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転落:カミュ

 ペストで再び話題になっているカミュの自伝的映画「ALBERT CAMUS」を鑑賞したあとに彼の作品をどうしようもなく読みたくなり今回はカミュの「転落」という小説を手に取りました。amazonprime にて無料で鑑賞できるのでユーザーの方にはぜひ見てもらいたい。

そして今回の本「転落」がこちら。新潮文庫から出版されている。

もともと「転落」は短編小説として作られる予定だったけれど、長くなりすぎたために独立して発表されたそうです。なので、前半部分に「転落」、後半部分に「追放と王国」という6編のからなる短編集で構成されています。

今回はこの長編「転落」について話そうと思います。

1.あらすじ

この物語は、オランダアムステルダムを舞台にしている。そこにあるメキシコ・シティーというバーでエリート弁護士クラマンスが誰もがうらやむようなキャリア道から転落するまでの話を一人の男に告白をするという内容でした。(イラスト雑ですみません!!)

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読み進めていくとこのクラマンスという男がひたすらに語り続けるといった点に気づきやや読みにくいと感じてしまったんですけど、それ以上に彼の人生の告白は想像を絶するもので惹きつけられてしまいましたね(笑)

彼は人生において彼の犯した罪(これは実際に罰せられるような罪ではありませんでした)を告白しました。例えば「虚栄」、「偽善」、「放蕩」、「快楽」。これだけ聞くと彼はひどい男のように見えますが、他人から見ると誰にでも親切心を忘れず弁護士というしっかりとした仕事に就く誰もが羨むような人物でした。

しかしあることがきっかけで彼の人生は転落してしまうんです。ここではネタバレになってしまうため内容は伏せますが、他人から見て成功していると思われている人の人生だって簡単なことから崩れ落ちてしまう事って数多くあると思うんです。何か出来事が起こったわけではなく彼の「気づき」によって大きく変わってしまう。その気づきは少なくとも私が普段感じているような感情をむき出しにされた感じがして、クラマンスが自身に語らいかけているようで正直恐ろしかったです(笑)良い意味で。

2.印象に残った一説

彼が恋愛(彼にとっては女遊び)を語る一説に心に残るものがあったので1つ今日は紹介します。

ある人間はこう叫ぶ、《僕を愛してくれ!》、別な人間はこう叫ぶ《僕を愛しちゃいけない!》という。しかし、ある種の人間、最もたちが悪くて、気の毒な人間、最もたちが悪くて、気の毒な人間は、《僕を愛しちゃいけないけど、忠実であってくれ!》と叫びます。 (『転落』アルベール・カミュ)

 ここでのある種の人間というのは自分しか愛せない人間で、忠実であってほしい相手が忠実でなくなるととたんに欲しくなり、手に入れたとたんすべてに対して無関心になってしまう人の事です。私はある種の人間をここで非難したいわけではないです。(笑)自分にもそういった欲望は少なからずあるのではないかと思ってしまうぐらいですから。ただ、彼らは満たされない自己愛を埋めているようで、果たして埋められているのかと。

そしてのちにもあるように、ある種の人間にとっては、欲しくないものはとらないということは、この世で最も難しいことなんですね。読み進めていく中でそれを手に入れることで自己愛が満たされる反面、ボロボロになっていく姿を見ると、何とも言い難い気持ちになりましたね。

3.最後に

この本は、優しい人に程刺さる本なんじゃないかと思います。周りに常に親切心を忘れず、それでもって謙虚な心があるような人。私は、そんな人たちに読んでもらいたいです。自分の行いや見えないようにしていた罪、偽善について深く考えさせられる一冊でした。人生を振り返る一冊として読んでもらいたい。

最後まで読んでくださってありがとうございます。古典小説はなかなか面白いですね。まだまだ勉強不足なのでもっと小説を読んでいきたいです。

それではまた!


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