のない人をやる気にさせる方が難しいのではないでしょうか。

【外国人介護士と日本人介護職員とをどう掛け合わせていくか】

特定技能による外国人介護人材の送り出し&受け入れにあたり、一貫して重要だと感じているのは、送り出し国での日本語&介護の理念教育と、受け入れ施設の異文化理解の教育です。

10年前に、外国人介護士を日本に送ることを目的に、フィリピンに来ましたが、10年前と違って外国人介護人材の送り出しに関しては様々な企業や組織が、その役を担ってくれそうですので、私は〝教育〟に力を注ぐようシフトチェンジしました。

特定技能評価試験対策のオンラインコンテンツ作りも、受け入れ施設向けの異文化理解力のセミナーコンテンツ作りも、目指している方向は同じで、〝外国人介護士と日本人介護職員をどうやって掛け合わせて、その力を2倍にも3倍にも高めていくか〟になります。

この掛け合わせが何かのはずみで、〝ボタンの掛け違いに〟なってしまうと、1+1がマイナスになっていまう可能性もあります。だからこそ、外国人介護人材の受入は国家事業として、様々な企業や組織がその垣根を越えて、協力して取り組んでいく必要があるかと思います。

コロナさんの影響で、外国人介護人材受け入れの機運が一気に下がってしまったようですが、10年間その時を待っている私としては、いまさらジタバタせず、ただやるべきことを淡々と続けていきます。

遅かれ早かれ外国人介護士に頼ることになります。しかしそれは、日本人の補填として仕方なく受け入れるのではなく、日本の介護業界がもっと魅力的に変化していくために必要な仲間として受け入れられるように、自分に今、何ができるのか。フィリピン丸10年を目前に、そのことを今一度振返ってみました。

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